キッドさんの四国上陸 最終回

最終話

「長い夜の終わり」

の巻




高松市を後にして、高速道路をひた走る

「高松自動車道」という高速道路かと思っていたら、途中しばらく片側一車線だった

有料自動車道だったのかな…のどかなところだ



朝倉は後部座席でウトウト

運転は平松。このまま豊橋まで行けるよ!と余裕を見せる


津田の松原SAで休憩

お土産なども見て、佐野はこんなものを見つけて食べていた

しょう油豆のソフトクリームだって

香ばしくって、バニラの甘さにほどよく豆の風味が乗っている感じが好ましい

しょう油の味は、あんまりしなかった

アズキよりも甘さを抑えてあって、アーモンドやキャラメルのような香ばしさと苦味がほのかに…

あれだけ腹いっぱいだと言っておいてしっかりデザートを食う辺りがデブの面目躍如である


もうすっかり夕闇が迫ってきている

徳島県でとうとう辺りが暗くなって、だんだんと車が増えてきた

そういえば今日は休日だった

コレは大阪が混むだろうなあ、と早くも警戒


気がつけば真っ暗な中を走り続けていた

トンネルも見知らぬ街も、いくつも通り抜けた

鳴門海峡を渡る頃には朝倉も起き出して来た。いよいよ、四国を離れる瞬間だった

淡路島は結構大きかった

明石海峡大橋はとうとう、暗くて走るところを抑えられそうに無かった


淡路SAで休憩

おみやげ物なども最後の物色

ここは明石海峡大橋のすぐ手前とあって、展望スペースもある。広いバルコニーは暗いながらも人がいっぱいだった

カップル、家族連れ、カップル、老夫婦、カップル、カップル…

当時のケータイのカメラで、頑張ってライトアップされた観覧車と明石海峡大橋を撮影しました



観覧車は緑色。ハイウェイオアシスが併設されていて、そこに聳え立っていた

いーなー…きっとカップルで入ったら

「ロマンチックあげるよが止まらない」

状態なんだろうなあ~~~!

…かめはめ波打ち込みてぇ

橋本潮さんは、あれで正気なのかねえ(2020年の時事ネタ)


明石海峡大橋は、なんと様々な色に変化します

さっき撮った写真ではグラハム・ボネット、じゃなかったレインボー

私はRainbowと言えばGraham Bonnetが居た頃のラインアップとアルバムなのだ

Down To Earthは名盤ですな

時間によってかパターンがあるのか、この他にもピンク色や黄金色に輝いておりました


朝倉もカメラで記念撮影を頼もうとするも…三人で収まるには誰かに声をかけないとならない

平松のカメラはデジカメなので高い所に置いてタイマーでなんとか撮影できたが、朝倉はインスタントカメラ

誰が頼みに行くか、すわジャンケン!

…と思ったとき、朝倉自ら子連れ夫婦の旦那さんに

「あのすみません、写真とってもらっていいですか?」

とお願いしに行ってくれた

「俺ちょっと行ってくるわ」とかもなしに、唐突に

なんだか頼もしいと言うか、やるじゃん!って小さく感動した

普段あまりそういう事をしないタイプだと思ってたから…

無事撮影してもらって、広域路線図で帰りのルートを確

そして再び車に乗り込み、3人はとうとう本州へと帰りついた


1泊3日の長い長い夜が終わろうとしていた




おしまい


















と、思うじゃん?

