チキンな僕の恋心
MASAMUNE
第1話 僕たちの卒業旅行
卒業式を終えた高校三年と大学入学までの間。
そう、高校生でもあり、大学生でもあるこの期間。
授業もなく、かと言って受験勉強から解放されて勉強もしたくない。
高校三年間を部活につぎ込み、受験に魂を削られた。
結果から言えば第一志望の大学に合格はできた。
しかし、思い出したくはない陰鬱とした受験の期間だったと思う。
だが、そんなものは終わってしまえば何ということはない。
俺は今、東京から京都に来ている。
長い前振りを申し訳なく思うが、簡単に言えば僕、鳴海隼人は高校の同級生である神楽坂祐介、早坂啓、荒川誠二の三名と卒業旅行にきているのだ。
卒業旅行の経緯は求められていないだろうから、ここも簡潔に済ませようと思う。
男だけで、新幹線を使って四時間移動して京都だ。
女もいないので男子だけの気楽な独特のノリですごせるのがとても楽だ。
壮大な寺社仏閣、歴史ありそうな建物、着物を着た観光客。
最後の人達は眼鏡が似合って胸の方が苦しそうだ。ちょっと俺が揉んで癒してあげたい。今すぐに!
だが僕はすぐに理性を取り戻す。よかったね、お嬢さん。僕が紳士で。感謝しているならできれば第二ラウンドにホテルまでしゃれこみたい。
なんなら第三、第四ラウンドまで行きたい。
「気色の悪いこと思ってるな」
祐介は心底軽蔑したような表情を作る。しかし、そんな目には慣れている!なれるって怖いね。
京都は町全体が観光地のようなもので、観光地が閉まれば町も閉まり、人が鎮まってしまう。
昼の活発さとは打って変わって夜は静かだ。
その静寂さは、変態協会(今作った)会長たる僕からすればそこはかとない町全体がエロスだ。昼と夜で見せる顔色が大きく変わる。ちょっと興奮してきたね。
僕はホテルに着いてその完璧で精巧な万人受けするようなその旨を変態教会会員No.1の彼に話す。
会員No.1たる祐介はただ一言、
「死ね」
と返してきた。僕は会話のキャッチボールをしたいのに、ルールはドッジボールだったようだ。シンプルな“死ね“は心をえぐる。
ちなみに、啓は無視をしやがった。キャッチボールどころかドッジボールすらしてくれない。
唯一同感してくれたのは誠二だけだった。
でも、よくよく考えて男に求めるより女の人に求めたかった。ちょっと虚しくなってきた。
100%自業自得とはいえ、ちょっと泣きたい。
「とはいえ………」
僕はホテルの窓を眺める。
ホテルの場所は祇園の近く、オフィス街の外れ。
立地的に悪くない。むしろ、良すぎるといっても過言ではないはずだ。
しかし、夜の九時だというのにほとんどの店が閉まっている。開いているのはいくつかの飲食店とコンビニ程度だ。
「暇だな」
僕は思いもよらずに呟く。
「我慢しろ。そこの万年発情期。規則正しく生きてるとしたら、これが正解だろうが」
そういつも通りの厳しい口調で言いながら祐介はテーブルにトランプを配っている。
「規則正しい生活って、祐介。これから俺らとわざわざ京都まで来たのに徹夜でゲームしようって言い出したお前にだけは、僕は言われたくないな」
そう。僕らはこれから徹夜でゲームを神楽坂の発案でゲームをすることになった。
ちなみに、残りの二人は急遽コンビニまでお菓子やジュースなど、夜更かしパーティーセットの買い出しに行っている。
誰か女でもふっかけるのかと思ったが、あの二人の顔では無理だ。
ちなみに、祐介以外全員彼女がいない。
啓に関しては彼女がいたが、卒業を機に別れたので僕らの非リア組に所属する。
しかし、僕と誠二は彼女いない歴=年齢だ。
彼女がいた奴らは全員敵だった。
この旅行のいつかで僕らはこの二人を仕留めよう。
それにしても……。繰り返しになるが、女をキャッチするのはあの二人では無理だろう。
きっと、
無理やり手篭めにする。
薬を使う。
酒を使う。
弱みを握る。の四つだと思う。
僕はそれを信じたい。いや、そうであってくれ!
話を戻して、僕らは各自で暇にならないために携帯ゲーム機を用意していたので、百均でトランプを買えば夜なべの準備は完成した。
つくづく、京都に何しに来たんだろう。
三人寄れば文殊の知恵。とはいうけれど、馬鹿が四人集まっても結局はより高度に濃縮されたバカだった。
だが、僕はそんなバカの一人と諦めて席に着いた。
「それじゃあ、いつもので」
神楽坂はそう言って僕らはポーカーを始める。
「何か賭けるものが欲しいな」
唐突に祐介は言う。
確かに、男四人でポーカーというのはどうにも味気ない。というよりは、あまりにも退屈なのは間違いはないだろう。
「そうだな。何を賭ける?」
僕はおもむろに尋ねる。
僕は、誰かに後悔する時があるかと聞かれたら迷うことなくこの時を選ぶだろう、きっと。
それほどまでに、僕の予想を大きく裏切るものだった。
「そうかそうか。そうこないとな」
ニヤニヤと祐介はポケットからスマホを取り出して何かをしたかと思えば、
「そしたら、この人について、俺が勝ったら教えてほしいんだけどな」
スマホの画面を見せながら祐介はニヤニヤした気色の悪いを続けている。
しかし、問題はそこではない。
画面に映っている人。いや、正確にいえば少女を知っていた。正確に言えば、僕はその少女を知らないわけがなかった。
「お前、僕のスマホから勝手に画像を取りやがったな」
恨めしそうな目で僕はこいつを睨んだ。
しかし、こいつは意にも介さないようにこう言った。
「おいおい、賭けから逃げるのか?」
挑発するように笑っている。
僕らの間で一度乗った賭けから逃げる際には持ち金を半分を置いていくというルールがある。
この先の旅のことを考えると・・・。
つまり、僕に与えられた選択肢は一つしかなかった。
嘆息と共に、僕はドカッと深く椅子に座る。
京都の一日目の朝は、まだ長くなりそうだった。
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