チョコ
エリー.ファー
チョコ
好きな子のために、チョコを作るのが楽しくてしょうがない。
バレンタインとか関係なく、チョコを作るのが楽しくてしょうがない。
元々、お母さんがお菓子作りが大好きでそのせいもあってチョコを作るのが好きになったんだけれど。
とにかく。
チョコを作るのが楽しくてしょうがない。
大学生の今は、だれかれ構わずチョコを作っては渡している。
そう。
そうなのだ。
もう。
あたしは。
止まれないのだ。
自分の両手が勝ってにチョコを作り始め、それが部屋中に溢れてしまう。美味しいから別に食べるのに難があるという訳ではないのだけれど、とにかく量が多い。すべてを食べきる頃には胃袋が裂けるか、嘔吐を繰り返すか、見たこともない肥満体系になるかのどれかだと思う。
歴代の彼氏の中にはすべてのチョコを食べてくれる人もいたけれど、大体が、やはり胃袋が裂けて死んでしまうことが多かった。また、その人たちの死因が、大量のチョコによる胃袋の破裂であり、その理由を自分が作っていると思うと妙にやる気が湧いてきてしまうから困ったものだった。
自分の思いを調節できないのが難点ではあると思う。
チョコを作りたいと思っても、別に作らなければいいだけの話なのだ。けれど、何故か体が動くのだ。チョコを求めて動くのではない、チョコを作ることを求めて動くのだ。
そんなことあるか、と思うだろう。
あるのだ。
この場所で起きているのだ。
そもそもチョコよりも、バームクーヘンの方が好きだし、チョコ味のバームクーヘンよりもただの、ノーマルなバームクーヘンの方が好きだ。
何かとチョコ味にしたがるお菓子というものが好きではないし、そのもの本来の味を楽しむのであればノーマル、もしくはプレーンあたりが妥当ではないかと思う。
チョコはそういう意味では、単体では確かに良いのだけれど、邪道感を強めてしまうのだ。
どうにかして、自分の体からチョコというものを、抜いてしまわなければならないと考えてカウンセリングを受けたこともある。
気が付くと。
あたしは。
カウンセラーの先生をチョコで殺してしまっていた。
硬いチョコで、先生の首を切り裂いたのである。
やってしまった、と思った。
でも。
仕方ないのだ。
先生がチョコの悪口を言ったから。
そう。
その時だ。
あたしはそこでようやく気が付いた。
あたしはやはり、チョコのことが好きなのだ。誰かにチョコをけなされた時に、こうやって本気になって、人を殺めてしまうくらいなのだから。
チョコを好きだとということを隠す意味もない。
チョコを嫌いになろうと思う必要もない。
チョコを愛してしまおう。
そう結論付けて、悟ることができたのがカウンセラーの先生を殺して逃亡を始めた、四年目の春のことだった。
桜の花びらを見つめながら、あれをチョコの中に練りこんだら、きっと素晴らしいものができるだろう、と想像している。
今のあたしの立場では、好きなようにチョコを作ることは難しいけれど、でも、いつか、あんなチョコもこんなチョコも作ってみたいと思っている。
そう。
そういう春。
チョコ エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます