蜘蛛の脚 6
取り敢えず、プラネタリウムの停止。自分たちの命を最優先にするならそれだけを目標にすればいい。でも、あたしにはもう一つ譲れないものがある。
「蝶男とカンダタ、あれもなんとかしなくちゃね」
「グラウンドの怪物に会うつもりなの?あの人は助からないと思うけど」
清音の保守的な意見はカンダタを見捨てるのと同等なのだと彼女自身は気付いていない。
「言ったでしょ。終わらせるって」
「でも」
「やっと意見を出したかと思えば我が身可愛さの我が儘ばっかり。助けてもらったのにあなたは恩を返さない。本当はあたしと一緒なのね」
「やめろルリ」
「こういうのはどうかな」
ケイがあたしを責めて光弥が提案する。清音は自分を恥じて俯いていた。
「二手に分かれるんだ。ケイと清音は機械室へ。俺と瑠璃が校庭に向かう」
「なんであたしと光弥が一緒なのよ」
「瑠璃を捕らえたってことでさ、蝶男に近づくんだよ」
なるほどね。
私が納得しているとハクが軽く背中を突く(つつ)。あたしを嵌める罠ではないかと考えているみたい。
「平気よ。いざとなれば逃げれる」
大体の決め事を話し合い、終わった頃に校内のチャイムが鳴った。
「皆さん、生き残れましたね。おめでとうございます」
スピーカーから流れたのはすみれではなく、蝶男の声だった。
「しかし、まだ終わりではません。皆さんには協力してもらいたいことがあるんです。校庭に集合してください。そこでご説明いたします。それと廊下を歩いても平気ですよ。脅威となるものを取り除きました。ただ、10分以内に来ていただかないとお迎えが来ますのでご了承ください」
「俺、清音が供給を止める。お前らは?」
2人の作戦は簡単で、決められた場所で決められたことをすればいいだけ。対してあたしたちはそれなりに策を練らないといけない。
「考える時間はないわね。まぁ、なんとかするわ」
「成り行きでうまくいくか?」
光弥の不満を漏らす。
「あたしを殺したいならとっくにそうしている。そうでしょ?」
蝶男はあたしを殺さない。そんな確信があたしにはあった。
「光弥も蝶男もやり方が回りくどいのよね」
蝶男があたしを殺さない理由は想像できる。現世で死ねばあたしの魂はハザマに流れるから。あたしの魂が欲しいなら別の方法を取らないといけない。
わからないのはハザマ側ね。死んだら魂はハザマに流れる。この摂理は光弥たちにとって有利になる。
拳銃の時もそうだったけれど、あれは即死レベルのものじゃない。あれはあたしの動きを封じる為のもの。光弥は抽出と言っていたけれど、わざわざその方法を取る理由が見つからない。
「その理由を今聞くつもりはないけれど、あたしの命は人質にできるのよね」
そう言いながら図書室の受付カウンターの引き出しを開ける。そこにあったカッターを2本頂戴する。これで怪物を倒せるとは思えないけどないよりはマシね。
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