親友の好きな人が俺の偽恋人になりました
風上 颯樹
第1話 呼び出し
ここは学校の屋上。俺の目の前には俺の親友の好きな人だと思われる女子が立っていた。
彼女の名前は宮野明日香(みやのあすか)。俺の学年で一位二位を争う美少女だ。
彼女は成績も優秀で、スポーツも万能。艶のあるストレートロングの髪の毛が風に揺られている。
「来てくれてありがとう、四宮(しのみや)君」
俺の名前は四宮大樹(しのみやたいき)。彼女に対して俺は、どこにでもいる普通の高校生だ。顔は平均より少し高め。スポーツも平均的で、成績も平均近くをさまよっている。
そんな俺に彼女がなんの用なんだろう?
「四宮くん、私と付き合ってください」
は?今なんて言った?宮野と付き合う?無理無理。
「ごめんなさい。宮野さんの気持ちは嬉しいけど」
「すいません。今のは言葉の綾というやつです」
「なんだ、びっくりした。本当に告白されたと思ったわ」
本当に良かった。だって、宮野は
「私の偽の彼氏になってください」
えっと、なんて言った?偽の彼氏?なぜに?
「なんでだ?」
そう聞くと宮野は少し頬を赤くしながら答える。
「四宮君の仲が良い、西谷くんがいますよね」
「ああ」
西谷。俺の昔からの親友だ。
本名は西谷和樹(にしやかずき)。彼は成績優秀、スポーツ万能、そして更にはイケメンである。だから、良くモテていらっしゃる。少し、それを分けて欲しいな。
「私、西谷君が好きです!」
は?どうゆうことですか?全くのちんぷんかんぷんです。
宮野さんは和樹のことが好き。だから、俺に偽の彼氏を頼んだ。
全く意味わかんねぇ!
「なぜそうなった!」
「西谷君に振り向いて貰おうと」
「だから、なんでそれで俺に偽彼氏になることを頼んだ!」
「西谷君に振り向いて「もういいわ!」」
分からねぇ。最近の女の子の心情が分んねぇ。これが普通なのか?いや、違うだろ!後、そもそも前提が間違ってる!
「一つ言っておくぞ。和樹は宮野さんの事が好きなんだ。だから、俺に偽彼氏を頼まずさっさと告白して付き合え!俺がここまで呼び出すから!」
そう。和樹は宮野さんのことが好きなんだ。本人は自分の好きな人だけは頑なに言おうとしなかった。まぁ、言動で分かるけど。けど、学校で気づいているのは俺だけみたいだ。なんで分からないんだろう思えるほどだ。昔から近くで見続けてきたからかもしれない。
だから、宮野さんが和樹に告白すれば一件落着なんだよ!
俺はポケットからスマホを取り出し、和樹にメールを送ろうとする。
「やめてください!」
彼女がかなり大きな声で叫んだ。俺は滅多に大きな声を出さない彼女の大声にびくついて、無意識にスマホをポケットにしまった。
そして、宮野さんは恥ずかしかったのか頬を赤らめている。
「すいません。大声出してしまって」
「いやいや、こちらこそごめん。それで、話は戻るが和樹本当にお前のことが好きだぞ」
「そうなんですか?でも、例え西谷くんの友達だからってそんなこと信じられません。彼、あなたにも好きな人言っていないと言ってましたよ。西谷君が私のことが好きならば、何故告白してくれないのですか?」
「それはだな」
そういえばそうだったな。俺たちが話しているのを聞いていたか。宮野さんが和樹のことを好きなことに気付いたのもその時だったな。
その時から和樹に言ってたのに!さっさと告白しろって!お前が告白してたら今ごろこんなことにはならなかったんだよ!
「幼馴染の感って言うやつかな?」
「それが例えそうだった場合、尚更じゃないですか?」
「何故、そうなる!」
「だって、西谷君は私のことが、す、好き。そんな私が仲の良いあなたと仲良くしていればじれったくなって私に告白してくれるでしょう?」
「お前から告白しろよ!」
つい、反射的に呼び捨てにしてしまった。
「嫌です!怖いじゃないですか!断られたら」
「断られねえよ!」
「信じられません!」
「じゃあ、どうするんだよ!」
「だから、偽の彼氏になってください!」
「だから、なんでそうなるんだ!逆に和樹がお前に告白しずらくなるだろ!それでもし、和樹がお前に告白してきた場合はどうするんだ!オッケーするのか?出来ないよな?お前は和樹から見ればビッチに見えるだろ!」
「あっ!」
ハッと口を手で押さえる宮野さん。
やっと気づいたか。
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
「お前から告白する気はないのか?」
「ありません」
「しろよ!ってここは言いたいんだが。はぁ。じゃあ、妥協案出すぞ」
「何かいい方法があるんですか!」
「まぁ、一応」
「教えてください!」
ぐっと宮野さんが近づいてくる。
「分かったから。分ったから離れて!」
「あ!すいません」
「じゃ、話すぞ。まず、お前の話をまとめると、お前は和樹が好き。でも、振られるのが怖いから向こうから告白してくれることを待ちたい。でも、方法が分からないと」
「はい」
「じゃあ、偽彼氏じゃなくて、彼氏になった感じを醸し出すって言うのはどうだ?」
「彼氏になった感を醸し出すですか?」
「ああ。誰にも俺たちが付き合っているとは言わない。まず、これが大切だ。俺たちのどちらかの口から、付き合っているの言葉が出れば、それが事実になる」
「なるほどです」
「だから、彼氏になった感を醸し出す。周りにこいつら付き合っていると思わせる。でも、彼氏彼女がするようなことは一切しない。これも大切だ」
「はい」
「基本するのは、お互いを下の名前呼び。投稿と下校を一緒にする。弁当を一緒に食べるくらいのことかな。肌と肌が触れ合っては絶対だめだ。仲がいい友達の関係がすることにとどめるんだ」
「下の名前呼びはダメなのではないですか?」
「仲のいい男女の幼馴染が下の名前で呼び合うだろ」
「確かにありますね」
「だから、これならせめて妥協してやる。そして、お前の恋もサポートしてやる」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃあ、早速。明日香さん」
「何ですか、西谷君」
「だから、下の名前」
「た、大樹君」
「そうそう。恥ずかしいだろ」
「は、はい。少し恥ずかしいです」
「じゃあ、やめよう!」
俺は意気揚々として答える。でも、甘くなかった。
「嫌です!分かりました!大樹君」
「ちっ」
「今、舌打ちしませんでしたか?」
「してないしてない。じゃ、明日からよろしくな、明日香」
「よろしくお願いします。大樹君」
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