言葉をひとさじ

 もしあなたが、『言葉で応援したい。けれど、「面白かった」「楽しかった」くらいしか浮かんでこない。もどかしい』と思い、それでも言葉での応援を捨てきれないときにだけ、続きをお読みになってください。わたしは素人なので、効果的な技術はお教えできません。ですが、物語にファンレターを寄せるのは、いつだってその多くが素人です。拙くたってよいのです。あなたの思いを、言葉で伝えてみましょう。


 本エピソードでは、わたしがこれまでにしてきた、言葉を送るときに加える“ひとさじ”を紹介します。「ひとさじ」の意味がうろおぼえで調べてみたところ、軽量スプーンの小さじ一杯(5グラム)だそうです。とても少ないですね。そのくらい軽い気持ちで大丈夫です。



◉印象に残る登場人物がいたら

 お話を読んで、印象に残った、好きになれた登場人物はいましたか? もしいたら、その人物の「名前」を言葉にしてみましょう。たとえば、『いのりと士郎のふたりのお話が楽しかったです』と。

 わたしは、書き手として登場人物の名前を覚えてもらえることに、とてもうれしさを感じます。「彼」でも「彼女」でもなく、わたしが、わたしの作品のためだけに贈った名前です。それを認めてもらえただなんて、うれしくないわけがありません。きっと、他の作家さんも同じだと思います。


◉心に響いたセリフがあったら

 お話を読んで、『このセリフ、心に響いた』と感じる場面はありましたか? もしあったら、その「セリフ」を言葉にしてみましょう。

 たとえば、『いのりの「あなたが目を開けたとき、そこには必ず、わたしたちがいるから」が、心に残りました』と。

 作家さんが考えるセリフは、何ひとつとっても思いが込められています。「どうだっていいでしょ」の気持ちで生み出されるセリフなんてありません。だからこそ、そのうちのひとつでも拾い上げてもらえたなら、とてもうれしくなるはずです。


◉鮮明に情景が思い浮かぶ描写があったら

 お話を読んで、『文字から風景が目に浮かんだ』と感じる場面はありましたか? もしあったら、その気持ちを伝えてみましょう。

 たとえば、『「家から少し歩くと、公園が笑っていた」を読んで、子どもたちが公園で遊んでいる風景が浮かびました』と。

 その場面にぴったり、と信じてやまない情景描写を褒められるなんて、作家さんにとって至上のよろこびです。それだけで大満足です。


◉読み終えたあとの、あなたの気持ちをそのまま

 お話を読み終えたとき、あなたの気持ちはどうなっていますか?


『読み終えたあと、とても穏やかな気持ちになれました』

『お話の続きが気になります』

『引き込まれて、一気に最後まで読みました。楽しい時間をありがとうございました』


 上の例は、どれもシンプルな気持ちですよね? 難しい言葉はいりません。あなたの素直な気持ちがあれば、それで十分です。



 物語を構成するものの中で、読み手の印象に残りやすそうな、「登場人物」「セリフ」「情景描写」についてふれました。他にも「世界設定」「伏線」「作家さんが作品に込めた思い」などもありますが、それらを述べるとなると“ひとさじ”どころではなくなってしまいます。ですので、ここではふれずにおきます。


 本エピソードでお伝えした“ひとさじ”は、いかがでしたか? 『これくらいなら自分にもやれそう』と思ってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。

 まずは、できそうなところから始めてみるのが一番です。「面白かった」「楽しかった」でももちろん作家さんはよろこびますが、ひとさじでも言葉を増やせれば、あなたの応援の味(印象)が変わるはずです。


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 ◉Point

 ひとさじの言葉で、応援の印象が変わる。

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 つづく

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