第9話嫌悪

理蟹....?先輩と同じ名字だ。それに、娘”恋”って先輩の名前じゃないか。だとしたらこれは、先輩の父親が書いたものなのか?

だがこの手記によれば、娘は精神を病んでいるらしい。先輩は確かに頭がおかしいところはあるが、病んでいるようには見えない。

それに、書かれてある研究のことも信じがたい。死んだ人間を生き返らせるというものらしいが、内容がオカルトじみている。

「おい。なんだそれは?」

先輩の声が後ろからする。

不意を突かれて、ギョッとしながら

「これは俺の手帳です。」

という嘘をついた。

以前の俺ならこんな手帳の内容など絶対に信じないであろうが、周りで奇妙なことが起こっているせいもあってか少し信じてしまっていたのだ。

引きつっている俺の表情を疑わしそうに見つめたが、追求はされなかった。


それから20分が経過した。俺と富田と間遠先輩はやることがないので、トランプでババ抜きをしている。理蟹先輩は部屋にある大きなコンピュータを、ずっといじくっている。お疲れ様です。

「これをこうしてこれをこうすれば...。どうだ。起動しろ!」

ブウン。

「ふぅ。電源部分が壊れていたから、少々時間がかかった。」

まじかよ。起動させられないと考えていたんだが

もし手帳の内容が本当だとしたら、このコンピュータには霊体が入っているということになる。やばいことになるかもしれない。止めないといけない!

「フォルダがあるな。開いてみるぞ。」

先輩は顔を興奮の表情にかえながら言う。

開こうとしたが、パスワードを入力しなければいけないらしい。良かったこれで開けないだろう。

「4桁の番号か。ざっと10000通りだな。よし明日の朝までがんばるぞ。お前らもここにいろよ。」

理蟹先輩の一言に、俺含め三人とも顔を青くする。

「何本気にしてんだ。ジョークだよ。私もそこまで鬼じゃない。こんなこともあろうかとパスワードを一瞬で解析してしまう機械、解析魔をもってきたからな。」

また変な名前の機械か。

「この解析魔はな。9桁のパスワードでも10秒で解析可能な上、コンパクトサイズで持ち運びがしやすい。まぁ使ったら2分の1の確率で解析したコンピュータは、ぶっ壊れてしまうがな。それもご愛嬌ってやつだ。」

なにがご愛嬌だよ。壊れたら元も子もねぇじゃないか。


ぴこぴこぴこぴこぴこぴこ....チン。

「よし。セキュリティー突破だ。開くぞ。」

フォルダを開こうとすると、警告文が出た。

【このフォルダを開くと霊体が出現します。本当によろしいでしょうか?】

「霊体だと?面白い!ついにこの世ならざるモノの姿を、お目にかかれるかもしれない。」

先輩はためらいなく決定ボタンを押す。俺が止めようとする時間もなかった。

ジジジジッ

コンピュータの隣に何かが出現した。

その何かの色は赤黒く、無数の人の歯みたいなのが出ており、黒い粘液をだしていた。ところどころ、人の特徴があるのは気のせいだろうか?俺はその姿に強い嫌悪感を感じた。










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