第2話 命と天井

天照は教室で倒れ、今は病院で寝ていた。どうやら、あのあと先生が救急車を呼んだようだ。


天照は少し目をあけて、灰色の病院の天井を見ていた。


その一方、病院の診察室では天照のお母さんが医者の話を聞いていた。母の名前は水田寧子すいでんやすこだ。今のお父さんとは喧嘩したみたいで別居中で、最近お父さんとは見てないが、どうやら離婚したみたいだ。お母さんの旧姓は田代だ。


〈寧子〉先生!あの子、どうなんですか!?大丈夫なんですか!?


〈医者〉お母さん、落ち着いてください。いいですか?ちゃんと聴いててください。あの子の臨床検査結果は、ある病であることがわかりました


〈寧子〉ある病?なんですか?


〈医者〉いいですか?あの子の病は「Palabras sombrías」という病気です。


〈寧子〉は?なんですか?その「Palabras sombrías」って?聴いたことないです。どんな病気ですか?


〈医者〉それはそうでしょう。この病気はこの世界でも珍ししく世界三大難病中の難病でもっとも解明ができてない病気です。元は精神障害の一部と聴きましたが、今はれっきとした外科医がみる病気です。まわりの人の考えていることができる病気です。ただ、聴こえるのは、その人が自分の悪口や殺意があったりすると、瞬間的に頭からその人の考えていること、思っていることが、聴こえるという病気です。正直、私は何十年医者をやってきて、難しい病気やその医療をみたり、関わってきました。ですが、一度もこの病気に一人もあったことはないです。まず、日本では見ない病気です。外国...いやスペインや南米で180年前に発見された病気です。だから当時、スペイン語で「Palabras sombrías」闇の言葉と名付けられたそうです。医療系の名前にはドイツ語が多い。けど、この病気はスペイン語です。180年前は南米で8年に1人か2人かぐらいのレベルだったそうだ。そして、80年前ごろにはその病気はなる人はいなくなった。ポツリと。だから有名な医者でも知る人は少ない。ましてや今の医学生はほぼ知らないだろう。よくわかってない病気です


〈寧子〉ちょっとよくわからないです。すると、どうなるんですか?


〈医者〉いいですか?この病気は今の医学界では治せる人はこの世にいません


〈寧子〉な!なにいってるのですか!?そうだ!80年前!ポツリとなる人がいなくなったら特効薬とかあるでしょ!!


〈医者〉残念ながら、ないです。ここからが一番聴いてほしい話です。落ち着いて聴いてください。これだけはどうにもできません。いいですか?80年前これだけわかったことがあります。この病気の研究していたスイスの女性医学者のドリス・クルシュマンがあるデータに気づいた。それはこの病気で亡くなった人のデータだ。そのデータでは全員が18年以内で亡くなっていることに気づいている。心苦しいかもしれません。あの子は、あの子のいのちは18年以内で.........


医者は悲しい顔で天照の母の寧子にこの病気のあることを告げた。


本当に医者としても、ここまで心が痛くなる瞬間はそうそう滅多にないそうだ。


その言葉を聴いて、お母さんは泣きわめいた。目を真っ赤にして。お母さんもここまで激しくないたのは初めてだろう。


〈寧子〉ど、どうすれば...


〈医者〉お母さん、今は医学界も進歩はしてきてます。もしかしたら近いうちに、特効薬がみつかるかもしれないです。私も協力はします。ここまで可哀想な子は見たことない。お母さん、お子さんには内緒にお願いします。一ヶ月に一回検診も受けなさい!私のところへ来なさい!わかりましたね?それで、できるだけ早く研究して見つけてみます


〈寧子〉わかりました。お願いします!お願いします!


〈医者〉お母さん、もう帰りなさい。そんな悲しい顔では今のお子さんになにか影響があるのかもしれない。できるだけ笑顔で元気に、いつもどおりに接してください。今日は私が責任をもって天照くんをみますので


〈寧子〉そうですね。こんなんじゃ...あの子を不安にしてしまう。今日はお願いします


と、泣きながら帰って行った。


お母さんはまるで、覇気が抜けたかのように帰って行くのが見えた。


〈看護師〉先生...


〈医者〉ああ、分かってる


その一方で天照のいる病室では天照にあるが忍び寄ろとしていた。


天照はぼんやりと灰色の病室の天井を見上げていた。


その時だった。あたりが暗くなり始めた。病室も、外も天井も、黒く、闇の中に消えていく。天照は気づくと真っ暗闇に一人だった。すると、天井から黒い人が現れる。黒いマントに頭には角、そして、尖った目にギラッとさせた鋭い牙。まるで、ドラキュラ、ヴァンパイアを連想させるかのような人が天照の目の前に現れる。天照は呼吸器をしていて、身体も何十トンもある重りような重さで身体は動かない。まるで自分の身体じゃないかのように。唯一、視覚と耳がはっきりとしているだけで、ただ、それをみるしかなかった。


そして、その男は話した。


〈黒い男〉我は、ウンブラ。貴様の影なり。


男はそう言うと、スッと消えて行った。


同時刻。天照が黒い男を見ている時。病室では、お母さんがガラス越しに見ていた。


天照は集中治療室にいるため、医者と看護師以外は入ることが出来ない。


〈寧子〉天照...


そう、悲しんでいるところに最悪な出来事をお母さんは見てしまう。


お母さんがガラス越しに観ていると、急に天照が暴れ出した。闘牛のように、暴れだした。近くのベッドサイドモニタが不自然に動きだす。心電図波形と脈派、心拍数や数値が乱れている。


〈看護師〉え!?VTだわ!心室頻拍症よ!QRS波形が回転してるわ!先生を呼んできて!緊急よ!急いで!


すると、もう一人の看護師は先生を呼びに行った。


すると、すぐさま先生が来た。


〈寧子〉え?ど、どうしたのかしら?


お母さんが不安感を抱く中、迅速な緊急処置が始まる。


天照は激しく痙攣を起こしている。


医者や数人の看護師が処置をするが、治まらない。


〈医者〉くそ!天照!頑張れ!


先ほどの天照の暗闇の中では、この処置と同じ時間にあの男は消えていった。


そして、消えると、天照の痙攣が治まっていく。


〈医者〉っ!なんだ!?この不自然な行動は!?


医者たちが見たのは、痙攣が治まると同時に天照は手を天井に差し伸べていた。


〈医者〉こんなの、みたのことがない!


〈看護師1〉先生!波形が...心拍数が...


〈医者〉なんだ!?どうした!?


〈看護師1〉元の平常値、波形に戻りました...


〈医者〉...あ、なんだ?一体?この子は一体?


今日のところはこの後は静かに天照は何もなく、心電図も変わることもなく、平常値で、まるで、睡眠薬を打たれた大熊のように、静かに天照は寝ていた。


落ち着いたということで、お母さんには安心して帰ってもらうことにした。


天照を処置した医者は万が一に備え、夜も寝ず、他の患者は後にくる看護師と医者に頼み、天照に付きっきりで椅子に座り、看病した。


そこからは一切なにもなく、一日が終わった。先ほどの事が何事も無かったかのように。


あの時、天照が見た男は何者だったのか?見た天照本人もなにも覚えていない。だが、少しだけかすかに、「」が天照の心の処かで、かすかに覚えていた。だが、はっきりとは思いだせなかった。


ー 2話 命と天井 ー おわり

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