2章 迷宮編

第5話 一応飼ってみました。

 こんにちは、勇者です。


 街を挙げての宴から一夜明けました。自分はと言えば、また再び二日酔いとなってルルエさんに魔法的解毒と物理的解毒をされて辟易しているところです。


「グレイくんお酒弱いなぁ、ダメだよぉ女の子に飲み負けちゃぁ」


「ルルエさんと比べないで下さいよ.......あんな高級酒ガバガバ空けちゃって.......街の人たちドン引きしてたじゃないですか」


 恐らく街の蔵で保管していた取っておきだったのでしょう。十何年ものだかの蒸留酒を水のように吸い込んでいくルルエさんを見てアーバンさんは「ひぇ.......」とか洩らしていました。


「さて本日の予定だけどぉ。昨日飲みながら街のみんなに聞いた話じゃ、ここから西の方角の森がなんかおかしくなってるらしいねぇ」


「西の森ですか.......何がおかしいんです?」


「狩りをしようとしても、獣が一匹もいないんですってぇ」


 街の狩人の話では、狙う獲物どころか魔物の気配すら感じないとの事でした。


「ここからは結構距離あるんですかね?」


「そこで狩りをするって言うくらいだからそんなでもないんじゃないかしらぁ? 私の転移は一度行った場所でないと使えないから、行くなら徒歩か乗り物ねぇ」


 じゃあ馬でもこの街で借りて.......と思案している自分の横で、ルルエさんは何かボソボソと呪文を唱えていました。


 見ていると、途端にルルエさんの持っていた杖がメキメキと伸び始めるではありませんか。

 次第に枝なども生えてきて、最終的には三メートル近い巨大な鳥の骨格みたいなものが出来上がっていました。


「ええぇ.......」


 周囲の街の人達も同じ反応でした。以心伝心!


「さ、乗り物できたよぉ! 乗って乗って!」


「.......これ、乗り物なんです?」


 施されて、既にその胴体部分に跨るルルエさんの後ろに腰を降ろします。


「じゃあ飛ぶからぁ、しっかり私に掴まっててねえ」


「飛ぶ!?」


風精浮遊シルフウィンド~!」


 すると何処からか風が舞い込み、杖だった鳥の骨格をふわりと空へ浮かばせました。


「お、お、お~!」


「か~ら~の~、炎流爆発エクスプロージョン!」


 瞬間、首が持っていかれるかのような衝撃で杖の鳥は高速で吹っ飛びました。


「ぉ、ぉ、ぉぉ..............!」


 轟轟と杖の鳥の末端のほうから火柱が迸っています。この勢いで加速しているのでしょう。


 まるで巨大な弩のように天高く舞い上がり、真っ直ぐ飛び続けます。


 軌道の修正なのでしょうか、たまにルルエさんが右へ左へ身体を傾ける度、掴まっている自分の腕にオッパイが押し付けられます。


 空中飛行最高っ!!


「あ、ひとつ言い忘れてたんだけどぉ!」


 風巻く音で聞き取りにくいものの、ルルエさんは大声で叫びます。


「これ着陸とか出来ずに墜ちるだけだからぁ! きちんと受け身とってねぇ!」


「空なんて嫌だァァァァァ!!」


 なんて言っている間に杖の鳥はグングン高度を下げていき、遂には轟音と共に地面へと突き刺さりました。


 ルルエさんはスタッと慣れた様子で着地し、自分は錐揉みしながら地面に転がり、そのまま大地と熱いキッスを交わしました。ファーストキッスです。


「あらら大変、中等治癒アドヒール~」


 粉々になった骨がペキポキと音を立ててくっ付いていく感触。パーティを組みはや三日目にしてこんなことに慣れてきていることに驚愕です。頑張れ自分!


「.......ルルエさんと出会ってから、味わったことの無い痛みにばかり遭遇しています」


「あら、グレイくんってマゾ? 丁度いい!」


 何が丁度いいんですかねぇ!?

 あとマゾじゃねーです!!


