異能病カラミティ
凪鬼琴鳴
第1話 開始
ある日のとある地下施設に化け物のような強さの連中が集まった。
「久々ね。私達が集められるなんて」
「なんでも我々を根絶やしにしようとする組織が出来たとか」
「僕らはそれを処分すればいいのかな?」
「さぁね。あたし達は頭脳に従うだけなんだから」
先に集まった10人は好き勝手なことを話している。
それは残る上位メンバーの2人が到着した時点で止まった。
その2人が席に着くと組織のメンバーの確認のために順番に名乗り始めた。
「
煙寿は黒髪の少女で反転の能力を持っている。
「
天嵐は白髪のおっさんで水の性質を変える能力を持っている。
「
空鈴は金髪の男性で切り裂く能力を持っている。
「
愛挫は薄ピンク髪の少女で糸の能力を持っている。
「
夏目は白髪の少年で光と空気を操る能力を持っている。
「
煉武は黒髪の女の子で炎を操る能力を持っている。
「
速水は青髪の女性で移動系の能力を持っている。
「
縫は紫髪の女性で愛挫と別タイプの糸の能力を持っている。
「
命雅は茶髪の少年で岩を操る能力を持っている。
「
黄蝶は金髪のおばさん(お姉さん)で毒を生み出す能力を持っている。
「
華球は緑髪の女性で熟成と腐食の能力を持っている。
「
八鬼は黒髪の毛先が赤い青年で武器を作り出す能力を持っている。
これで組織の最高位メンバーの確認が済んだ。
それで今までと変わらない仲間達が揃ったことに安堵した煙寿はホッとした。
「私達の『十二神界』は相変わらず元気そうで何よりだ」
彼女がそう言うと他のメンバーが目を閉じて同意した。
「選ばれし我々が欠けることなどあってはいけない」
煙寿以外の全メンバーが合わせてそう言った。
そのようなことを言ってくれた仲間達と想いが変わらないことを実感した煙寿は微笑んで語り出した。
「この組織は大きく変化した世界の上に成り立っている。ここにいるみんなは異能病発症者のまれな覚醒者で変化した世界の支配権を持つ神の代理人だ。今もそれは変わらない」
そこで一度話を切って怒っている真顔になった。
ここで現在の世界について話そう。
この世界はとある博士が発見したウィルスが
それは人々に大きな影響と利益を与えたが、発見者の博士はさらなる研究の最中に事故死してしまった。
博士の死後にこのウィルスによる病気を『異能病』と名付けたが、これは有益な面以外があることに長い間誰も気づかなかった。
気づいた時にはもう遅くて、一部の異能者の覚醒によって多くの命が消されてしまった。
最初の覚醒者は辰ノ席の夏目で彼は覚醒と同時に天使となり愚かな人類に天罰を与えた。
それ以降覚醒者は神域に至った神の代理人という考えが広まって、それが人々に恐怖と絶望を感じさせて覚醒者達にある目的を与えてしまった。
『神域に至る者は神に代わって人類を管理すべし』
これが全覚醒者の共通目標になり、 それと逆に人類はこれに対抗することが目標になった。
出来ることならウィルスを消そうと人類は考えている。
そのため異能者は最初と違い仮の神側について人類を止める敵になり、残る人口の半数の人間になるべく多く感染させようとしている。
これが現在の世界だ。
煙寿は今も反抗を続ける人類と、裏切り者の異能者に怒りを感じているのだ。
「だが、奴らは未だに反抗を続けてこちら側に堕ちない。いくらウィルスが蔓延しようとも感染しないときはしない。これでは支配権があっても出来ない。生意気な人間どもは知恵を絞ってこちら側を止める手段まで手に入れた。その手段にこちらは対策も出来ない。なんてクソゲーだ!」
早く口気味に煙寿は怒りを言葉にして発散した。
それを聞いていた二番目の頭脳である夏目も思っていることを述べた。
「それでもこちらには制限を無駄にするような能力がある。花も天気も僕らの敵じゃ無い。そんな弱点で仮にも神に等しい僕らを殺すことなんて出来ないさ」
冷静になるように頭脳に伝えるこの言葉は頭に血の上った煙寿を完全に鎮めた。
冷静になった煙寿は実力も権力もあるその発言で仲間達に告げた。
「そうだった。夏目の言うとおりだ。何も恐れることは無いが『神殺し』は警戒しなければいけない。ここにいる覚醒者達よ!奴らを潰して今度こそこの世を仮の神の手に!そのために今度召集するまでに前の者を使ってでも神殺しの情報を集めろ!」
煙寿がそう言うと全員が体に刻む実力順のナンバーを見せて「はい!」と返事をした。
それから自然にこれが解散になってそれぞれが目的のために動いた。
中には部下とも言える仮の神の信仰者を使う者も現れた。
そこまでして今度こそ人類の反抗を終わらせたいのだ。
何せ今まで以上に難易度が上がってしまったのだから。
