風峰大学付属高等学校。


 立地としては悪くない場所に建てられている高校。十二年目と比較的に新しく、割と偏差値もそこそこ良くて、校内が周りの高校よりも綺麗だと有名になっている。しかし、それ以外に目立った点は他にない。ただ見えていないだけなのかもしれないが。

 そもそも、どうしてそんな場所にどうして俺がいるのかなんて言うまでもない。


「頭が良いからな……ッ!」

「飛び抜けて頭が良いのは国語と日本史と世界史だけでしょ」

「うるさい。黙れ」

「しかも、他の教科は平均より下。最近では赤点連発じゃない。頭が良い発言を撤回。そして、これからは全ての時間を勉強に費やします宣言をお願いするわ」

「それは言えなくも無いが……というか、そんなものは無理だ! 俺にはやるべきことがある」


 それは授業前に教室を抜け出し屋上でサボる。苦手な教科は大体いつもそうしている。

 いけないなんてことは無い。犯罪ではないのだからな。


「まあ、とにかく俺にはやることがあるんだ。邪魔しないでくれよ」

「はいはい。いつものやつね」


 そう言って、手のひらで風をあおぐ様に左右に手を振り、授業の準備を始めていた。それは望月の合図であると思っている。……いや、そうであって欲しい。


 予鈴の一分前になり、


「じゃあ、あとはよろしく頼むぞ」

「分かってるって」


 授業をサボっている間は何かをするという訳でもないので普段は手ぶらだ。まあ、そんなことはいつもやっていることだから分かりきっているし、言うまでもないか。

 廊下の突き当たりを曲がり階段を目にしたところで、丁度よく本鈴が廊下に響き渡る。


 この学校は三階建てになっていて、形としては地図上から見るとカタカナの「コ」の字になっている。別館と言うものはなく、全てこの校舎にまとめられている。

 その分サボっているとバレやすいが、しゃがんでしまえば怖いものなしだ。


 足音を立てずに忍び足で階段を上っていく。

 ふと違和感を覚え、踊り場から見上げるといつもの扉がわずかながらに開いていた。

 誰かいるのだろうか。

 一度も経験したことが無いシチュエーションに少しばかり、違う意味で興奮を覚える。

 恐る恐る一歩ずつ歩いていく。不思議と体に力が入りうまく動かない。


 やがて、扉の前まで来てしまった。

 どうしても体に力が入ってしまうためか、取っ手を持つ手が震えてしまう。

 このまま引き返してもただ恥ずかしいだけでなく、怒られるのは目に見えている。それでも戻るのか? と自分自身に問いかけなくとも分かっている。絶対に引き返さないと。

 考えていても仕方が無い。開けてしまえ。


「そらよっ……と」


 開けた瞬間、少しだけ気持ち悪さを感じさせるぬるい風が吹き抜ける。

 すると、そこには裸足で白のワンピースを着用して、遠いので顔立ちがよく分からないが、かなり目立つ綺麗なブロンドヘアーが太陽の光を反射している所為か、天使の輪が付いているように見える。

 いや、見た目からだと天使にしか見えない。

 呆けていると、彼女から切り出した。


「あの、あなたは誰なのですか?」

「あ、ああ、七瀬薫だけど……それより、お前は誰だ?」

「えっと、こちらの世界で表すなら……天使ちゃんなのです」

「……天使、ちゃん?」


 いや、絶対ないだろ。と突っ込みたいが、容姿からして天使であってもおかしくはないと感じて受け入れてしまった。

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