「さってぇ、ちゃちゃっと目的地に着いたわけだけどぉ」


 言いながら、墜落した杖の鳥から小枝を一本ポキリと折りました。どういう仕組みなのか、それはみるみる育っていつも手に持つ杖へと変化しています。


「確かに様子が変ねぇ。獣の気配が全然しないわぁ」


 墜落したのは丁度森のど真ん中で、木が鬱蒼と生い茂っていました。


「今の音でみんな逃げちゃったんじゃないですか.......」


「魔物の気配もなのよぉ、不思議ねぇ.......あら?」


 ふと、何かに気づいたようにルルエさんはクンクンと鼻を鳴らし始めました。


「はぁ~なるほど。それでかぁ」


「すんげぇ勿体ぶってるとこ悪いんですが、自分にも教えてください」


「ふふ、いいわよぉ。これ、今日の課題にするからぁ」


 ルルエさんはニッコリ笑った。自分も脂汗をかきながらニッコリ笑います。


「ここ、ドラゴンいるわぁ」


 途端、自分はその場からダッシュで逃げ出しました。これは恐らく自分史上最速の疾走でしょう。グレイ選手速い速すぎる!


 しかし哀しいかな、速攻掛けられた蔓縛バインドバインという蔓を操る魔法で脚を絡め取られ、ズルズルと元の場所へ引きずり戻されてしまいました。


「ここ、ドラゴンいるわぁ」


「さっき聞きましたよ! 無理ですこないだはオークで次がいきなりドラゴンとか一足飛びどころか十足飛びですよ!」


「ほらぁ、勇者と言えばドラゴンじゃない?」


「誰がそんな事言ったんですかそいつぶん殴ります!」


「昔からの古典よぉ、竜殺しは即ち英雄。つまり勇者のお仕事ねぇ!」


「昔の英雄みんな死ね! もう死んでるだろうけど死ね!」


 自分はもはや半狂乱です。今回ばかりは唯唯諾諾と受ける訳にはいきません。ドラゴンとか死にます。確実に死にます。


「大体、匂いなんかでドラゴンがいることなんて何でわかるんです!?」


「あの子たちはぁ、独特の魔力的な芳香があるのよぉ。だからすーぐわかっちゃう。それで獣も魔物たちもみんな一目散に逃げ出しちゃったのねぇ」


「.......つまりそのドラゴンは最近ここに棲みついた、ということですか?」


 急に頭が冷める。住処を逃げ出した獣や魔物.......オーク。


「そうねぇ、昔から棲んでいるなら森全体がそう或るように変化するものぉ。でもここはまだ正常なまま」


「あのオークたちは、ここを住処にしていたんですかね.......」


「その可能性が高いわねぇ。恐らくはドラゴンに体良く侵略されたんでしょう。早く何とかしないと、オークだけじゃなく他の魔物も何れは人里を襲うわぁ」


 それはまるで、自分への挑発のようでした。いえ、まさにそうなのでしょう。

 ルルエさんの瞳が、やるのかやらないのかと黙して語りかけてくるのです。


「..............わかり、ました。やってみます」


「そう言うと思ったわぁ! 大丈夫、死なない限りはお姉さんが治してあげるし、もし死んでもすぐなら甦らせるからぁ!」


 まさかの蘇生魔法持ち.......さすがは大魔法使いということでしょうか。

 いや大前提で死にたくないんですけどね。


 ルルエさんは気合いを込めてクンクンと当たりを嗅ぎ回ります。なんかその光景にそこはかとなく興奮するのは自分だけでしょうか。


 やがて方角を見定めると、こっちこっちと手招きしてズンズン森を突き進んでいきます。


 そうして歩くこと二十分程でしょうか。何やら自分の鼻にまで異臭が届きます。何かが焼けた様な煙臭さ。それがどんどん強くなります。


 やがてルルエさんが立ち止まり、シーッと人差し指を口に当てて、自分を手招きします。


 言われるまま近付き、木立の影から向こうを覗き込むと、本当にいました。ドラゴンです.......。


 全長は、およそ六メートルといったところでしょうか。全身が黒い鱗で覆われていて、でも所々傷ついたり剥がれたりしています。目を瞑って眠っているようですが、その息遣いは何処か苦しげでした。


(あれは黒竜、それも珍しい純血種ね。.......でもまだ幼体ねぇ)


(なんか傷だらけですね、やられて何処かから逃げてきたのかな)


(黒竜は他の種と違って、親元で成体になるまで暮らすわぁ、でも周囲に親竜の気配はない)


(.......親だけ退治されて、逃げ出してきた?)


