蜘蛛の脚 5
皆は咆哮と表現していたけれど、あたしからしてみれば悲鳴だ。
「助けるわけじゃない。あいつに言えていない文句があるだけよ」
「それだけ?」
「あら、あたしは周りが思っている以上に我が儘なのよ。言わずじまいでモヤモヤを残すのは性に合わないの」
私と光弥は図書室に戻る。呼吸をひとつ置いて、ハク、清音、ケイ、光弥の順で見渡す。
ハクは心配そうにあたしを伺い、清音はケイの袖を掴む。そのケイはあたしに警戒しながらあたしの言葉を待つ。
「なんだかあたしが悪人みたいね。あたしよりも酷い虐殺者が校内にいるのよ」
「まだなっていないだけだ」
ケイのそれはあたしに対して?あたしが虐殺者になると考えているのかしら。まぁ、その時はその時ね。
「なら、この舞台のタイトルは虐殺者VS虐殺者候補ってところかしら。もっと良いタイトルがあるなら教えて」
「もしかして、すみれ先輩を殺すの?」
「茶番劇を終わらせるのよ。つまらない舞台を壊す。それが唯一の脱出口よ」
「あと30分で生徒玄関が開くはずよ。私たちが動かなくても」
「仲良しな先輩後輩の図は捨てたら?見苦しいわよ。これは生存者のいない舞台なの。クライマックスは校庭の怪物に食われる。誰もいなくなりました、おしまい。これがシナリオよ。バットエンドは鑑賞するだけならありだけれど、体験するのはごめんだわ。あたしはあたしのエンドを取りに行く。皆はどうなの?」
最初に答えを出したのはハク。それはあたしを守る決意か、単なる同意か区別がつかない。ハクはあたしの背中にピッタリとくっついて味方になると囁いてくれているみたいだった。
次はケイ。
「責務がある。ルリを見極める」
「ご勝手にどうぞ。でも、刀はいらないわ」
「なら、私も」
清音がケイに倣う。結局、自分の意思で決めないのね。あたしには関係ないか。
「俺も」
そして光弥。
「知りたいこと、たくさんあるから」
あたしは白鋏を取り出して、刃の先端を光弥の頬に押し当てる。光弥は逃げずに押し当てられた頰から赤い一線を流す。
白鋏とあたしを交互に動かす瞳は震えていて額から伝う汗は 冷たいものだった。
「監視しているから」
「もちろん。君に刺されるのはこりごりだよ」
全員一致したところでちょっとした作戦を話し合った。
活路として有効的なのは機械室にある魂のエネルギー供給を止めること。光弥曰く、それができればプラネタリウムが停止するらしい。
4カ所の供給源を回るよりも1カ所のプラネタリウムを破壊できれば楽だけれど、光弥でもその場所を把握していないようだった。全く、役に立たないわね。
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