横浜西口繁華街探報

@neirugan

第一回 序文

未だに周辺にビルの建設が続き、ますます複雑化する横浜駅。乗ってきた電車を降り、そのクソほどある改札をくぐればおおよそ二つの口に行き着く。西口と東口だ。二つは中央通路で結ばれ、赤い靴とガス灯のモニュメント、崎陽軒の売店等を挟む様に位置している。それぞれ西口は高島屋やバス停、東口はそごう横浜、旧オタクビル等がある。ここでは西口に向かう。作られたばかりの連絡階段を上り、駅に隣接している高島屋に入る。店内の通路を通過すると相鉄線の改札口、さらに蕎麦とバジルとドブが混じったような臭気を漂わせる異様な街並みを見るはずだ。おめでとう、あなたは横浜西口五番街にたどり着いた。

西口五番街は私が西口の相鉄線乗り場近くの繁華街をまとめて呼ぶ名前だ。本来は相鉄線の建物とその近くの建物が西口五番街と分類されていたが、私はそこに隣のパルナード通り、近くの帷子川を挟んだ向こう岸の土地を含んで呼んでいる。私がそもそも西口五番街に興味を持ったのは、私がゲームボーイのカセットを求めていた時に中古ショップ「トップボーイ」をネットで知った時からだ。インターネットでレトロゲームを販売しているショップを検索し、表示された位置に意気揚々と足を運んだのはいいものの、トップボーイのある西口五番街の様子に驚愕した。五番街の入り口には立ち食い蕎麦屋の店内に入れなかった客が、堂々と蕎麦屋の看板にどんぶりを置き、歩道や車道で公衆の面前でソバを啜る。同じく駅側のにあるイタリアンカフェはバジルの匂いを垂れ流すが、その匂いは脇を流れる帷子川のドブ臭と混ざり合う。アニメ、マンガ等を扱うショップ、PCやスマホに関係するショップは多いが、それを圧倒するほど居酒屋とパチンコが立ち並ぶ。一歩裏道に逸れれば壁は落書きで覆いつくされており、近くの交番の存在意義を疑いたくなる。

私はその独特な雰囲気に圧倒されたが次第に惹かれていき、今では横浜に行った時には必ずといっていいほど立ち寄るようになってしまった。その理由は主に三つだ。


①個性な店の数々:

私の体験した限りでは、この街を超える程のサブカルチャーのショップがあるのは秋葉原ぐらいだと考える。らしんばん、マツヤ、トップボーイ、じゃんぱら、ムーラン、ラタムラ、ドスパラ、イエローサブマリン、アニメイト、ブックオフ…アニメやマンガのみで無く、カメラ専門店、対戦ゲームが殆どのゲームセンター、古着屋、占い、古い映画館などジャンルも幅広い。飲食店に関しても、立ち食いそばや中華料理を始めとして、イタリア料理、カフェ、珈琲屋、たい焼きやまで備える。この街を一時間程度歩くだけで、様々な分野に触れることが出来るだろう。

②歩き回る楽しさ:

この街には「宝探し」にも似た魅力がある。上にもある個性的な店を訪ねることだ。50年以上昔に販売されたカメラを、自分の手で確かめ吟味する。絵コンテ版初代ゴジラのソフビが飾られた棚の隣で、モンティ・パイソンのコンプリートDVDBOXを発見する。店への行き方も入り組んだ通り、上り坂、下り坂、三本の橋等一回では分からないほど複雑だ。その合間には、似つかわしくないほどに洗練された外装のカフェ、窓にレールの鉄紛がこびり付くほど線路沿い近くの薄暗い中華料理屋、50年前から営業する立ち食い蕎麦などここでしか食べられないような飲食店に行くのもよい。これらを次から次へとはしごしながら、宝探しの気分に浸ることが出来る。これは、秋葉原などの一部の街でしか得ることが出来ない楽しみだ。

③特徴的な景観:

この街では、古い景観と新しい景観が合わさっている。通りの建物は新しいが、その端の映画館は30年前に建てられ、たった2つのシアターで5本ほどの作品がひたすら上映され続けている。駅沿いのアーケードは古く、中華料理屋は昭和の雰囲気を保ち続けているが、隣のゲームセンターは最新機種が導入されている。サブカルチャー関連のショップは新しいが、中には半世紀にも渡る歴史を持つ店もあり、この特徴的な景観の一因になっている。


このような理由により私は西口五番街に惹かれるようになった。始めは一つのショップに行くだけの予定だったのが、私は今このような文章を書くまでに至っている。この街にはそれだけの魅力が存在するのだ。

私はこの作品で西口五番街の魅力を皆さんに出来る限り伝え、この街をお気に入りの街とする人を一人でも増やしたいと思っている。これからこの街を訪れる人に、私が体験したような街の雰囲気を直で味わってほしいからだ。次回から区画ごとの西口五番街の街並みを解説したい。

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