第95話 俺の婚約者が巫女装束を着てくれた件
※R15的要素があります。ご注意。
「うーん……」
我が家のリビングで、行ったり来たりを繰り返す俺。
誰かが見ていたら挙動不審だと言うだろう。
でも、それは仕方ないんだ。
好きな娘が巫女装束を着てくれるというのだから!
巫女装束。こんな家の中で着るには不釣り合いな服だ。
清楚さを醸し出しながら、フェティシズムを刺激する衣装。
そんな服をミユが着ているのには訳がある。
事の発端は、バグ慰霊祭の準備だ。
先立って巫女装束を用意しようと、
そして、
「あのね。リュウ君は、その、私が巫女服着てくれたら嬉しい?」
「めっちゃくちゃ嬉しい!」
「うう。リュウ君、やっぱり巫女服フェチだったんだね」
「いや、そうじゃない。ミユが着るからいいんだって」
本音だ。仮に
「わかった。じゃ、着替えてくるから。覗かないでね?」
なんとも可愛らしい一言を残していった婚約者様。
今更覗くなんて無粋なことを……と思う。
「その。覗かないでね?」
寝室に去っていったかと思うと、また顔を出して一言。
ひょっとして、これはフリなのだろうか。
「覗いていいのか?」
「だ、駄目に決まってるよ」
あわあわして言って、扉を締めるミユ。
だったら紛らわしい事を言わないで欲しい。
「あ、でも!」
また扉が開く。
「どうしても覗きたいなら、少しは、いいけど」
ちらっと俺の方を見てつぶやく。
「え」
そう言うが否や、またしても扉を締めてしまう。
どう考えればいいのだろうか。
こんな微妙な誘い方をしてきた事はこれまでなかった。
だから、少し混乱してしまう。
覗いてオッケーのサインであることは間違いない。
でも、こんな誘い方をされたことは初めてで。
不覚にも、胸のドキドキが止まらない。
しかし、合意ありとはいえ、覗きとは変態じゃないか?
ミユは俺に何をさせたいのか。
悶々と考えた末、意を決して寝室の扉をガラっと開ける。
どうせなら堂々と。
隙間から覗くとかやっぱり変態チックだし。
いや、この時点で既に変態なのか?
自分が何をしているのかがわからなくなる。
「ど、どうかな?」
着替えた後なら、普通の言葉だろう。
だが今は、
「可愛い……それとエロい」
「エロいって……」
「わかってやってるだろ。着替え途中に覗いていいとか」
これで天然だったら、ちょっとミユの頭を疑わなければいけない。
というより、はっきり言って。
「あのさ、ミユ。誘ってるのか?」
もう、そうとしか思えない。
着替え途中の衣装をわざわざ俺に見せつけて。
俺自身、こんな態度のミユを襲いたくなってしまっている。
「さ、誘っていない」
「嘘つけ。誘ってるだろ」
「誘っていないって」
そういうが、別に肌を隠そうともしていない。
とたとたと近づいて、壁際に追い詰める。
壁ドン……といえないこともない。
「あ……う……」
そして、ミユはというと、顔から湯気が出そうな程赤い。
「このまま襲って良いんだな?」
「……ああ、壁ドンってこんな気分になるんだ……」
うっとりという表情のミユ。何故そこで壁ドン?
「やっぱり、誘ってたんじゃないか」
「だって、誘ってるとか自分から言うの恥ずかしいもん」
誘ってる時点で恥ずかしいだろ。どこに羞恥の境界線があるのか。
にしても、可愛いし、このまま襲いたくなるけど。
そのまま、黙って、唇を奪う。
「ん。はぁ……」
どんどん気分が高まっていく。着替え途中の衣も微妙に扇情的だ。
そのまま、少し乱暴に巫女衣装を脱がして行き-
◇◆◇◆
「なんか、いつもと違う感じで燃えちゃった♪」
ベッドの上で妙に嬉しそうにするミユ。
「俺も色々良かったけどさ。結局、何がしたかったんだ?」
「せっかくだから、コスプレしてエッチしてみたいなって」
なるほど。全然わからん。
「なら、そう言えばいいだろ」
俺だって、そういう気持ちはあったし。
「だって、それだったら変態みたいだよ!?」
「さっきのお前の方がよっぽど変態だよ。何だよ、覗いていいとか」
「だ、だって、そうしたら強引に襲ってくれるかなーって」
頭が痛い。
「強引にして欲しかったのか?」
「たまには……」
目をそらして俯きながら告白する婚約者様。なんとも厄介なことで。
「じゃ、これからは強引にした方がいいのか?」
「そこは察してよう」
「何を察しろと」
「好きな人にだったら、少し強引にされたいこともあるの!」
「そ、そうか。優しくしてたつもりだったけど」
そういうこともあるとはややこしい。
「あ、別に普段のが嫌じゃなくて。たまに、たまに、強引にして欲しいかなって」
「あ、ああ。わかった。そうする。しかし……」
「?」
「いや、この調子だったらだんだんマニアックになっていかないか?」
「そ、そこは大丈夫……だと思う」
自信がなさげなのがそこはかとなく不安だ。
「ま、まあ。可愛いからいいけど」
でも、アブノーマルなことを要求されたら考えないといけないな。
そんなことを思ったのだった。性癖の問題は難しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます