難病で叩き込まれたこと。

近衛源二郎

第1話 球脊髄性筋萎縮症

厚生労働省の特定疾患という病気は、多くあります。

その中で、特に難治性の病気。

いわゆる不治の病を難病と言います。

そのほとんどは、原因が不明で、当然、現在の地球の医学では、治療方法もない病気です。

発病してしまえば、進行を送らせる程度しかできません。

そんな病気を患い、健常者の視線に晒されて、始めて得ることが多くあります。

健常者の視線は、好奇心でいっぱいです。

下手をすると、心ない罵詈雑言の限りが飛んできます。

神経難病の場合、ほとんどの患者が車イスの利用者になりますが、見た目では、なぜ車イスかがわからないのです。

したがって、悪口を言う人は必ず現れます。

これは、最近よく聞く、確認もせずにデマを拡散してしまうことによく似ています。

その人が、車イスに乗っている理由を確かめもせずに非難してしまう人が、なんと多いことでしょう。

SNSで、よく確認せずに拡散して、他人を陥れる人が多いのは当たり前のようです。

筆者が車イスで歩道を通行していた時、いい大人が、車イスのくせに歩道の邪魔するなと、車イスごと転倒させられたことがあります。

駆けつけた警察官によって、その人は逮捕されてました。

車イスは歩行者ですので、歩道しか歩けないということを知らなかったのだと思います。

筆者は身体障害者手帳2級です。

近くの派出所で、警察官が救急車を呼んでくださいました。

救急隊の方は、さすがに筆者の病気のことをご存知でした。

筆者の病気のことを、加害者の方と警察官に説明されました。

加害者の方は。

『そんなきつい病気とは

 知らず。

 申し訳ない。』

と、土下座してくれましたが

『いやいや、そんな身体のく

 せに、外出していた私が悪

 いのです。

 ただ、これからは、車イス

 に偏見を持たないで下

 さい。』

とお願いしました。

『被害届け書いて下さい。

 彼を傷害罪にできます。』

とお巡りさんが教えて下さいました。

『いいえ、出しません。

 こんな身体で、1人で外出

 していた私が悪いのです。

 これからへの戒めになりま

 した。

 ですから、被害届けは必要

 ありません。

 私、医療費、かかりません

 ので。

 救急車ですし。

 帰りは、介護タクシーです。

 市からチケットもらってます

 ので、被害、ありません。』

そうです。

私に、金銭的被害は出ないのです。

『ケガは被害ですよ。』

お巡りさんは教えて下さいます。

ヘルパーをつけずに外出した私の責任ですからと固持して救急車に乗せて頂きました。

病院では、主治医や担当看護師から、散々に叱られました。

『あなたは、なぜ危険に自分

 から飛び込むんですか。』

看護師さん涙ぐんでくれました。

『車イスは、今回みたいなこ

 とでなくても。

 歩道の傾きとか段差とかで

 簡単に転倒します。

 これからは、1人で外出して

 はいけませんよ。』

涙ぐみながら叱ってくれる看護師さんが、なんと優しく思えました。

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