(可能性としてはそれねぇ、そして隠れ家として此処を選んだみたいね)


 これは、恐怖とはまた別の理由で戦いにくくなってきました。竜といっても、相手は子供で、しかも手負い。やりづらいことこの上ありません。


(.......あの、どうしてもやらなきゃダメですか)


(グレイくん。怖いだろうし、きっとあの子が可哀想だと思っているのもわかるわぁ。でも、さっきも言ったでしょ?)


 この森を正常化させなければ、また魔物が近隣を襲う。.......それは、ダメです。


 自分は全く気の進まぬまま、そっと木立から出てドラゴンに近付きます。ダガーを抜き、臨戦態勢は整いました。


「じゃあいくわよぉ、身体向上フィジカルエンチャント対炎被膜アンチファイアシール


「うあぁぁぁっ!」


 奇襲のつもりながら気合いの声を上げてしまい、ドラゴンは飛び起きます。しかし数拍遅く、自分はドラゴンの横腹あたりに斬撃を叩き込みます。


「グルァァァッ!!?」


 ガリガリと、魔王の短剣でも切り裂くのに力が要りました。それでも鱗越しに傷を与えると、怯んだようにドラゴンがたたらを踏みました。


 互いの距離が空き、しかし立ち上がったドラゴンの巨大さに、自分は圧倒されかけました。


「この大きさで、子供.......」


「ブレスくるわ! 気をつけて!」


 言われて、ドラゴンが大きく息を吸い込んでいるのに気付く。なるべく直撃を避けるように、ドラゴンの背後に回り込むよう務めます。


「GAッ~~~~~~~~~!!」


 想像より広範囲に広がる炎の吐息が間近に迫る。炎に巻かれまいと必死に走り回り、やがてドラゴン息が切れた。


 ルルエさんの対炎魔法がなければ、今頃はほんの少しでも被った所は大火傷でしょう。しかし自分に大した被害はなく、息の切れ隙のできたドラゴンへ斬りかかります。


 大腿部にきずを負わせ、ドラゴンはまた一歩下がりました。

威嚇するように立ち上がっていたのを、今度は臥するように体勢を低くして鋭い爪と牙で牽制してきます。


 自分はそれを紙一重で避けきれず、胸の革鎧に三本の爪痕を刻まれました。

 幸い肉には届いておらず、ホッと息を吐きました。


 .......そこまで来て、もはやヒシヒシと感じる違和感に確信を得てしまいました。

 あの伝説に語られるドラゴンの攻撃が、例え子供とはいえこの程度のはずがないのです。


 手数は少なく牽制ばかり。こちらの攻撃には浅い傷でも極度に反応し、後退するの繰り返し。これは明らかに、


「..............怯えている」


 今考えれば、恐怖心で言えば先日のオークの集団の方がずっと恐ろしかったのです。

 それは、相手の目付き。


 オークたちの目は、殺気に溢れこちらを刺すように睨みつけて来ました。でもこのドラゴンの目は、早くここから逃げたいと言う意思が伝わるほどの弱々しいものでした。


「.......あぁ、これやっぱ無理です」


 自分は少し覚悟を決めると、ルルエさんに大声で叫びます。


「ルルエさん! これから何があっても、ひたすら自分に回復魔法を掛け続けて下さい!」


「え!? あ、それは始めからそのつもりだったけど」


「お願いします!」


 そう言って自分は手にしていたダガーを、地面に突き刺しました。


 もう役に立ちそうにない皮鎧も脱ぎ捨てて、何も持っていない事をアピールするように自分は大きく両腕を広げます。そしてゆっくりと、ドラゴンへと近付きました。


「何やってるの!?」


 叫ぶルルエさんは無視して、少しずつ距離を積めるように、自分は歩を進めます。

近付く自分に、ドラゴンは爪を振り下ろしました。


 ベチャベチャ、と。何かが腹から溢れる音がしました。


「っ! 高等治癒ハイアドヒール!」


 傷が治った後に、今更焼けるような痛みが腹部を襲います。でもこんなことでは止まっていられないのです。


 また一歩近付くと、今度はガブリと噛みつかれ、ブンブンと振り回されて遠くに放り投げられました。地面に着いてザリザリと土が頬の皮を削り、でも自分は立ち上がってまたドラゴンにゆっくりと、近付きます。


