甘えん坊幼馴染と過ごすイチャイチャ大学生活

久野真一

プロローグ 二人のはじまり

第0話 桜咲く入学式

「ね、リュウ君。桜が綺麗だよー」


 幼馴染のミユが、聞き慣れたあだ名で話しかけてくる。


 桜が満開な、4月初旬のある日。

 俺たちは、大学付近に借りたアパートから二人で歩いていた。

 なにせ、今日は、俺達が通う筑派大学つくはだいがくの入学式だ。

 

 筑派大学は、東京は秋葉原から電車で45分、バスで15分の所にある国立大学だ。

 ちなみに、筑派大学のあるつくなみ市は研究学園都市などと呼ばれることもある。

 実際、多くの研究施設が存在しているが、はっきり言って田舎だ。

 

 俺、高遠竜二たかとおりゅうじは、計算機学部けいさんきがくぶの新1年生。

 成績はそこそこ、身長に体格、容姿は平凡。

 趣味はアニメと漫画、ゲームにライトノベル、そして、プログラミングといったところ。

 いわゆるオープンオタクという奴だ。


 隣のミユこと朝倉美優あさくらみゆうも同じく、計算機学部の1年生。

 成績は抜群、運動も抜群。少し小柄な体型にセミロングでふわふわな髪。

 大きくぱっちりとした瞳。スレンダーな割に出るとこは出ている体型。

 とても可愛い。


 計算機学部というのは、コンピュータの事について学ぶ学部だ。

 プログラミングに留まらず、計算機の仕組みや理論などについて教わるのだ。


「桜はともかく、ミユのスーツ姿は似合わないな」


 そんな軽口を叩く。ミユがスーツを着た姿を見るのはこれが初めてだ。

 正直、ちっちゃい子どもが大人びたスーツを着たような印象すらある。 


「それって、子どもぽいって遠回しに言ってる?」


 むくれるミユだが、声はどこか楽しそうだ。


「そうだな。スーツに着られてるって感じだな」

「私だって、似合わないのわかってるよ」

「冗談だって。似合ってる、似合ってる」


 優しく言って、ミユの頭を撫でる。


「ちょ、ちょっと。人が見てるよ」

「おっと、悪い」


 つい癖で撫でてしまった。


 次の瞬間、ひゅーと風が巻き起こった。

 咲いていた桜の花が風に飛ばされて、こちらまで飛んでくる。


「わぷ。桜吹雪……!」


 あまりにも入学式にぴったりな光景。

 桜の花が祝福してくれているようだ、なんて。

 ポエミーな言葉が一瞬頭をよぎる。


「私達を祝福してくれてるみたいだね」

「ポエミーな事言ってるな」

「もう、茶化さないでよ」


 当の俺がまさにポエミーな事を考えていた事は黙っておく。


「でも、同じ学部の男の子とうまくやってけるかな」


 不安そうな声。

 今のこいつは、俺と数少ない例外を除いて、同年代の男子とうまく接することができない。

 それもこれも、高校の頃にあったのせいだ。

 今思い出しても腹が立つ。


「ま、俺が見ててやるからさ。少しずつ、なんとかしてこうぜ」


 でも、トラウマを抱えつつも、頑張ってきたこいつを俺はいつも見ている。

 だから、心からの言葉でそう励ます。


「……うん!」


 力強く、うなずいたミユと共に、俺たちは大講堂に入ったのだった。


 これが始まり。

 俺と彼女と、俺たちを取り巻く仲間との胸躍る大学生活の。

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