第6話 幼馴染が休日もべったりな件について

 4月21日土曜日。今日は大学は休みだ。

 で、朝から新作のRPGをプレイしているのだが。


「リュウ君、そのボスの弱点、たぶん火だよ。主人公の火炎魔法でいけると思う」


 やっぱり俺の膝を枕にしながら、そんなことをのたまう。


「ミユ、このゲームやったことあったっけ?」


「ボスがあからさまに氷属性ぽいもん。それに、氷属性で回復してたし」


「あー、そういうことか。言われてみれば」


 膝の上で寝っ転がりながら、そこまで観察しているとは。


 主人公の火炎魔法で攻撃してみると、大ダメージが出た。


「おー。当たったな」


「でしょ?」


 弱点属性はわかったものの、ここからが難しい。


「どうやってブレイクさせるかな……」


 このRPGでは、敵を弱点属性で続けて攻撃することで、ブレイク状態にできる。

 ブレイク状態はノーガードでダメージを叩きこめるので、狙いたい。


「ちょっと貸して」


「お、おい」


 コントローラーを奪い取ると、使用スキルをあっという間に選び出す。


「おお。マジでブレイクしてやがる」


 あっという間にブレイク状態だ。


「はい」


 コントローラーを返される。あとは自分でやれということか。


「よっと」


 ミユの操作を思い出して、ブレイクを続けるコマンドを叩きこむ。

 そして、ブレイクからボスが回復したら、ブレイクさせるのを繰り返す。

 そんなことを4度くらい繰り返すと、ボスがざざーっと消えていく。


「よしっ。勝ったー!」

「イェーイ!」


 ミユとハイタッチをする。こう見えてミユは意外とノリがいい。

 ボスを倒してストーリーが進んだので、セーブしていったん中断だ。


「あー、そろそろ昼だな。メシどうすっかな」


 腹がぐぎゅるーと鳴ってきた。


「私が作るよ」


「今日くらい、どっか食いに行こうぜ」


 いつも作ってもらってばっかりだと情けない。


「向かいのクラリスに行ってみないか?」


 クラリスは、アパートから道路を挟んで向かいの建物の2階にある。

 グリルチキンを売りとした定食屋らしい。


「うーん。たまにはいいかな」


 財布とスマホだけを持って、家を出る。

 道路の向かいだから、徒歩1分。

 これだけ近くにあるのはありがたい。


「2名様でしょうか?」


 テーブル席に案内される。


「グリルチキンセットがお勧めなんだってさ」


 川口さんから聞いた話だ。


「じゃあ、私もそれで」


 あっさりメニューが決まる。

 しばらく待つと、熱々で油が飛び散りそうなグリルチキンが。

 油と鶏肉のいい香りがするな。


「「いただきまーす」」


 空腹だったので、早速フォークで取り分けて口に運ぶ。


「ウマっ!これ、なんでこんな美味いんだ?」

「使ってる油が違うのかな。ソースも……」


 あっという間にグリルチキンセットを平らげる。

 その後、食後のデザートのパンナコッタが運ばれて来た。

 これもまた美味しそうだ。


 ふと、視線を感じる。どうやら、俺のパンナコッタが気になってるらしい。


「俺のもいるか?そんなに好きじゃないし」


「うん。ありがと!」


 そんなに嬉しそうな表情をされると、譲って良かったなと思う。


 満足してクラリスを後にした俺たち。

 午後は読書タイム。

 積読になっている電子書籍に手を付ける。


 黙々とお互いの読みたい本を読みふける。

 俺の読んでいるのは異能バトルもののライトノベルの最新刊だ。

 前巻で思わせぶりなヒキだったので気になって居たのだった。

 黙々と本を読むこと2時間余り。

 読み終えて満足していると、静かな寝息が聞こえて来た。


 すぅ、すう、と。


 あどけない寝顔をさらして、俺の膝でミユが眠りこけている。

 髪を撫でてやると、気持ち良いようで「へへへ」と笑顔になる。


 少し童顔なところ、ふわふわな地毛、出るところも出ている。

 やっぱり可愛いなと素直に思える。

 服装もガーリッシュな感じで、美人というより可愛がこいつには似合う。


 ふと、唇にキスができそうなくらい距離が近いことに気がつく。

 このまま唇を近づければ……と思って、我に返る。

 危うく、取返しがつかないことをしてしまうところだった。


 ミユは幼馴染、ミユは幼馴染……と念仏のように頭の中で唱えてみる。

 でも、、幼馴染は理由になっていない。

 ミユは妹……と頭の中で唱えて、煩悩が収まるのを待ったのだった。


 こうしてミユに女を感じることが時折あって、ひどく困る。

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