「応援しない」の選択

「応援」を語るエッセイでありながらそれに反しますが、わたしはこの「応援しない」という選択を大切にしています。


 応援とは、物語にふれて心が動いたときに出す、ファンレターのようなものです。ファンレターとは、読者としての気持ちが大部分を占め、『作家さんによろこんでもらえるかな?』は、ほんの少し“あってもよい”(なくてもよい)と思っています。

 お話を読んでみたけれど、内容が合わず、最後まで読めない場面もあるでしょう。そんなときは、🤍も★も送らずに、途中でお話を閉じてよいのです。義理立てから送られる応援は、そこに気持ちがないことが透けて見えます。書き手の視点で言うなら、そういった応援はとてもさびしいと感じます。読み手の気持ちがどこにもないので、何も伝わってこないんですね。


 もしあなたが書き手になったのなら、あらゆる応援手段に対して、読み手でいたときより、少しだけ気配りが必要です。人が持つ心理には「返報性へんぽうせいの原理」と呼ばれるものがあります。お礼をもらったらお返ししないと、の心の動きですね。この気持ち自体は、とても美しいものです。礼には礼を。そうして築きあげた関係は、間違いなく宝物になります。

 ですが、返報性の原理が働く場面で、もし片方に気持ちがなく、自分のためにそれを利用するなら、こんなに悲しいことはありません。自身の作品にPVや🤍、★を求めるあまり、相手の良心につけいる言動が、書き手であれば誰にも起こりうるのです。作家さんによっては、ご自身の紹介欄に『応援はうれしく思いますが、お返しをするかはわかりません』と、お断りしているかたも見かけます。そのメッセージにふれ、わたしはよい印象を強く抱きました。かっこいい、と。


 あらゆる応援は、気持ちが動いたそのときだけ送りましょう。そうするのが、読み手・書き手どちらにとっても、最良の選択なのです。


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 ◉Point

 気持ちが動かなければ、応援しない。

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 つづく

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