第43話 5/2-A 遠州の石箕

 昨日に引き続き…… いやそれ以上に…… だ…… る…… い……

 この季節はだから嫌なんだー!

 ともかくワタシが格別何もしてなくとも、大気がどっ! と身体の上にのしかかってくるようで!

 起きてはだるく! 寝転んでもだるく!

 唐突に眠気は襲ってくるし!

 こういう時ホントに会社通いでなくて良かったと思う…… まあ今は通っていたとしてもテレワークだろーがなー。

 そんな中、こいつはまあ朝もはよからはなれの掃除をしちゃ、次のひご製作してやがった。

 この長さなら、まあたぶんかごよりは石箕だろな、とワタシにも想像つく。

 今はそうそう扱ってないけど、昔は小学校で、訳もわからず「いしみ」と呼んでいたそれだ。

 だいたい校庭の「石拾い」「草取り」になると必ず引っ張り出された。年季の入ったものだったけど、頑丈だった。

 ところがこれがいつの間にか店から姿を消した。

 というより、ワタシが大学のためにここを離れてる時にゃ、ホムセンでも見なくなったことに気付いた。

 同じ形のものはあっても、プラスチックの軽いものになってしまった。

 竹製のこの石箕が本当に使い勝手が良いのかどうか、小学校以来使っていないワタシには正直判らない。

 ただ重いものも軽いものも、何でもかんでも載せても大丈夫な安心感がある。

 修理もできる。プラスチックのものは一度壊したら使えない。今でこそぱっと買いにいけばそれっぽいものはあるけど、「これ」はさすがに無くなってしまった。


「……遠州の石箕だから?」

「何」

「いや、あんたが作り続ける理由」

「んー」


 一瞬手を止める。


「じーさんが教えてくれたのがこれってのが一番かな」

「伝統とかそーいうんじゃなくて?」

「まーそれもあるけど」

「ふうん?」

「箕っていうのはあちこちにあるんだよ。だけど元々それは豆とか種とか篩うもんでさ、重いもんに耐えるもんじゃねえの」

「そうなの?」

「別府で他の地方のものも教えてもらった」


 ほれ、と作業場の棚を指す。


「形は一緒だけど違うだろ? アタシ等の使ってた奴と」

「あー」


 手に取る。確かに。軽いし。


「でもここいらのじーさんばーさんは重いアレが結構欲しいんだよな」

「そっか」


 まあそんなら、も少し遠目にだらだらするべ。

 だるいのは変わらないんだけどな! だから茶の時に暑いと言われてもべたついてやる。

 

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