もうちっとだけ続くんじゃ

そう、こっからまだまだ長かったのである

このまま大人しく帰れるようなバカ三人ではなかった


ココからが本当の地獄の始まりなのである


まず明石海峡大橋を渡ったところで合流する道路がハッキリしない

垂水インターから高速道路に乗るが、ハーバーハイウェイだの山陽道だの湾岸線だのがあって、非常にわかりにくい

後部座席で地図と格闘する佐野

コレを書きながらやっと思いついたのだが、後部座席でナビって難しい

すぐに看板も見えないし、あ!看板だよ!と言われてすぐに対応できるような速さで走ってるわけでもないし…

しかし、この時はとにかく必死であった


平松がとうとうケータイのナビに頼りだしたとき、佐野は少なからず傷ついたプライドを守ろうとした

あれは相当悔しかったと見えて、京橋PAに降り立ったとき、佐野はとうとうブチ切れた

佐野「あ~~~~もう!なんでこんなもんがわからねぇーーんだオレは!!!」

何に対してかって、そりゃあ自分の不甲斐なさに

地図読みが仕事?のはずなのに…落ち込む代わりにとうとう爆発してしまった

迷惑そうな顔で離れて歩くほか二名を尻目に、とにかく路線図を見に行く佐野

なんとかこの先のルートを確認するためだったが、どうにも要領を得ないので朝倉は道を教えてくれた父に電話をかける


路線図にかじりつく佐野に、言葉は丁寧だが迷惑そうに職員が声をかける

「あの、ココもうすぐ締めますねん…すんまへんな…(あとは佐野がいた場所の)シャッター下ろすだけですもんで…」


朝倉の親父さんの話と、さっきの路線図、それに東海地方の地図に乗っていた奈良県周辺の部分を総動員

平松「朝倉が運転中に道間違われて軽くイラッとくるのがわかったわ~」

これに佐野は大いに発奮。複雑怪奇な大阪都市高速から抜け出そうと必死である

それもケータイ電話のお手軽ナビに負けてたまるか!というアナログ気質な佐野は特に熱くなっている


目指すは長田インターである。そこで一旦降りて、近畿自動車道に乗り、西名阪で奈良県天理市へ。そこからさらに名阪国道で三重県亀山まで、あとは東名阪から東名に入るだけだ

