第21話 幼馴染と遊園地デートに行く件について
5月25日の土曜日。今日は、かねてから約束していたミユとのデートだ。さすがに、つくなみ市にめぼしい遊園地はないので、都内某所の遊園地だ。調べた情報によると、日本最古の遊園地らしい。
ミユと彼女になってからの初デートだ。髪をセットして、服もクリーニングに出してと、いつもより少し気合いを入れている。ミユの奴はどんな服装で来るだろうか。そんなことを考えていると、インターフォンが鳴った。
「リュウ君、おはよー!」
扉を開けるなり、俺の胸に飛び込んでくるミユ。付き合ってからのミユは以前より積極的に甘えてくるようになって、俺が言うのもなんだけど、女性として一段と魅力的になったように思う。って。
「今日は髪型違うのな」
「えへへー。初デートだから、気分変えてみようと思って。どう?」
にぱー、と笑顔で言うミユ。確か、ツーサイドアップだったか。両肩に垂れている髪がいつもと違っていて新鮮だ。
「似合ってるぞ。やっぱ、ミユは可愛いな」
言いながら、肩に垂れている髪に軽く触れる。
「あ、そこはあんまりいじっちゃ駄目だよ」
「そ、そうか」
「もちろん、撫でられるのは好きだよ。今日はせっかくセットしたから……」
少し恥らいながら言うミユ。パンツルックで動きやすそうな格好だけど、しゅっと引き締まった感じがする。髪型も含めて、少し大人っぽく見える気がする。
「よし、じゃあ行くか」
というわけで、TEXで浅草駅まで行くことに。浅草駅まではつくなみ駅から40分程で、電車一本で行けるのが楽だ。
「わわ。凄い人」
「観光地だから、混んでるだろうとは思ったが」
浅草駅から地上に出ると、周辺は人、人、人。ちょっと目を離すとはぐれてしまいそうだ。ミユの手を握って、はぐれないようにする。
その遊園地は浅草の市街地にあって、街の中に入り口がある、という少し不思議な光景だった。
「さて、どこに行く?」
遊園地のパンフを見ながら相談する。
「ローラーコースター行ってみたい!」
「ちょっと苦手だが……まあいいか」
最高時速は40km/hと、ゆっくりめらしいし、大型遊園地の絶叫系と違って、これなら大丈夫そうだ。ちなみに、築60年以上だとか。
既にかなりの人が並んでいて、今からだと30分待ちらしい。
「ちょっとレトロ?な雰囲気がしていいよね」
「レトロなのかわからないが、味はあるな」
雑談しながら時間をつぶす。
そして、いよいよ俺達の番だ。さて、どんなものやら。
「意外に肝が冷えたな」
「えー、面白くない?だって、すぐそばに建物があるんだよ?」
ローラーコースターは速度こそゆっくりなものの、すぐ横に建物がある場所があって、ぶつかるんじゃないかと少しヒヤヒヤした。まあ、ミユが楽しめたならいいか。
続いては、お化け屋敷。遊園地では定番だが、さすがに最古の遊園地だけあって、その和風の佇まいは神秘的ですらある。まあ、俺もミユもお化け屋敷で怖がるという柄ではないが、名物らしいので行っておくのも悪くない。
中は薄暗く、まるで廃墟のようだ。お化け屋敷と馬鹿にしていたが、なかなか雰囲気がある。
「なんか、廃墟って感じだよね」
「俺も同じこと思った」
二人で笑い合う。さすがに、俺もミユも怖がるということはなかったが、また行ってみたいと思わせられる、不思議な雰囲気があった。
その後も、メリーゴーランド(俺は恥ずかしかったのだが、ミユが乗りたいと主張)、フリーフォール、などなど色々なアトラクションを回る。気がつけば、もう時間は17時前というところだ。
「次で最後ってところか。どうする?」
「あの、ちびっこ観覧車っていうの行きたい!」
「え。あれはちょっと……」
名前の通り、小さい子向け観覧車で、どう考えてもいい歳をした大学生が乗るものではない。
「せっかくだし、行こうよ、ね?」
そんなことを言われる。
(まあいいか)
で、観覧車にて。
「ふふ。懐かしいね」
「俺は恥ずかしいが。小学校の頃を思い出すな」
俺とミユの家族で一緒に遊園地に行ったときのことを思い出す。といってもー
「観覧車は退屈だったなあ」
「リュウ君、早く終わらないかなーって顔してたよね」
クスクスと笑いながら、俺を見つめるミユ。確か、俺とミユ、うちの母親の3人で乗った気がする。が、当時の俺は、景色を眺める楽しさというのがよくわからなかったもので、早く終わらないかなーなどと思っていた。
