第46話

全身義体のシャンシャンは、いくら泣いても目が腫れることはないのだが。


何故か真っ赤な目でグズりながら、先ほど言おうとしていた妙案について話し始める。


「グスン……グスン。私の案はな、グスン……。ランレイに何か贈り物をあげればいいんじゃグスン、ないかとグスン、いうものだ、グスン」


「子どもみたいにいつまでも泣くな」


メイユウは、言葉に詰まりながら説明したシャンシャンへ、また冷たい言葉を浴びせた。


そのせいで、シャンシャンはさらに泣き出してしまう。


電脳武人と呼ばれ、このローフロアの街を守っているシャンシャンだが、そんな彼女の姿に青龍偃月刀も泣いているようだった。


「メイユウ、ちょっと酷いよ」


「てめぇには優しさってもんはねぇのか?」


そんな二人を見たリーシーとシェンリアがメイユウを批難した。


シャンシャンは元相棒だろう。


それなのにどうしてそんなに冷たいのだと。


「ったく、これだからケチャップ女は」


「メイユウはもっと相手のことを考えたほうがいいよ」


シェンリアとリーシーは呆れた顔で両腕を組み、メイユウのことを睨み始める。


そして、二人はさらにメイユウへ――。


心がない。


サイコパスだ。


脳みそがジャンクパーツでできているんだと、罵詈雑言を言い続けた。


「これからはもう少し他人に対して思いやりを持ってよね」


「わかってんのかケチャップサイコ女。てめえのことを言ってんだぞ」


「とりあえず今この場で一番傷ついているのはわたしだわ……」


思いやりがないのはお前らのほうだ。


メイユウはそう思いながら、心の中で泣いた。


それから彼女たちは、シャンシャンが出した案――ランレイへの贈り物について考えることに。


やはりランレイくらいの年頃の女の子が喜びそうなものがいい。


だがしかし、それはなんだろう? と、四人は難しい顔をして唸りながら考えていた。


「やっぱりアクセサリーとかがいいんじゃない?」


「おお、さすがリーシー。いいな、かわいい小物とか」


リーシーがわかりやすい女の子が喜びそうなものをいうと、シェンリアがポンッと手を打ち鳴らして同意した。


だが、シャンシャンは別のものがいいのではないかと、二人の会話に入ってきた。


「それもいいのだが。私にはランレイのほしいものがわかるんだ。なぜならば私は以前に彼女と同じ立場にいたからな」


シャンシャンは、前に今のランレイと同じの立場――メイユウの助手をしていた。


その経験から今まさにランレイが必要としているものがわかると――。


自信満々に言うのであった。


「ほう。ではそれを教えてよ。贈り物の参考するから」


と、メイユウが訊ねると――。


シャンシャンは不敵な笑みを浮かべながら、どこに置いてあったのか大きなバックを出して、それを開けた。


「さあ、これが今のランレイに必要なものだ!」


「こ、これは……ッ!?」


メイユウ、シェンリア、リーシーはその中に入っていたもの見て驚愕した。


それは、チャイナドレスを着た女性の人形だったのだ。


シャンシャンはその人形を両手でギュ~と抱きしめると、頬ずりしながら嬉しそうにしている。


「この人形の名は、“おやすみメイユウちゃん”だ。私が助手のときはいつもこれを抱いて寝ていたぞ。ランレイもきっと喜ぶはずだ」


その後――。


メイユウの手によって、おやすみメイユウちゃんは原型がなくなるまで破壊され、シャンシャンが気を失うまで殴られた。


「肖像権の侵害で殺してやりたいわ」


まだ怒りが収まっていないメイユウだったが、リーシーに止められる。


そんなことよりもランレイへの贈り物を考えようと。


「う~ん、やっぱリーシーがいうようにアクセサリーかねぇ。わたしは歌劇団のグッズとかがいいと思うワケなんだけど」


「その発想は“おやすみメイユウちゃん”と同レベルだからな」


そこからメイユウとシェンリアのいつもの言い争いが始まった。


リーシーはその様子を呆れて見ていたが、ついに痺れを切らして訊ねる。


「もうッ! メイユウは一緒に住んでいてなにか思い出さないの? ランレイがほしがっていたものとかさ」


「あの子の……ほしがっていたものか……。あッ、あれだ」


何かを思い出したメイユウは、それをシェンリア、リーシーに伝えた。


それからシャンシャンを叩き起こして、彼女にも伝える。


「それなら喜びそうだな。つーかなぜそれが最初に出ねぇんだよ、てめぇは」


――シェンリア。


「うん! ランレイも絶対に喜んでくれるよ!」


――リーシー。


「うむ。高みを目指す者にはそれ相応のガジェットが必要だ。私のこの青龍偃月刀のようなものがな」


――シャンシャン。


と、三人もメイユウの話を聞いて賛同していた。


そしてメイユウたち四人は、この贈り物ならランレイも元気になってくれるかもしれないと、週末にパーティーを企画しようと決めたのだった。

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