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 目覚ましが鳴っていた。僕は眠い目をこすりながら起き上がる。


 なんだか、懐かしい夢を見ていたような気がする。「あおい」の夢……


 彼女が僕の前から姿を消して、いったい何年が経っただろうか。


『おい、ユウト。いつまでもぼーっとしてんじゃねえぞ』


 そうそう。「あおい」はこういう男っぽい言葉遣いをする女の子だった。


『おい! いい加減にしろ! 時計見ろっての!』


 ……!?


 思わず僕は振り返る。そこには……


 僕と同じくらいの年頃の女子が、浮かんでいた。


「うわああああ!」


 僕は悲鳴を上げて後じさる。そして、必然的に……僕の体はベッドから床へと移動する。全く意図していない、鈍い衝撃音と腰への痛烈な打撃を伴う移動。通常、人はそれを「落下」と呼ぶ。


「いたたた……」


 万有引力の存在を呪いつつ、僕は腰をさすりながら立ち上がる。


『相変わらず、おっちょこちょいだね』


 目の前の女の子が、呆れ顔で言う。学校の制服らしいブレザーとスカートを身につけ、髪はショートボブ。やや面長の、整った顔立ち。全然見覚えがない。というより……


 その体の向こうの様子が……うっすら透けて見えるんだが……


 これは……幽霊とか、そういう類いの物なのか……?


「お、お前は……何者だ……?」僕の声が恐怖でかすれる。


『忘れちゃったの?』


 彼女の呆れ顔にさらにブーストがかかる。


『あおい、だよ。小さい頃によく遊んだだろ?』


「ええええ!?」


 僕は仰天する。そう言われても、目の前にいるのは、僕の記憶の中の「あおい」の姿からはかけ離れた女子高生だ。


「いや、でも……全然違う、っていうか……」


『そりゃ、あたしだって成長はするよ。座敷わらしじゃないんだからさ』


 ……それとお前の、一体なにが違うと言うんだ?


『って、そんなことはどうでもいいから、早く朝ご飯食べないと、遅刻するよ!』


「!」


 言われて僕はようやく時計に視線を移し……既にマージンを致命的に失った時刻である事を悟る。


「やっべぇ!」


 僕はパジャマを脱ぎ捨てようとして……「あおい」がこちらをマジマジと見つめているのに気づく。


「向こう向いてろよ! これから着替えるんだからな!」


『はいはい』


 渋々、と言った様子で「彼女」は後ろを向いた。


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