そんなことを語り合っているうちに、観覧車はあっという間に終了。
揃って遊園地を出たのだが、時刻はまだ18:00前。
「お腹、減ってないか?」
「ちょっと減ったかも」
「浅草に来たんだし、もんじゃでもどうだ」
「リュウ君、もんじゃやったことあったっけ?」
「いや。でも、せっかくだしな」
「賛成ー!」
というわけで、入れそうなもんじゃ焼き店に入店。プレーンなもんじゃ、チーズもんじゃ、明太子もんじゃなど、色々種類があって迷う。結局、俺はチーズもんじゃ、ミユは海鮮もんじゃを注文。
もんじゃの作り方をよくわかっていなかったのだが、幸い、店員さんが鉄板の上で手際よく調理してくれたので助かった。
「なんだか不思議な味。おいしいんだけど……」
「同感。なんていったらいいんだろうな」
もんじゃ初体験の俺達は、ソースとドロドロと具が入りまじった不思議なこの料理を堪能したのだった。
もんじゃを食べ終えて店を出たのが20:00。そろそろいい時間だが、今日は少し考えていたことがあった。
「あ、あのさ、ミユ。ちょっと行きたいところがあるんだけどさ」
話を切り出すのは少し緊張する。こういうホテルに誘うのは初めてだし、こいつがどう思うか。
「ん?お茶でもする?」
ミユの無邪気な返事。ええい、ままよ。
「これから、ホテルでもどうだ?今から帰っても遅いし……」
遅いから何なのか自分で言っててわからなくなる。
「それって、エッチなことをするホテル、だよね?」
さっきの無邪気な雰囲気から一点、肩を寄せながら、耳まで赤くしてそんなことを尋ねてくる。
「あ、ああ。駄目か?」
「ううん。駄目じゃない」
ぽーっとしながらも、嬉しそうな顔のミユ。
「良かったよ」
「リュウ君も同じこと考えてたんだね」
「てことは、ミユも」
「うん。せっかくだから、行ってみたいなって……」
ミユに押されぱなしだったから、俺からと思ったのだが、同じことを考えていたとは。
というわけで、歩いて10分くらいのところにあるホテルに到着。緑色のネオンの明かりを見て、これからそういうことをするんだな、ということを意識させられる。
時間も時間だし、お泊りの部屋を選ぶ。
「なんだか恥ずかしいね」
「ああ」
ソファに座りながら、そんな会話を交わす。ここのところ、押せ押せだったミユがホテルに入った途端、急に恥ずかしがり出したのは意外だったが、そんな風に恥じらってくれるのも可愛くて、押し倒したいという気持ちが湧いてくる。
「先、シャワー浴びるね」
「ああ」
というわけで、交互にシャワーを浴びた俺達は、バスローブ一枚でベッドに隣り合って座る。相変わらず、ミユは手をもじもじとしたりして、恥ずかしそうだ。
「こういう場所だと、凄く恥ずかしい」
ミユがぽつりと言う。いつもと立場が少し逆になったが、それがまた、ぐっとくるというかなんというか。
肩を抱き寄せて、唇を奪う。そのまま、舌も絡め合う。
「今日のリュウ君、積極的だよね」
「いつもミユに押されっぱなしなのも情けないし」
「気にしてたんだね。別にいいのに」
そんなことをいいながら、ベッドに横たわるミユ。そのまま上から覆いかぶさって、再び口付ける。
ーー
「凄く、気持ちよかった」
幸せそうな顔のミユ。
「そりゃよかった」
少し疲れたが、充実した一時だった。こないだは、すぐに達してしまったしな……。
「なんか、エッチにハマっちゃいそう」
「ま、まあ。俺も、ミユさえ良ければ」
がっついて嫌われたくはないが。
「私は毎日だって大丈夫って言ったでしょ?」
「そんなことも言ってたなあ」
俺は、あと2日くらいは経たないとできそうにないが。
そんなことを話している内に、眠気が襲ってくる。
「ちょっと眠くなってきた」
「私も。このまま、寝ようか…」
手をぎゅっと握られる。
「今日、楽しかったね」
「ああ」
「また、行こうね」
「ああ。ミユさえ良ければいくらでも」
「なんか、毎日でもこうしてたいな」
そんなことを言われるのは、男冥利に尽きる。
ぽつぽつと会話をしていると、すやすやと寝息が聞こえてきた。髪をかきあげると、幸せそうな顔が薄暗い照明の中に照らされる。
「おやすみ」
それだけ言って、俺も眠りに落ちたのだった。
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