第31話 オーク討伐依頼

 乗合馬車に揺られ、ヴェルノの街へ到着する頃にはグレイスの機嫌が直っていたので、昼食を済ませ、約束通り冒険者ギルドに入る。

 何か手頃な依頼が無いかと、壁に張られた依頼を眺めていると、見覚えのある依頼が張ってあった。


――オーク討伐依頼――


 これはゲームの中でも頻繁に発生する依頼で、繁殖力の高いオークが増え過ぎるので、減らして欲しいという依頼だ。

 オークは色んなゲームで定番のモンスターなのだが、ストレングス・クエストでも同じ様な設定で、顔が豚の人間と言う表現が最も適切な気がする。

 ゲームによっては、オークの肉が食用だったりするのだが、幸いこのゲームではオークの肉は食用では無い。……た、食べないよな!? 顔が豚でも人間みたいに二足歩行で武器まで使う奴の肉とか。

 とりあえずオーク討伐は、食料不足による物ではなく、オークの数を減らす事が目的なので、大丈夫だろう……きっと。

 特に場所や期間の指定はなく、倒した数に応じて報酬が貰えるタイプの依頼なので、今のグレイスの希望にもピッタリ合うだろう。

 強いて問題点を上げるとすれば、グレイズがいつまでも狩りを切り上げない可能性があるのと、今は剣士だがいずれ女騎士になるので、くっころ……いや、今のは忘れよう。

 一先ず、グレイスがオークを倒せる程のステータスがあるかを確認するため、デバッグコマンドでステータスを見てみる。


『グレイス=ベネット 十六歳 女

 公爵令嬢 Lv15 冒険者:E

 STR: 71(E)

 VIT:138(A)

 AGI: 98(C)

 MAG: 97(B)

 MEN:145(A)

 DEX: 40(F)

 スキル:耐闇属性(S)、神聖魔法(C)、剣技(F)』


 ゴブリンロードとクイーンビー、クイーン・ナイツの大群をパーティで討伐したからか、レベルが8も上がっていた。

 まぁこれだけ生命力があれば、オーク相手に後れを取る事はないだろう。

 一応、リアムがオークが出現する場所へ行くのは、概ねレベル12くらいの時なので、今のレベルが15もあるグレイスなら大丈夫なはずだ。


「グレイス。これなんてどうだ? オーク討伐なんだが、生命力はあるけど、攻撃は大した事がない。更に、身体が大きい上に、動きも遅いから攻撃も当たり易いだろう。魔物を狩りたいというグレイスに合っている依頼だと思うんだが」

「うーん……オークは戦った事が無いんだけど、ウィルさんから見てどう思う? 私でも勝てるかな?」

「大丈夫だと思うよ。ピンチに陥りそうなら俺が助けに入るけど、今のグレイスならピンチになんてならないと思うけどね」

「えっ!? えっと、ウィルさんが大丈夫だって言ってくれるなら、きっと大丈夫だよね! じゃあ、その依頼を受けましょう!」

「わかった。オークが沢山居る場所は俺が知っているから案内するよ。そこで狩れば、すぐに沢山狩れるはずだ。今から馬車に乗れば、夕方には目的地に着くだろうしね」


 グレイスも同意してくれたので、依頼書を持って受付カウンターへ。

 昨日クイーンビーを倒した為、グレイスの冒険者ランクがFランクからEランクになっている。

 そのおかげで、昨日のように揉める事は無かった。

 冒険者は、自身の冒険者ランクの一つ上のランクの仕事まで受けられるんだけど、オーク討伐はDランクの依頼内容だからね。

 ギルド職員さんに依頼に取り組む事を受理してもらい、この街の周辺でオークが沢山居ると言う場所を教えてもらった。

 素直にその場所へ行っても良いのだが、グレイスがEランクなのに一つ上のランクの依頼を受けている……と、職員さんには映っているので、実はオークの出現が少ない場所という可能性もある。

 なので、当初の予定通り、俺が知るゲーム内でオークが沢山現れる場所へ行く事にした。

 そして、再び乗合馬車に揺られて居るのだが、


「ところでウィルさん。ウィルさんって、どうしてそんなに魔物に詳しいんですか? クイーンビーの巣なんて、普通は存在すら知らないと思うんだけど、場所まで知っていましたよね?」


 今更ながらにグレイスが困る質問をしてきた。

 どうしよう。正直に、ゲームでこの世界の事をだいたい知っている……なんて言っても、頭がおかしいとしか思われないだろう。

 とりあえず、無難な回答をしてみる事にした。


「そ、それは……アレだよ。俺が若い頃に沢山冒険していたららね。だから、いろんな知識があって、初めて行く場所でも、だいたい分かっちゃうんだよ」

「凄いです! でも、若い頃って言うけど、今でも十分に若いと思うんだけど」

「ははは、ありがとう。褒め言葉として受け取っておくよ」

「いえ、本当に若いんですけど」


 グレイスに嬉しい事を言って貰いながらも、自分自身がオッサンだという事は良く分かっているので、適当に流し、


「お。それより、着いたぞ。グレイス。この街の近くに、オークの群れが居る場所があるんだ」


 ヴェルノの街の北西にある、スッチーオの街へと到着した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る