ただしい つづきの つむぎかた

カゲヤマ

はじめに。

大変申し訳ございませんが

作品の紹介文を再掲させて頂きます。

くどいと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが

契約を結ぶ際などでも説明文を読まれない方が

いらっしゃるでしょう?


僕とて拙作の愛読者様を

みすみす減らしたくはないのです。

何卒お許し下さいませ。




本手記は大切な“作家”を喪い、死を思うほどに

悲しみと苦しみに追い詰められてしまった“読者”様。

・・・・・・殺して剥いで削って埋めて逃げればいいものを、

それが出来ずに作品を、その世界を忘れることも捨てることもできない

愛おしき“純粋”な方に捧ぐ代筆の手解きで御座います。


この文は地の底に堕ちた、たった指で数えるほどしかいない“読者”を

天へと誘ういわば蜘蛛の糸です。

実行するには才能も生まれも年齢も根性も関係はありませんが、

代償として、見る者の多くに吐き気を催させる程の

猛烈な狂気をしたためております。


あなたがもし“普通”の方でありたいならば絶対に

手に取るべき“モノ”ではありませんし、

拙作をご愛読頂いている大切な読み手様であるならば尚更です。

たとえ作家と作品は関係ない・分けて考えられると割り切れる方でも

まず間違いなく拙作に再び手を伸ばして頂けることはないでしょうから。


・・・・・・「だったら書かなければ良いじゃないか」

と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、

さりとてそういうわけにはいかないのです。


今から当たり前のことを言います。

それは「死」は平等で、あまりにも突然だということです。


・・・・・・当たり前すぎると思われたでしょうか。

しかし頭が理解を示していても

心が理解をしてくれるとは限りません。


そして“読者”であるあなたがそれを本当に理解するときは

既に大切な“作者”を喪い、世界が閉ざされたとき。

ご自分が“普通”であるかどうかを知れるのも

その時です。


「作家だから死なない」

「未完になるから死なない」

なんて都合の良いルールは

この巫山戯た世の中には存在しませんし、

いくらご自身で“普通”と思われていても

ワンピースやハルヒの作者に何か起こったとあれば

恐らくその化けの皮は容易に剥がれてしまうでしょうから。


・・・・・・なので、僕は僕と同じく

どうしようもないほどに追い詰められた人の助けになりたいと

今回こうして筆を取らせて頂きました。


始めたはいいものの右も左も分からず、

たった一つの「読みたい」という願いを人生と一緒に諦め

閉め切った部屋で炭を焚くくらいならば、

まがいなりにも6年の間積み重ねてきた僕の経験を話した方が

これから代筆を志す貴方にとって好ましいと考えたからです。


勿論必ず救われる、と保証できるものではありませんし

死んだ方が十倍マシと思える程の生き地獄ですが、

死ねばすべてお仕舞いです。

そんなことをすれば生きて綴りたいと願い

死んでいく“作者”に対する無礼というもの。

それならば生き汚いほうがなんぼかマシ、というものです。


・・・・・・最後にもう一度だけ、言わせて頂きます。


願わくばこの手記が、誰にも必要とされることがありませんように。

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