第43話【イベントの結末】

 スルトたちは自信満々に近付いてくる。

 何か策でもあるのだろう……って!


 やばい! さっき調子に乗って【ドッペルゲンガー】使っちゃったじゃねぇか!

 ということは俺は瀕死、いくらHPが高いとはいえ簡単にやられる。


 危ねぇ、【金を食う】で回復しないと……って、使えねぇの忘れてた!

 何が『敬意を払って』だ! バカなのか? 俺!


 やばいやばいやばい。

 あ、そうだ。吸収すればいいじゃない!


 ということで、どん!

 あれ? 全然回復しないぞ?


「ふ!無駄だ。俺が今使ったのは【大防御】。お前の攻撃で俺は倒せん」


【大防御】

身を固め鉄壁の守りで攻撃から身を守る。ダメージを1/100にするが、その場から動けなくなる


「なんだそれ! 強すぎだろー!!」

「お前がそれを言うか。まぁいい。回復できる仲間もいないんじゃあ、俺の勝ちだな」


 いやいや。

 お前もそれ使っている間は動けないんだろ?


 それじゃあ、スルト以外を攻撃すればいい話じゃないのか?

 それでスルトは放置だ、放置!


「食らえ! 【金をばら撒く】!!」

「無駄だと言っている!!」


 何故か全てのダメージがスルトに集まり、それも軽減される。

 ダメージを与えているので少しは回復しているが、それもままならない。


 どうやらスルトはロキとは逆に、仲間のダメージを自分に集めるスキルがあるらしい。

 たしかによく考えたらロキと葵だけじゃあ、他の3人は食らいたい放題だもんな。


 ならば!

 とさっきと同じ【札束で殴る】を使って気絶させたがこれもダメ。


 あっちにはきちんと回復職がいるから、気絶させてもすぐに回復させてしまう。

 あー、HPさえ万全なら負けないのに!!


「全く……こんな状況で【ドッペルゲンガー】使うとか、まじ無いし……」

「ショーニン。きちんと先のことを考えて行動しないといけませんよ?」

「がっはっは。これは見ものだな。瀕死のショーニンなんてなかなか見れないぞ」


 この声は!

 まさか向こうからこっちに来てくれるとは思ってなかった!


「助かった。まじで危なかったよ。今度は調子に乗らないように気をつけるさ」


 ミーシャの薬のおかげで完全では無いものの、問題ない程度にHPが回復する。

 さらにこっちがわざわざ言わなくても【砥石】と、回復職に【馬鹿には見えない服】をかけてくれる。


「な、なんだお前ら! 卑怯だぞ!?」

「は? 何言ってんのこいつ。まじ意味わかんないんだけど。パーティ戦じゃんね? てかそっちなんて六人フルでいるじゃん」


「ミーシャ。真面目に相手にしてはいけませんよ? いわゆるアホの子ってやつでしょうから……」

「な! きさま! 言わせておけば!! おい! 何をしている!? さっさとこいつらを殺れ!!」


 言ってることはもう完全に下っ端悪党なんだが……。

 やっぱりこのイベントのクライマックスは既に済んだ感じだな。


 時間をかけてもつまらん。

 さっさといくか。


 俺はもう一度【金をばら撒く】を使う。

 貫通も付与した複数攻撃、メンバー合わせて10ヒットのダメージを与えた。


 それが全てスルトに集中する。


「うぉおおおおお!?」


 一撃で10万オーバーの攻撃だ、それを10回。

 しかし当てても大したダメージにはならない。


 だが本命はそこじゃない、ミーシャは回復薬と併せて、攻撃に【猛毒】と【麻痺】が発生する薬を使っていた。

 確率は100%ではないが、回数が増えれば当然確率も増える。


 無事にどちらの状態異常が付与され、スルトは動けなくなりHPに応じた一定ダメージを受ける。


「回復させると思うなよ?」

「ぐあぁ!!」


 スルトを回復させようとした回復職を【銭投げ】で一撃の元倒す。

 これで回復も不可能だ。


「や、やべぇ!?」

「ど、どうすんのよ!?」


 ジェシーとサンドラが慌てた声を上げるが、まさに後は消化試合だった。

 その後も俺たちパーティ四人に敵う者などいるわけもなく、見事俺たちは初イベントパーティ対抗バトルロワイヤルで優勝を果たした。



「いやぁ、なんだかんだで楽しかったなぁ」

「そんなこと言っても、私たちを置いて一人で戦ってたのは正直どうかと思いますよ? こっちは大変だったのですから」


「まじ無いしー。あのまま見殺しにしておけば良かった?」

「がっはっは。まぁ、これで俺らのありがたみも分かっただろうから良かろう」


 ヒミコのアトリエで恒例のお茶会だ。

 俺が一人で功を急いだことに女子二人はご立腹の様子だ。


 どっかで穴埋めしておかないとな。

 俺は現実では懐は限りなく寂しいが、ゲームの中では富豪だからな。


「それはそうと、なんでお前がまたいるんだよ?」

「はっ! 同じ質問を何度も繰り返すなんて、ショーニン、お前記憶力大丈夫か?」


「いやいや。そうじゃなくて、もう決着ついただろう。俺はお前より強い。はい終了。もう来んなよ」

「はっ! それについてはロキさんから説明がある。ありがたく聞くんだな!」


 葵の言葉を受け、俺はロキの方に目をやる。

 困ったような面白そうなそんな顔だ。


 絶対ろくなことじゃないぞ……。


「なんだよ。ロキ。話って」

「それがね……ショーニン。パーティ解散しちゃってさ。ショーニンのせいで。ということで、俺と葵、ショーニンのパーティに入れてよね!」


「はぁっ!?」


 アトリエに俺の叫び声が響いた。


☆☆☆


いつもありがとうございます。


しばらく週一更新になると思います。

楽しみにしている方すいません。

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