第4話 俺と和樹の過去
追いかけてきた明日香に、昔俺と和樹の間に何があったか教えることにした。どちらにしても大樹と付き合うのならば知っておいた方が良いのかもしれない。
「俺は幼稚園の時から和樹とは仲が良かったんだ。お母さん同士も仲が良くてな。いつも二人で遊んでた。もちろん、他にも友達はいたぞ」
話始めると明日香は隣にゆっくりと座った。間は30センチくらい空いている。付き合っているわけではないので妥当な距離だろう。
「いつも一緒だった。お互いの家にお泊りし合いっこもしたな」
話している俺でも懐かしい記憶だ。
「本当に俺たちは仲が良かった。でも、それは小学生の時までだった。それは小学5年生のとおきだ。なんとなくは予想できるだろう。俺に好きな人が出来たときからだった」
明日香は俺の話に口を挟むことなく真剣に聞いてくれている。
「小学5年生。このころから男子女子ともに好きな人が出来始める年頃だ。俺もそうだった。和樹は違うかったが、あいつはもちろんモテていた。女子の憧れみたいな存在だった」
バレンタインデーなんか列が出来たくらいだったぞ。大樹、バレンタインデーのときは大きな袋持ってきてたし。
「男子はもちろん嫉妬してたな。まぁ、俺の親友すごいだろとかいう自慢したい気持ちでいっぱいだったからだろう。嫉妬していた男子たちは好きな女子が和樹にチョコを上げてたからなんだろうな。俺が嫉妬しなかったのは今思うと、俺が好きな人が和樹にチョコを上げてなかったからだろうな」
俺がもらえるチョコはなかったけど。
「俺が好きだった子はいつも図書館で本を読んでいる子だった。俺は毎休み時間は本を読んでいる彼女を、本を読んでいるふりをしながら見ることだった。ただの変態だな」
ストーカーと言われても可笑しくは無いだろう。
「最初は見ているだけだった。でも、たまたま俺が持っていた本が彼女の好きな本だったんだ。貴方もこの本が好きなの?と訊かれた。その時は心臓がバクバクしまくったなぁ。何とか戸惑いながらうなずいた。実際は読んでいなかったが。彼女がその本について語っている姿が本当に好きだった。言っていることは何も分からなったが、小学生だからうなずいているだけでずっと話していた。幸福な時間だった」
どんなけコミュ障やねんと今は突っ込みたくなるが。
「彼女と話せるようになるためにその本を借りて、読んだんだ。全然面白くなかった。これの何が面白いんだろうと思った。でも、彼女があまりにも嬉しそうに話さすもんだから俺は読んだ内容を思い出しながら感想を言ったんだ。彼女は嬉しそうに笑ってくれた」
この時から人に合わせるという事を覚えた。でも、今思うと間違っていたんだろうな。
「家に和樹が遊びに来たときに訊かれたんだ。この本面白いかって?俺は流れるように、面白くなかったって言った。まぁ、そう言ったらなんでそんな本、家にあるんだって聞かれるだろ。俺は口ごもりながら理由は言わなかった。まぁ、俺に好きな人がいるは即バレしたけどな。もちろん誰かと追及されるだろ。正直に言った。そうなんだぁ~とか言いながらニヤニヤされたけどな」
その時和樹に言わなければ、今の状態にはなってないだろう。
「誰にも言うなよと俺は念を押しておいた。もちろん、本人も含まれるよな。今まで和樹は約束を破ったことがなかったから俺は信じていた。でも、あいつはその約束を破った。友達に言うのではなく、その本人に言ったんだ。まだ、男子の友達とかなら許容範囲内だ。俺はまだ、そのことを知らなかった。でも、彼女から段々避けられるようになった。俺は理由が分からなかった」
当たり前のことだな。和樹が約束を破るなんてすることをするわけがないと思っていたからな。
「そして、勇気を出して彼女に話しかけてみたんだ。どうして逃げるの?って。そしたらこういわれた。全部、和樹君から聞いたよ。私のこと好きなんだって。私は嫌い。嘘をつく貴方なんて。だから、もう付きまとわないで!後、和樹君から離れて!って。彼女はそう言って俺の前から去っていった。俺はこの時頭のなかが真っ白になった。彼女に嫌われた。和樹に彼女を取られたって」
図書室で一人端っこで泣いていたのを覚えている。
「そして、次に湧いてきたのは和樹に対する怒りだった。約束を破ったあいつのせいで俺は嫌われた!誰にも言わないって言ったのに!って。嘘ついていた俺も悪かったのかもしれないが、この時の俺の頭は回らなかった。俺は大樹に生まれた初めて暴力を振るった。お前のせいで!って。和樹は反撃してこなかった。さらに謝ってくれた。でも、小学生だったんだろうな。俺は和樹のことが許せなかった。俺はこのときから一方的に無視し始めた」
初めて俺たちの仲が悪くなった。
「まぁ、その後はお互い約束を絶対に破らないと誓って許したんだ。この時から俺は好きな人が出来ても絶対あいつには言わないことに決めたんだ」
話終わった俺は明日香の方に向く。
「分かった?」
「はい。その話が本当ならばあの西谷君のさっきの言葉は悪いですね。一回約束を破った人に好きな人を教えることは出来ませんよね。あ、あの、大樹君は実際私のこと好きだとかはないですよね?」
「あるわけないだろ。そう考えたらその結論に至るんだ?」
「で、ですよね。でも、直球で言われると嫌ですね」
「どうしろと!」
俺は思わず叫んでしまう。
いや、好きとでもいえば良いのか?いや、良くないだろ。普通?それもなんかダメそう。
「すいません。では、謝ってもらいましょうか?」
「まぁ、はなっからそのつもりだが」
その時、屋上のドアがドンっとなって勢いよく空いた。そこにいたのは和樹だった。
「大樹!」
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