第99話 IoT (Internet of Things)とネット通販

 最近、やたらIoTという言葉を見かけることが増えた。

 色々なものがインターネットにつながれている事を指す言葉らしい。

 たとえば、代表的なところはWi-Fi体重計だろう。

 体重計に乗るとWi-Fiを通じて、自動的にクラウドに体重がアップロードされる。

 そんな今日この頃、我が家ももっとIoT的なもので便利にしようと相成った。


「この、温度が変わると自動でエアコン付けたり消してくれるのよくないか?」


 Amazunの商品一覧を見ながら、聞いてみる。


「いいかも。まだ秋だけど、冬だと寒くなったら自動で部屋が暖かくなるといいな」


「だろ。じゃあ、これはとりあえず「欲しいもの」に入れて、と」


 いきなり欲しいものを買いまくっていたら、お金がいくらあっても足らない。


「ところで、このSelectBots?家のエアコン対応してるのかな?」


「説明見る限り、よっぽど古くなければ大丈夫なんだと。あと、部屋のライトも、時間が来たら自動で消灯したり点灯したりもできるらしい。そのほかにも、リモコンを使う家電を色々登録できるんだと」


「ライト消し忘れることあるよね。すっごく便利そう!近未来的だし、買おうよー」


「値段は4000円だし、まあいいか。よし、買おう」


 ポチッとなとして、注文を確定させる。明後日には届くらしい。

 Amazun様々だ。


「あ、そうそう。このWi-Fi体重計も良くない?乗るだけで、クラウドにアップされるらしいよ」


「ミユはそんなダイエット気にしなくてもいいと思うんだけどな……」


「ちょっとの油断が命取りなんだよ。気がついたら、1kg、2kg、3kgって増えてるものなんだよ!グラフがあれば事前に気づけるし」


「実体験か?」


「デリカシーが足りない!」


 怒られてしまった。


「まあいいか。値段は……1万円か。バイト代入ったし、まだ余裕があるし。これも買うか」


 同じくポチっとな、をして確定を押す。同じく、明後日に届くらしい。


「それにしても、最近はほんと色々便利だよな。自動でエアコンがつくとか、子どもの頃SFでそんなの見た覚えがあるぞ」


「そうだよね。なんだか、最近、世の中がどんどんSFになってる気がするよ。囲碁とか人口知能が人間は負かしたって話がどんどん増えてるし」


「そういうの聞くと、人工知能が人間を超えるってのもあながち眉唾じゃないのかもな」


 しかし……。


「Amazun見てると、どんどん物欲湧いてくるな。この電子メモパッドとか欲しくないか?毎回紙に書くの勿体ないしさ」


「あー、わかる。忘れそうな事、スマホに書くよりも手書きで書いた方が早いことあるよね。確かに欲しいけど……値段は?」


「なんだかわからんけど、安いのは2000円くらいから。高いのは1万円以上するのもあるらしい。消去回数とか、スマホ連携とか色々違うらしい」


「うーん。欲しい、けど、こんな風にしてどんどん買っていくと、あっという間にこないだのバイト代がなくなっちゃうよ?」


 心配そうなミユの声。


「た、たしかに。ついつい買ってしまうけど、入ったバイト代5万円だし、家賃増えた分考えると、あんまり贅沢はできないよな。とりあえず、これにしとくか。Amazun見てると、色々買いたくなってしまうの危ないよな」


「うんうん。Amazun怖いよね。あ。さっきのは後で折半しようね?」


「いやいや、そこは俺が出すって」


「Wi-Fi体重計は私が言い出したことでしょ?」


「それはそうだが……」


「リュウ君の気持ちはわかるけど。将来は結婚するんだから、こういうのはきっちりしよ?」


「わかった。そうだな」


 男の見栄として、彼女、いや、婚約者に色々プレゼントしてあげたくなるというのはあるけど、ずっとそんなことをしてても続かないだろう。


 一通り話し終えて、外を見ると、綺麗な満月だった。


「月が綺麗だな」


 なんとなく言ったのだが。


「なに、急に?ちょっと照れちゃうよ」


 なんだか、ミユが照れている。


「なんで照れるんだよ。月が綺麗だって言っただけだろ」


「だって。そういうのって、I love youの言い換えなんでしょ?」


「はあ?初耳だぞ。それ。どこ出典だよ」


「なんだ。本当に月が綺麗って意味だったんだ……」


 少しがっかりと言った様子のミユ。


「いや、いきなりがっかりされても困るけど。で、なになに……」


 確かに、夏目漱石がそのような事を言ったという逸話が紹介されているが。


「にしてもさ、俺がそんな風流なこと言うわけ無いだろ」


「リュウ君がそういうのに目覚めたのかもって思ったの!」


「とにかく。そんな回りくどいこと言わずに、俺はストレートに言うって」


「じゃあ、言ってみて?」


 ミユは少し悪戯めいた笑みで俺を見つめてくる。


「え、えっと……」


 好きなのは本当だが、こんなシチュエーションで言わされるのは照れくさい。


「むー。そこははっきり言って欲しいな?」


 ミユからのおねだり。そういうのはずるい。


「その、ミユのこと大好きだぞ。これからも側に居させてくれ」


 羞恥に耐えながら、愛の言葉をささやく。で、ミユの反応は如何に。


「……う」


 なんだか黙ったままだ。


「どうしたんだ?言ってほしかったんだろ?」


「だって、急に言われて、凄くドキっとしたんだもん」


 顔を赤らめてそんなことを言われてしまう。


「ミユが言えっていったんだろ」


 少し笑いそうになってしまう。


「だって、そんな真面目な顔で言われるって思わなかったもの」


 なんともいじらしいことだと思う。


「ミユも言ってくれないか?聞きたい。俺だけが言うの、不公平だろ?」


「不公平って。そんなこと急に言うの恥ずかしいよ」


「恥ずかしい事言わせたのはお前だろ。いいから、言ってみろって」


「うー。あのね、リュウ君のこと大好き。ずっと、ずっと側に居たい!」


 そんな事を顔を赤くして叫ぶミユ。

 その言葉に、俺も顔や身体がかあっとなるのを感じる。


「た、たしかに、これはドキっと来るな。急に言われると、流れでいうのとは違うというか」


「でしょ?こういうのは、もっとちゃんとした場面でいうことにしよう?」


「そうだな。そうするか。でも、海外だと「愛してる」っていっつも言うらしいけど、ちょっと信じられないよな」


「うん。そんな事言われたら、私、すっごく恥ずかしくて、死んじゃいそう」


 そんな、しょうもない言い合いをした秋の夜長だった。

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