同居人
蒼狗
無題
「マジかよ」
帰りの電車の中。眺めていたスマホ記事を見ていた私の気分は最低まで落ちていた。
「消臭ビーズって匂いを吸収するだけなのかよ」
足下の袋に目一杯入った消臭ビーズ。スプレーを使うのは気が引けた結果の選択だった。
電車が駅に着き、袋を持ち上げる。ただでさえ重かった袋がさらに重く感じた。
なんでこんな事をしなければならないんだ。
家人に対する鬱憤が積もっていく。一方的に私だけが与える行為はこうも疲れるのか。
「ただいま」
相変わらず返事は返ってこない。相手にされていないのだろう。
私は部屋に入る。掃除をしていても匂いはこもってしまう。
「相変わらず寝たまんまなんだね」
袋から消臭ビーズを取り出し封を切る。布団を囲うかのように部屋の壁際に置いていく。
「これで匂いの辛さは少しはなくなると思うよ」
ゴミを袋に入れて口を締める。部屋を出るときに振り向いて姿を見た。
「おやすみ。早く起きてね」
私は部屋の扉を閉めた。
目覚めることは無いと知りながらも、私は明日も声をかける。
同居人 蒼狗 @terminarxxxx
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