第7話 七魔将レイモンとのバトル
「おや? 私の事を御存知なのですか? 流石は英雄ウィルですね」
レイモンが薄らと笑みを浮かべながら近づいてくる。
マズい。本来ならば、勇者がレベル50くらいで、かつ仲間も装備も充実した所で戦うボスだ。
装備品はともかく、それ以外が圧倒的に足りない。
レベルは30くらいだし、仲間はおらず、そもそも俺は勇者じゃないし……って、これは反則だろ。
オープニングイベントで戦うような相手じゃないっての!
「はっはっは。どこで私の事を知ったのかは存じませんが、そんなに警戒しないでください。これでも私は、貴方に感謝しているのですよ」
「感謝だと!?」
「そうです。貴方がこの地域を担当している前七魔将を倒してくださったおかげで、私がその空いた席に着く事が出来ましたからね」
あー、そういう設定だったのか。
だからレイモンは七魔将の中で最弱……って言っても、勝てるレベルではない。
なので、このまま帰って欲しかったのだが、
「この教会の中から上質な闇の力を感じたので来てみれば、思わぬ出会いがあったものです。ですから……」
「ですから?」
「……感謝してもしたりない貴方は、私自ら殺してさしあげましょう」
やっぱり、そういう展開になるのかよっ!
ゲーム開始直後のボス戦は負けバトルと相場が決まっているけれど、だが俺はここで負ける訳にはいかないんだっ!
『レイモン ???歳 男
七魔将(新入り) Lv46
STR:144(C)
VIT:666(S)
AGI:133(C)
MAG:218(A)
MEN:121(C)
DEX:156(C)
スキル:死念魔法(S)、不死特性』
余裕たっぷりに、ゆっくりと近づいてくるレイモンのステータスを確認してみたが、最弱とは言っても七魔将だけあって数値がおかしい。
VIT666って何だよ! こいつがアンデッドだからか!?
だがステータスは高いものの、こいつはアンデッド故に七魔将の中でも一番弱い。
なぜなら、よくあるアンデッドの設定そのままに、ストレングス・クエストでも光と火に弱いという特性があるからな。
おまけにゲーム開始直後のタイミングだからか、本来戦う時よりもレイモンのレベルが低くなっている。
通常の物理属性での攻撃は、すぐさま回復されてしまうが、弱点の属性で攻撃すれば大ダメージが与えられる上に回復もされない。
なので、
『デバッグコマンド……アイテム生成。対象、聖焔の剣』
早速、火属性の剣を作り出し……って、重いっ!
この剣も勇者専用武器なのかっ!?
他に火属性の強い武器って何があったっけ……って、しまった! レイモンが何か放った!
「ぐっ……」
「おや。貴方は前七魔将の呪いで生命力がなくなっているはずなのに、盾で防いだとはいえ、今の魔法を受けて耐えるのですね」
今装備しているのが店で売っている品だからか、レイモンの魔法攻撃? を防いだにも関わらず、ダメージを受ける。
もしもゲームの設定のままのステータスだったら、今ので死んでいたかもしれない。
「神聖魔法――ヒール!」
「神聖魔法――キュア!」
慌てて回復魔法でダメージと、念のために状態異常を治癒して、ふと思う。
ストレングス・クエストでは、プレイヤーは主人公である勇者のみを操作するが、その勇者は回復魔法を使用出来ない。
だから試した事なんて無いけど、よくあるアンデッドの設定そのままなので、
「神聖魔法――ヒール!」
「なっ!? 何故、私がアンデッドだという事まで知って居るのだっ!?」
良し、効いてるっ!
様々なゲームで、アンデッドは回復魔法でダメージを受けるが、この世界も同じでレイモンの身体が徐々に崩れていく。
「神聖魔法――ヒール!」
「神聖魔法――ヒール!」
「神聖魔法――ヒール!」
レイモンに向けて回復魔法を連打しながら、デバッグコマンドで俺のステータスをMAG極振りに変更する。
『ウィル=サンチェス 二十四歳 男
元英雄の牧師 Lv32
STR: 50(S)
VIT: 50(G)
AGI: 50(S)
MAG:780(S)
MEN: 50(S)
DEX: 50(S)
スキル:剣技(S)、神聖魔法(S)、精霊魔法:土(B)』
MAGを200から780に変更し、約四倍のダメージとなったヒールを連打して、レイモンを近づく事さえ許さない。
その結果、
「そんな……七魔将であるこの私が、人間ごときに……」
「うるさいっ! 子供たちが起きるから、静かに消えろっ!」
ヒール連打で既に身体が維持出来なくなったレイモンを前に、元のステータスに戻すと、調子に乗って剣で止めを刺したかのように倒してみた。
やはり最後は剣で締めたいよな。格好良いし。
完全にレイモンの気配が消えた所で、突然身体が軽くなる。
これはもしや……と思い、デバッグコマンドで確認すると、レベルが37になっていた。
相手は最弱と言っても、七魔将の一人だからな。一気にレベルが5も上がっている。
ステータスを確認し、流石にこれ以上の戦闘は勘弁してくれと思っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ウィルさーんっ!」
「あ、ジェシカ!」
「あの、今何かと戦っていました?」
「えっ!? いや、その……何でも無いですよ。それより、そちらに居る方々が騎士の人たちですか?」
「はい。盗賊さんたちは、騎士さんたちにお任せしましょう」
ジェシカが連れて来てくれた三人の騎士と協力し、穴に落とした盗賊たちを引っ張り上げて、後は任せる事にした。
……やった! これから俺は、平穏な世界で暮らす事が出来るんだっ!
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