北高戦隊卍屋倶楽部! ~俺が女子高生になったワケ~

侘助

はじめに

 俺には秘密がある――。


 とはいえ、高校生というのは仮の姿で世界征服を企む悪の組織と戦う異能力者だとか、ある日突然現れた魔法少女とエッチでハートフルな同居生活をおくっているだとか、そういった中二臭い妄想をはらんだ非科学的な秘密なんかじゃない。


 放課後になると、俺は誰もいない旧校舎の理科準備室へ向かう。

 そこで制服を脱ぎ、に着替える。スパッツを穿き、プリーツスカートを身に着け、前髪をヘアピンで止めて、艶の出るリップクリームなんぞを塗る。

 もうお気づきの方もいるだろう。


 そう、俺は女になる――。


 念のため断っておくが、俺にそんな趣味はない。

 じゃあ、なぜ女装するのか。

 その理由は追々話すとして、ここでは好き好んでこんな格好をしているわけではないということを肝に銘じて頂きたい。念のため。


 さて、今あなたの頭の中には女装した俺の姿はどんな風に映っているだろうか。

文化祭で女装した、スネ毛ボーボーがっちりボディの陽気な運動部の男子高校生?

 それとも、秋葉原のカフェで働いているような、薄目でなんとか女に見えそうな化粧バリバリの男の娘?


 はっきり言って、そのどちらでもない。


 俺は超が付くほどの女顔でメイクは不要。まつ毛も長く、「女性声優が喋ってるみたい」と言われる程声が高い。おまけに華奢で低身長とくれば、360度誰がどう見ても女にしかみえないと思う。

 手前味噌で恐縮だが、ちょっとした美少女の部類に入るんじゃないだろうか。


 思春期を迎えた中学生の頃、俺は自分の容姿がコンプレックスになった。

 女子たちは口々に「かわいい~」と俺に近づき、男子たちは「いや、ちょっと……」と頬を赤らめ遠ざかる。

 いつしか俺は声を低くして喋るようになり、前髪を伸ばして素顔を隠すようになった。


 それから三年余り――。

 高校生になった俺は、ある女子生徒に出会い女装をする羽目になる。


 これから話すのは、そんな俺の、ちょっぴりエッチでスリリングな学園物語である……。

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