2020ミッションの夏

宝希☆/無空★むあき☆なお/みさと★なり

エンスト王

2020年夏、私はミッションの車で、レースをする権利を獲得すべく、特訓をしていた。

エンストをおこさない為に、ニュートラルにギアを入れて無い時は、ペダルを甘く踏み続ける。アクセルも甘く踏みながら慎重にエンストしない為に。

幸い私が使える車は、中古でおんぼろのミッションだ。これは持病の為に、入院した叔父から譲り受けたモノだ。私は『危ない』からという事で、母の同乗ツキの母のオートマチックでインフラされた『お山』に祖母を見舞うために急な坂を往復二時間は乗った。オートマチックはミッションと違い『エンスト』しない構造な為に、難しいミッションを乗りこなしたいという欲望が強くあった。だから、勤め先の都市から、一時間以上片道で電車で通おうが、他人より十万円自腹でオーバーしてでもミッションの免許をとったモノだ。だから、田舎のツレの家に遊びに行く時は、率先してミッションの車を運転した。ただ後で知った事なのだが、その国道はレイプ目的の2台の車の庭だったらしい。くわばらくわばら。私は最高に恵まれていたから、田舎の道でも犯罪の被害者にはならなかったが、今は『知ってしまった』ので、その道を走るのを止めた。そうして、ベットタウンの実家のインフラされた道をぐるぐる回っている。特に子供の飛び出しや老人の逆送に気をつけながら、私はミッションを運転していた。

赤信号の時は、ニュートラルにするか甘踏みしてサイドブレーキをあげるのだが、それは青信号になった時にスムーズに発進させるためだ。教習所では何度もエンストをおこして教官のお小言に耐えた。今のところは免許証の色はゴールドだ。

それが誇りでありプレッシャーでもあった。アイススケートで『転ばない』様に滑ってる内はビビりながら滑ってるのだが、一度転んでしまうと、変な度胸がわくアレと似ている。とは言え、その恐怖の為だけに、事故を起こすきなんかさらさらなく、私は頑張って安全運転を保持していた。そんなミッションの好き者私に、そのレースへの招待通知がきた。2020年夏に行われるというレースで、ミッション愛好家の集いらしい。多分、噂好きな母と教習所の教官の話題にあがってたから、このお誘いは来たのだと想う。親バカだなぁ。ウチの親はと思ってみたモノの、ミッションの腕を競い合えるというお申し出に、私もその気になってしまった。

オリンピックは延期になったけど、このカーレースは行う事になったらしい。だからサーキットの急カーブをハンドルでこなす練習をする為に、何度もお山への道を運転して腕を磨いた。その時もエンストの恐怖があったが、後列車も前列車も無いモノだから無心に練習ができた。そうして練習を続ける私に2020年夏のサーキットレースは訪れずれ様と、日々迫っていた。頑張れ私!☆/。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る