第60話 5/19-B 実際に刈ってみた。

 夜中にどどんと雨が降ったので確かに今日続きで正解。

 ……何とか2サイクル用燃料も入れて、手順に従って起動……


「ぐーっ」


 奴は何度かひっぱるが、なかなかエンジンが始動しない。そらそうだ。最初なんて「冷えてる」状態なんだから仕方ない。

 そんで何とかなったと思っておそるおそるベルトの付け方教えて試運転したら…… 切れない? まさか……

 音から何となく予想がついた。


「おいお前歯が逆だ……」


 ひええええええ、と奴はあわあわとパニくる。

 いや実はこれに関してはアタシも悪い。付けさせる時にちゃんと確認しなかったからなー。

 奴は取説のマークが上、というのだけ見ていたから気付かなかったろうし、そもそも歯の向きが逆でどうなんだ? ということも意味がわからんだろーなー。

 ともかくエンジン切ってベルト外させて、刃を取ってひっくり返して。


「おおーっ」


 勢いましまし。ぎゅいんぎゅいん言ってる。そらそうだ。


「すげぇ刈れる!」

「刈り払い機だしなー」


 ということで奴の裏庭というか裏の畑へ。

 ……さすが普段放っておいてるだけあるぜ。


「どうやったらこんだけ育つんだ? アジサイが……」


 普通なー、アジサイの茎だけがひょろーっと身長より高くなるってこたないと思うぜ…… つかすげえな大本のそのアジサイ…… 強すぎる。

 田舎の一軒家の裏手の遊ばせてる土地ってのは放っておくとともかく雑草がどんどん生える。それも毎年同じじゃない。

 そんで…… こいつのとこの草たちはまあ背が高い!

 まあともかく、とあっちからこっちへ振るんだよーと言いつつ刈らせてみたら、途中でちょっと音が変わる。


「ちょっと待て」


 見てみたら、刃の上に草が絡まりまくっている。


「まずいんか?」

「無駄に負担をかけるからなー。ともくおめーんとこはつる系多いから注意しな」


 道路でよくやっている刈り払い機は刈る対象がイネ科のことが多いんで結構下でもいいが、こんだけやられてると……


「ちょっと貸し」


 そう言ってエンジンを再起動させてからアタシがやってみる。ちょっと安全性はよろしくないが、多少地面から上。そうでないとどんどん草が絡まる。


「さくさく切れるな。ともかく最初っから地面に近づけすぎない方が巻き付かないから、その辺りはケガしない程度にやれよー」

「うっし」


 ……とりゃず絶対今日で済む訳はないので、明日はアタシもやるか、と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る