 近付き、裂かれ、治し、前に出て、噛みつかれ吹き飛び、また近付く。


 一体これを何度繰り返したでしょうか。傷はルルエさんが治してくれていても、受けた時の痛みはどうにもなりません。自分は少しずつ己の心が折れかけているのを感じて、思わず顔を叩き気合いを入れ直しました。


「.......ねぇ、グレイくん。もうやめにして」


「やめません」


「お願いだから」


「やめません」


「なんで! 痛いでしょ!?」


「痛いですよ、だからやめません」


 そして自分はまたドラゴンに近付きます。ルルエさんはとっくに自分のやりたいことに気づいているようです。


 ドラゴンも、どうやら自分の意図に何となく勘づいたのでしょうか。少しづつですが攻撃に甘さが出てきました。


 その後も同じことを繰り返し、ついに自分は臥するドラゴンの鼻先にまで辿り着きました。もうドラゴンも手を出して来ず、自分の匂いを嗅ぐようにフンフンと鼻の呼吸を荒くしています。


 自分はビックリさせないよう、本当にゆっくりと、ドラゴンの鼻先に手を添えました。


「.......ごめんね。痛いことして。怖かったよね」


「グ、グルルルゥ.......」


 窓拭きの要領で、大きく振るように鼻を撫で摩ります。そうしているうち、ドラゴンは少し安心したのかハァと息を吐き、目を細めていきます。


「もう何もしないから、君も暴れないで」


 ちょっと調子に乗り、その大きな頭を抱きしめてみました。ドラゴンは抵抗せず、むしろグイグイと自分を押し上げ引っ込め遊んでいるようでした。


「まったく、そんなことしちゃってぇ.......ドラゴンなのよぉ?」


「.......ドラゴンだから、なんですか」


 ピンッと、何かの線が切れた感覚がしました。自分はこの時初めて、ルルエさんの事を睨んだかもしれません。


「ドラゴンってだけで殺す? 違うでしょ。昔の人たちやら英雄やらがどうかは知りませんがね、怯える子供を何も考えずに殺せるほど自分は図太くないんですよ」


 少しずつ、語気が荒くなります。


「侵略だと貴方は言いました。けどこれはどう見ても避難行動です、ただ傷ついて行くとこがなくて、落ち着けるのがたまたまここだけだっただけのこと!」


 血が上って、自分が何を喚いてるのかも分かりません。


「こんな怯えている子を目の前にして殺せ? それはもう殺戮です! そんなことをするのが貴方の理想の勇者ですか! なら自分はもう勇者なんて願い下げです、こんなプレートはドブにでも捨ててやる! 弱いものを守るのが勇者と言うなら、こんなに傷ついた子を救うのが本物の勇者なんじゃないんですか!?」


