胃がもう結構です
「なんだかなにを食べたのやら、さっぱりわからない夕食でしたね。
すべてがあの赤い香辛料の後味に汚染されてて」
アキは部屋を訪ねてきた王子に言った。
あまり食べなくても、胃がもう結構です、と言っているので食べられなかったのだ。
そして、充電器はパリスが城まで持ってきてくれることになった。
家に置いているらしい。
ちょうど王子の国の方角に家があるらしいので、
「城に届けるよ」
と言ってくれた。
「そうか。
ありがとう。
歓迎する」
王子にそう言われ、パリスは照れていた。
「いや、よその国の王子に歓迎されるとか」
それを聞いたアキは私が一番歓迎するべきだよなと思いながら言った。
「パリスさん、私も歓迎したいところなんですが。
私自体がそもそも、よそ者だし、城も王子の国も初めてなので……」
とその事実に気づていて、アキが青くなっていると、
「なんだ。
じゃあ、これは花嫁行列だったのか」
と言ってパリスが笑った。
アキたちは顔を見合わせる。
これ、そんな華やかな一行だったのか、と初めて知ったからだ。
「そういえば、花嫁を迎えに来たんでしたね」
「……なんだかお前のせいで、海老をフリーズドライしたり、フリーズドライされた往年の美女たちに会ったりの珍道中のような気がしていたが。
そういえば、俺は花嫁を迎えに来たんだったな」
と王子も本来の目的を忘れかけ、呟いていた。
しかし、見知らぬ国に行くのは心細いな、と思ったアキは、
「あの~」
とパリスに言う。
「一緒に行ってくれませんか?」
「は?」
「一緒に門をくぐって、一緒に城に入ってくれませんかっ?
ひとりで心細いの嫌なんですっ」
「いやそれだと、二人で心細いだけなんじゃないですか……?」
とラロックが言っていたが。
そんなこんなでパリスたちはまだ喉や胃をヒリヒリさせながらも部屋に戻って休み、アキも用意された部屋に行ったのだが、そこに王子がやってきたのだ。
香辛料のせいで、あんまり食べられなかったアキのために夜食を持ってきてくれたらしい。
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