第4話 4/13-A 雨ふり
「雨だー」
昨晩いちゃこらごろごろしている辺りから、ずっとざーざーと音はしていたのだけど、朝までずっとこんな感じとは。
のそのそと奴も動き出す。日の出と共に起き出す奴だから今日はそれが鈍ったか。
「何時ー」
「くじはん」
「いいのー?」
「んー、畑の方はこれじゃねえ」
「ワタシゃ雨止んだら草取りは楽になるなー。はよ止めー」
そう言いつつ腕を伸ばすと、後ろから抱きついてきた。
「まあせっかく三十路に入りましたことですし、もう少し身体をいたわりー」
「……お前まだ二十代じゃねえの」
「ばれたか」
そう言いつつ乳を揉むな。
*
案の定もう皆さんそれぞれの作業に入っていた。おはよー、と言ってくるのはやっぱり寝坊のガキどもだけだ。
「ヨツバ遅いー」
背が高い奴の足は十にもならないガキどものいいまとわれつき先だ。
「ユクちゃんごはんまだ?」
「うん」
「おれもまだー」
「それは遅いんだよ」
軽くぽん、と柔らかい髪の上をはたく。くそ、若いっていいなあ。
ガキをひきずりながら奴はずるずると台所まで行き、鍋を開け冷蔵庫を開き、何があるか確認する。
「卵何にする?」
「TKGー。あ、野沢菜のおにぎりの奴ある?」
「そっちはないけど鮭のはあるよー」
「それでいいー」
そう言いながらワタシは食卓に座った。奴は黙々とワタシと二人分の飯をよそい、味噌汁を温め、卵と鮭ふりかけを用意する。
「いただきます」
この家の味噌汁は朝でも昼でも夜でも具だくさんだ。今日は大根の千切りと葉、里芋となめこがどっさり入っている。
こういうものには濃い赤味噌がワタシは好きだ。それだけで充分な飯のおかずになる。
「まだある?」
そう言って空の汁椀を見せると、ゆっくり首を振られた。残念。
「昼にまた食う? 今日は帰る?」
「雨だしー。急ぐ仕事じゃないしー」
「アタシは仕事するよ」
「じゃ見てる。仕事用の本持ってきたし」
「見るならこっちにしろや」
「お前がワタシを見ないのにつまんねーじゃないの」
奴は黙って肩をすくめた。
だって奴の仕事は農作業の手伝いと竹細工だ。雨ならそっちに集中する。積んであった作りかけはなかなか沢山あった。期限がいつまでかわからないけど。
そうすると下手にワタシは近づけない。だったらこっちの仕事の下作業しながらちらちら見てるくらいがいい。
「茶は何がいい?」
「ほうじ茶」
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