時を同じくして雨が降る中で『神殺し』が組織結成から初の大イベントをしていた。
それはアンチ異能者の希望を象徴する者達の登場だ。
青いアジサイに囲まれる館の庭にその7人の希望が姿を現した。
組織結成から二ヶ月でようやくボスが前に立つべき信頼する仲間を選んだのだ。
「除染隊の諸君、よく来てくれた。庭は狭いので全員は入れられなかったが、彼らのために来てくれたことに感謝する。ありがとう」
細くて見た目から病弱なのが伝わってくるボスは椅子に座ったまま感謝を述べて頭を下げた。
その様子を見てボスの様態を心配しない者はいなかった。
約300人を二ヶ月でまとめるような彼はまだ組織に必用なのだ。
そんな彼が作ったのが異能のウィルスに汚染された世界を浄化するための除染隊だ。
人間と異能者の両方が所属して非公式に活動している。
ボスが選んだ7人は虹の七色をそれぞれ背負う光という役職で、除染隊最強として敵となる異能者を止めるために上に立って働く。
「さて、そろそろ彼らを紹介しよう。自己紹介を頼むよ」
ボスが椅子の上からそう言うと7人は
それから立ち上がると横一列に整列し、右から順に名乗り始めた。
「
凪島焔は炎の紅組を率いるいつでも熱い男だ。
実は覚醒者の煉武の兄であることを隠して除染隊に参加している。
そのことはボスに話しているので、そんな事情があっても信頼できると思ってもらえたのだろう。
「
潮村雨は水の青組を率いる冷静な女剣士だ。
異能者の雑魚には通用しないが、強ければ雨は身を焼く神の涙として弱点になる。
それは雨を起こせる青組の連中でも同じだ。
だから、青組は雨を起こして無能力者が襲い掛かる連携をとる。
特に無能力者の中で村雨は並外れた身体能力で普段からこの連携で狩りまくっている。
「
狂助は虹のメンバーの中で一番速くて強い電気の黄組の男性だ。
しかし、能力がないから焔より劣ってる部分が大きい。
そこは黄組お得意の電気を利用した科学武器開発で穴埋めをしている。
「
春風若葉は風や植物の緑組を率いる静かな女子だ。
その性格はおっとりしてるように見えるが、覚醒を自力で回避するほどの精神力と実力を兼ね備えた神を拒んだ者なのだ。
何よりこの人がすごいのは自分達を苦しめることになる弱点のアジサイを増やして仲間を守ろうとする所だろう。
「
この柴村は治療や毒の紫組を任されているが、ウィルスを発見して世界に広めてしまった柴村博士の孫なのだ。
博士は死体が見つかっていないが、研究所の状況から死亡したと思われている。
その祖父の罪を代わりに償うために孫がここに来たのだ。
祖父と同じだと奴の同僚に言われた毒薬などを作り出す能力を持って。
「
実年齢を探ってはいけない若松はサポートの白組で強化を専門にしている。
特に若返りが出来る彼女は美の魔女と呼ばれて恐れられている。
こんな風に人体をいじれるのは神になれないなり損ないの特権だ。
強力な力を持っているのにこのタイプは最も信頼されやすい。
「
月桂穂鷹はどこにも所属していない連中を混ぜた黒組で働いている。
そのメンバーはどこにも入ってないだけで自分と同じ属性の色に入ることが出来た。
それを蹴ってまで色が混ざって出来る黒に仲間達は集まった。
それは神の色に染まらなかった穂鷹だからこその人望と言える。
こんな連中だが前に立つ者として立派に自己紹介と意気込みを言い終えた。
7人が言い終えたところで最後にボスが自分のいいところを見せるために話し始めた。
「彼らは僕が選んだ最高のメンバーだ。他の色の人達には悪いけど、七色と決めてるから今回は諦めて欲しい」
そう言うと頭を下げて謝った。
それを見たオレンジ組やピンク組などのトップは仕方ないと受け入れて一歩下がった。
この後ボスは頭を上げて話を再開した。
「これから除染隊は僕をトップとして仮の神を討ち取りに行く。この僕、
そう言い終えると拍手が湧き上がった。
多くの仲間達はこの雨宮に逆らえない。
その理由は動けないのに誰も勝てないと思わさせる目があるからだ。
それだけで最初の仲間から集めて二ヶ月でここまで組織を育て上げた。
この組織はまだまだ大きくなる。
それはこれから始まる試験で新しい仲間を入れることで分かる。
『十二神界』と『除染隊』はこれから世界を狂わす歯車を手に入れる。
そこから全てが始まる。
仮の神と神殺しの戦の開始だ。
異能病カラミティ 凪鬼琴鳴 @kuronomakoto3214
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異能病カラミティの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます