深く深く愛したい
カワウソに恋した子
第1話
手を繋いでうちへの帰り道を辿っていく。
『彼』のもう片方の手には買い物袋が提げられ今日の夕飯の材料が入っている。今日の授業はどうだったのかとか、バイトではこんなハプニングが起きたんだとか、何でもない日常の話をしていつの間にか家に着く。
エプロンをつけて今日の夕飯は『彼』の好きなハンバーグ。二人でハンバーグの種を作り、両手の中で往復させる。やり方を教えて、ほぉほぉと口を尖がらせて『彼』は空気を抜いていく。
テレビやゲームを一緒に見て時間は流れ、街は次第に眠っていく。私たちも明日は講義があるから一緒にベッドに入る。首を動かせばおでことおでこがぶつかる距離。規則的な寝息が私の精神を安定させていく。
かわいい寝顔。
すぐ寝ちゃうんだから。女性が羨む透き通った肌にかかる髪を梳いて顔を眺める。しっとりとした感触に少しだけ暖かい。
あぁ、私の、私の『怜』
怜の寝顔を眺めるときに私は幸せを実感する。怜を抱きしめるとき私は幸せを実感する。
愛がわかる。
手を繋ぎあったとき、私は怜に愛を注ぎ、怜は私に愛を注ぐ。まるで∞の形を作るかのように。同時に不安の種も育っていくの。
あぁ、私の、私だけの『怜』
見えないものじゃ不安なの。私を愛してほしいの。その愛で殺されてもいいの。こんな甘い地獄に心が壊れそう。
あなたは私の愛の形。ね、『
私は怜の顔を胸に抱いた。これ以上ない愛で。
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※怜視点
二人で大学への道を徒歩二十分かけて歩く。
「今日の服、かわいいね」
「そうでしょ!秋の新作なんだ。いつ着れるか楽しみにしてたんだ」
長いスカート丈に変わり、白に黄色が所々曲線であしらわれ、秋を感じる服装になっている。『彼女』は子犬みたいに嬉しそうに回りスカートが浮き上がる。
大学までの道のりは少し長いけれど『彼女』との時間はゆっくりのほうが好きだから自転車などは使わない。
「やっぱり『
澪はお洒落をすることが好きだ。収納スペースはすぐに服で埋まってしまう。
「怜の服も私が見繕ろうか?あ、じゃあ、次の休日ウィンドウショッピングしようよ。久しぶり外食とかもしてさ」
僕は微笑みながら頷いた。
この大学は蔵書数が多く図書館も広い。この静けさと広さを気に入って自習室代わりにする人も多い。漏れなく僕もその一人だ。
僕たちは必ず行き帰りを共にするようにしている。どちらかの講義が始まるのに合わせて来て、二人とも講義が終わったら帰る。
一日の大半を大学で過ごすことになるが苦になっているわけじゃない。勉強も自然とするようになるし人との関わりも案外増えたりする。
ちょうど柔らかい日の当たる席を選んで本を取りに行った。
この図書室から本を借りたことは一度もなく、すべて図書館内で読み終えている。家できっと読むことはないのだから借りる意味はそんなにない。本が誰かに借りられていようといずれここに戻ってくる。おとなしく他の本を読み始めるだけ。
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