 一息でそう言いきって、あっさりと頭の熱は冷めてしまう。しまった言い過ぎたと思うと、ルルエさんはなんだかニコニコと笑っています。


「それが、グレイくんの答えかなぁ? いずれ大きくなり人を襲う魔物でも、グレイくんはその子を庇うのぉ?」


「……はい、自分はこれ以上この子を傷つけられません。それが、弱くても自分なりの勇者としての矜持だと思います」


「――――合格! ちょっと予定とは違かったけれどぉ、その優しさがグレイくんに勇者としての自覚を持たせるというならそれでいいわぁ!」


 一転して褒められてしまい、なんだか拍子抜けしてしまいます。勢い任せで臭い台詞を吐いたこともあって、急に恥ずかしくなってきました……。


「と、とにかくですね、この子はこの森から何処か影響の少ないところに移すのがいいと思うんですが」


「う~ん、そんなとこあるかしらぁ。大抵竜が住処にする所は、もう別の竜の縄張りになってると思うしぃ.......」


 この子が縄張り争いに勝てるとは思えない。何かないのかと知恵を絞り、一滴も雫は出てきません。


「もういっそ飼っちゃうかぁ」


「それだぁぁっ!!」


 その大声に自分もドラゴンもビクリと身体を引くつかせます。


「黒き翼の竜を従える勇者.......あぁ。なんて浪漫溢れる響きなのかしらっ!!」


「いや、浪漫どうこうはいいので、こんな大きな子連れて歩くなんて無理でしょう!」


「あらぁ、そんなの簡単よ?」

 そう言うと、ルルエさんはおもむろに胸の谷間へ手を突っ込みました。


「おっかしいわねぇ、たしかこのへんに、ない? あれぇ.......アンッ、触っちゃった! えと、やっぱりこの辺りだと.......」


 グネグネと。自分の谷間を捏ねまわす姿は、その.......うぅっ! 自分のダガーが!


「あっ、あったあったコレ、コレよぉ!」

 そう言って谷間から取り出したのは、青い宝珠の付いたネックレスだ。


「はい、これをドラゴンちゃんに着けてあげて!」

 手渡されたネックレスは、ほんのりと、温かいです.......。


 取り敢えず首は太くて着けられないので、ドラゴンの手首に巻いてやりました。

太さも丁度良い感じです。


「あとは、こう唱えるのです。縮小ミクロム!」

 瞬間、ドラゴンはポンっと姿を消してしまいました。


「え!? あれ。どこいった!!?」


「グレイくん。あたま、頭の上」


「へ?」


 言われて確かに首に負担を感じ、手で頭上を手探ると、まるでぬいぐるみのようになったドラゴンが、そこにいた。


「くぇ~~!」


「「か、かわいい.......」」

 二人揃っての感想でした。かわいすぎる!


「そいでもってぇ、大きく戻す時が、拡大マクロム!」

 今度はボンと大きくなり、自分はドラゴンの下敷きになってしまいます。


「お、おも、出、なか、出.......」


縮小ミクロム


 再び小さくなり、自分の内蔵は外気に触れずに済みました。既に今日一度露出した気がしますが気のせいでしょう。


「という、私自作の魔法便利グッズなのですぅ! 使い所なくてしまい込んでたんだけど、あって良かったぁ」


「と、取り敢えずはこれで森の問題も解決でしょうか。あ、すみませんルルエさん。この子に治癒を掛けてくれません?」


「そうよね、痛そうだもんねぇ、中等治癒アドヒールっと」


 小さくても傷だらけだったドラゴンは、治癒魔法で回復し鱗もピカピカと黒光りしています。


「あとは、名前決めましょうかぁ。グレイくん、考えてあげて。ギルドにもテイム登録するのに必要だからねぇ」


「あ、そうか登録.......審査通るかな」


 ギルドのテイム登録査定は色々と面倒も多いのだけど、まぁなんとかなるでしょう。


「そうだなぁ。名前.......クロじゃ在り来りだしなぁ」


「ぴがぁ~~~!!」


「え、クロ?」


「ぐるぅ、ぴがっ!」

 何やらその響きが気に入ったご様子で、クロと呼ぶ度に嬉しそうに鳴きます。


「ほ、本当にクロでいいのかな.......」


「いいじゃない。彼女が気に入ってるのなら」


「ん?」

「ん?」


 いま、重大な事実を言った気がしますよ。


「この子、雌なんですか?」


「そうよぉこのモテ勇者ぁ。この調子でハーレムでも作りなさぁい」


 そう茶化してくるルルエさんの目は、何故か割と本気な気がします。


「じゃ、これからよろしくねぇクロちゃん」

「びぎゃ、ぐるるぁ!」


 こうして森の事変も治めると、生き物たちは再び森に戻ったようで近隣の街や村での襲撃被害はなくなったという。

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