初恋の人とデート

小川貴央

第1話 初めて会ったクラスの子

卒業からあれから何十年が経ったことだろう

思えば中学1年生で一緒のクラスだった彼女

僕のすぐ後ろの席に座った彼女はとても美人

軽くウェーブのかかったブラウンの髪が肩の

辺りで揺れている

魅力的なアーモンドアイに、口角が少しだけ

上がった唇は上品で清楚な感じを受ける


たぶん僕の方から最初に声を掛けたと思う

”たぶん”といったのは小学校からずっと

気が小さく体育も苦手で苛められっ子だった

僕が自分から女の子に声を掛けるなんて事は

とても恥ずかしくて出来るもんじゃない

だけどその時はたぶん話しかける事が自然に

出来たような・・・


彼女とは小学校も違ってたから性格も趣味も

何にも解らなかったけど、だけどすんなりと

気安く話し掛けていった気がする


いつの間にかテレビ番組の話題で盛り上がり

当時に流行っていたルーシー・ショーという

外国のお笑いドラマの話題を出したら偶然に

彼女もいつも見ていて、とても面白いと言い

それからは毎回ドラマを見るたび翌日教室で

彼女と話し込んで笑い合うのが日課になった

「昨日見たあ?」「うんうん、見た見た~」

という感じで


そのうちに何故か自分でも解らないんだけど

彼女の顔を見るなり「や~い、雌ライオン!」

などとからかい初めていた


「何でアタシが雌ライオンなのよ~?」

「だって髪方がライオンの鬣みたいじゃん」

「バッカじゃないの!鬣ってオスでしょ~」

「あっそっかあ、でもまっいっかあ~」

「バ~カ、何よ、ほんとに、もう~」


そして雌ライオンに鬣をくっつけた様な彼女

の似顔絵を漫画チックに描いて見せたら爆笑

してくれたのが嬉しくていつも彼女の似顔絵

をいっぱい描いてあげて喜ばせていたっけ


それからしばらくそんな事が続いていたけど

今度は自然と彼女のほっぺを軽くパチン!と

叩いてしまっていた

「キャッ!何すんのおー!」バシン!


僕も叩き返された、でもその後で半ばお互い

笑い合っている

当然”軽く”叩いてるし、僕がからかってる

という事は彼女も認識してくれてるのだろう

それが不思議にも時々遣り合ってる習慣にも

なってしまっているから面白い


勿論、僕はスキンシップのつもり!というか

やっぱり今思い返すと、何か彼女が気になり

チョッカイを出してしまうみたいで、それで

ついほんの軽くだけど、ほっぺをパチン!と

彼女を軽く叩きたい、僕も叩かれてみたい~

そんな特異的ビンタのスキンシップごっこを

彼女といつも遣り合ってる事がとても楽しみ

になっている自分に気づくのだ


人一倍”うぶ”で純情少年だった僕にとって

女の子なんて意識さえした事も無かったのに

やっぱりその子に好意を持っていたのだろう


クラス一番の美人で輝いて見えた彼女の名前

”ゆうこさん”と言うんだけど

僕は今までどれくらい彼女の名前を心の中で

呼んだことだろうか


それは何十年という年月が流れて今尚、偶に

その子の名前を呼んでいる

時にはそっと声にだして「ゆうこさん」って

可笑しいよね~

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