便利な世の中になったものだが、これを把握するのは難しい…そしてそれを確認しながらすすむなんて、ハナっから無謀だったのだろう…

そんな事にも気がつかずぷんすか怒る佐野を後部座席に押し込めて、さらに帰路をたどる

長田インターから近畿自動車道

ああ、あれがそうか…といいつつなぜか反対方向へ

ずいぶん走ってからようやく気付いてUターン。高架の下が交差点になっていて、非常に分かりにくい…

バイパスに乗っても合流が右側で…これが思いのほか怖い


名古屋の清洲から出ている名岐バイパスも確か右側合流だった気がする

佐野も以前名岐バイパスを使ったが右から入るのって慣れてないうえにナゴヤはナゴヤで運転が雑で乱暴、そのうえ自己中心的で粗暴極まりない上にすぐ煽る

いったい何を考えて運転をしているのか聞いてみたくはないが、早く怖い目にあってほしい


走り出せばすっかり和気藹々の車内。佐野はまたしてもしょんぼり反省モード…

佐野「ごめんね…」

朝倉「あれはわかんねえよ」

平松「そうそう!最初からあんなもん通るほうがムリかもね」

佐野「じゃあ~これからも下道で行くか?」

朝倉「そういうことじゃねえよ!」


なんとか西名阪に乗って、奈良県まで通過する一行

行きは滋賀・京都。帰りは奈良県と、これで関西圏で行ってないのは和歌山県だけとなった

西名阪で天理市まできたら、そこからはバイパスだ

朝倉「あれがバイパスか?」

佐野「銀河鉄道みたいだな」

暗い夜空に向かって、オレンジ色の灯りが並んでいる様はまるで稜線に線路があるみたいだった

平松「ほんとだ~すげえキレイ」

佐野「あそこ走るんだったらすげえよな!」

朝倉「いやあ~ねえだろ」

佐野「じゃあ“あそこを通る”に20ポイント!」

平松「おっ、ポイント全賭けか!?」

朝倉「マジか!当たったら倍だぞ」


いつ誰がどう決めたか知らないが、佐野が何か面白いことを言って平松・朝倉から笑いを取ると彼らの判定により

「ポイント」

が与えられることになっているのだ。もらえる点数は1ポイントだったり10ポイントだったり色々

集めたってTシャツや缶バッジが貰えたりするわけでもないが、コレも毎回の決まりなのである

で、この3日間で佐野が獲得したのはたったの20ポイント

朝倉曰く「今回の判定はかなり厳しい」との事だったが…実際のところは

せっかく笑わせても

朝倉「んむ、今回は厳しく行くからな」

と握りつぶされてしまっていたのだ

要はヤツのサジ加減なのである


で、その無意味なシキタリを愚直に守る佐野は、今回貯めたなけなしの20ポイントを、

「山の稜線に沿ってバイパスが走っている」

ことに賭けたのである。男のロマンである




結果…



朝倉「おいコレ、バイパスじゃね!?」

平松「行くんじゃね!?」

佐野「わーいやったーー!」

見事ポイント2倍。この

「山田まりや(ラッキーチャンス)」

をモノにした佐野は持ち点が40ポイントになった


まあ、それだけなのだが



さて、コレまで快調に走ってきたレガシィであるが…なにやら異変が…


実はこのレガシィ、車検に出したばかり

その際にサイドブレーキのランプが点きっぱなしになるという怖い異常が発生していたのを直してもらったばかりだったのだ

直ったはずなのに…と、小さなPAに停車してチェックしてみる

平松は元自動車工場で働いていたし、朝倉も自動車の専門学校を自主卒業しているから、足回りもわかるのだ

佐野君はクルマのことはよくわからないので、カップの自販機で甘くしたカプチーノを買ってチビチビ飲んでいる

アレコレ試みるが結局原因は不明。特に支障も無いので…不安げながらも出発

しばらく走ってもランプは消えず

亀山に入ってすぐに東名阪に入る。少し渋滞があるみたいだ

ちんたら走りながら、少し前に同じメンツで何も考えず三重県に突入して、鳥羽まで行って喜んでいたことを思い出した

あれからたいした時間も経っていないが、四国に到達し今度は東北を目指すと言う我々

人間とは行き着くところを知らないものである

2020年現在、四国再上陸も東北進出も果たせていない

40歳になる頃には、行きたいね

下道で……


弥富からは愛知県だ。そのまま東名高速に乗って岡崎インターを目指す

もう帰ったようなものだ!と上がったテンションが、空腹でさえぎられる

インターを出てすぐに吉野家があったので立ち寄る…

牛丼を食べ終わって、ここで佐野が運転

サードドライバーは二人の限界が来たときにだけ登場する幻の男なのである

限界だったと思う。本人たちは否定しそうだが


岡崎から豊橋までの50キロ足らずをころころ走る

車内はしんみりムードだ

豊橋に入って一番近いのが佐野の家なので、とりあえずそこで解散

よって長い長い夜の記憶も、ここまでだ

最後に佐野家の向かいにある街灯の下で、フル装備で撮影した写真が

どこかに残っているといいけどなあ

割と気に入っていたんだ


荷物を降ろして、佐野の両手にいっぱいのお土産と傘に杖

この時点で夜中の1時を回っている

何時間一緒にいれば気が済むのか知らないが、3名の旅も今回は、ここまで


平松が音羽の辺りでつぶやいた

「また、ずっとこういうのやっていこうね」

もちろん、目標はにっぽん全国走破である





これにて、ホントにおしまいです

本当に長いことお付き合いいただいてありがとうございました

くだらない事極まりないうえ、醜い罵りあいも多かったのですが

友情のカタチなんて様々だと思います

なんと言われようが、

どう思われようが、

楽しくて仕様が無い。そんな

平松

朝倉

そして佐野和哉の、

ありのままの姿をお見せしてきました



また、どこかへ行って来た時は

懲りずに書きますのでどうかよろしく



弘法大師さま、どうもすみませんでした




これにて、完結いたしました

お付き合いいただき有難うございました

あれから時間は確かに流れて、状況も大きく変わっています

朝倉君のレガシィも買い替えて、今はありません

でもやっぱり、また旅に出たいと思っています

それは3人とも変わっていない事が、こないだ電話した時のムダ話で判明しました

時間とお金とガソリンのムダと引き換えに、ちっぽけで身勝手な思い出をもらってきました

mixiに載せた当時身内ネタの延長としてダラダラ書いていましたが

いつかもっとちゃんと手直しして載せたいなあと思っていました

ので、身内テイストは残しつつ、文章に少しずつ変更をして載せてみました


如何でしたでしょうか?

どこかに載れそうですかね?


まあそれはともかく

振り返ってみると、本当に私は大事な所でヘマをするという一番駄目な部分が、ちっとも直っていないんだなという事もわかりました

こんな文章に出来て、今でも思い出してみんなで笑えて

そんな仲間が、友達が私には出来ました

確信を持ってそう言えるようになったこと。それが、私ことデブの佐野君が四国からもらってきた一番のプレゼントかも知れません


みんなみんなありがとう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る