魂のプログラム 21

画面から目を離したあたしは整理する。

これは実験?

プログラムで人格を上書きして、試して、また魂を空っぽにする、それを繰り返す。

あたしも空っぽになれて吊るされる?

目の前にいる女性がもう一人のあたしとして映る。

「ヤバい連中だってことは確かね」

ハクは彼らの横暴にひどくご立腹で眉間から鼻筋まで皺を寄せて小さな唸り声を出す。

早くここから出たいわね。

そう思い至り、女性に背を向けてドアノブを握る。いざ、出ようとした時にハクは短く吠えてあたしの心臓は跳ね上がった。

今にも動き出しそうな試験体の前で吠えないでほしい。

ハクを責めようと口を開くとドアの向こうから話し声が聞こえてきた。

「あの囚人はまだ見つからないのか」

「賢い奴でさ。でも、追い詰めてるのは確かさ。すぐに解決する」

光弥と弥だ。ハクはこれを警告していたのね。

ドアに耳をあてて、二人の会話を聞く。

「それより、処分はやめないか?。あれは珍しい型をしているんだから試験体にするべきだ」

光弥が何かしらに抗議している。囚人と言っていたから、多分カンダタについてね。

「何度も話しただろ。あれは処分だ。あの穢れは輪廻でも洗い落とせない」

「だったら封印すればいい。ハイヨウスイに入れてさ」

「あんなもの一つあるだけで手一杯だ。あそこに入れても押し戻されるだけだしな」

「たった一つの魂だせ?ハイヨウスイほどの恨みもない。そこまで恐れる理由もないだろ」

「いいから黙って従え!」

廊下だけでなく、あたしたちがいる部屋にまで怒鳴り声が響く。怒声の矛先があたしでもないのに身体が強張った。あたしに接していたあの優しい弥とは別人だと思えてしまう。

「お前はなんの為に作られたんだ!答えてみろ!」

「あんたに従うため」

光弥はうんざりとした様子で答える。小さく弱々しい声をしていた。

「そうだ!お前は!従わないといけないんだ!」

「何度も聞かされた」

「だったら!口答えをするな!」

「別に、口答えは」

肌を打たれたような破裂音が響く。ような、じゃないわね。実際にビンタされた音だわ。弥は深呼吸をして怒りを抑える。

「やることは?」

「囚人の確保、そして処分」

そうして、二人は歩き出して足音が遠くなる。

あたしはわずかにドアを開けて2人の背中を見守る。光弥は近くの部屋に入り、弥は真っ直ぐに進む。

カンダタの処分と言っていたわね。保管でも実験でもない処分。そして、カンダタを捕える役目を担っているのが光弥。あとを付けるなら光弥ね。

 弥が去ったのを確認すると素早く動いて光弥と同じ部屋に入る。

 さっきまでいた白い部屋と違ってその部屋には人らしさがあった。

 並んだ本棚に整理されていない資料本、漫画。スナック菓子のこびりついた油の臭い。光弥の作業場みたいね。本棚の向こうには白い部屋と同じデスクワークと見覚えのある黒い着物。

 カンダタだわ。すでに捕まっているじゃない。何やってんのよ。

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