何承天2 ちんまん    

劉毅りゅうき姑孰こじゅくに駐屯した時、

そこの仮幹部として採用された。


劉毅が出かけた時、鄢陵えんりょう県の役人である

陳満ちんまんという人が鳥を弓、もしくは弩で

撃ち落そうとしていた。


その矢が、

よりにもよって劉毅サマの隊列に!


誰もケガをしなかったからいいものの、

ともあれ劉毅サマ、大激怒である。

速攻陳満さんを裁判にかけ、

公開処刑にしようとした。


いやいや、おかしいですよ劉毅様。

何承天かしょうてん、声を上げる。


「刑罰に感情を

 交えるべきではないでしょう。

 怪しければ、量刑を軽くする。

 それが通例ではございませんか?


 昔、かんの文帝が輿に乗っていた時、

 通行人が輿を引く馬を

 驚かしてしまったことがあります。


 なんでも彼は、橋のたもとにおり、

 一度橋に聞こえる音が途切れたので、

 もう一団が去ったものだと思い、

 ひょっこり橋の上に顔を出した。


 ところが、まさにその時、

 文帝の輿が差し掛かる所でした。

 これに驚いた馬が暴れ回り、

 あわや文帝も大けが、という騒動に。


 文帝は通行人を処刑しようとしましたが、

 張釈之ちょうしゃくしという役人は、罰金刑としました。


 何故でしょうか?


 その通行人に、馬を驚かそうという

 意図がないのが

 明らかだったからであります。


 しかも、文帝の輿も、

 実際には転覆しなかった。

 つまり、実害はありませんでした。


 故に張釈之は、文帝の判断では

 あまりにも処罰が重すぎる、

 と、意思を翻させました。


 では、このケースではどうでしょう。


 ここで陳満の意図が、あくまで

 鳥を射落とそうとしたことであるのは

 間違いがありません。


 しかも法律に則れば、過失致傷は

 三年の刑期となるのが妥当。

 まして、誰も傷つけなかったのですよ?


 かれのどこに、

 重罰にする謂れがございましょうか?」


その後宛陵えんりょう令に異動させられた。

えっどのタイミングで?(ニヤニヤ


やがて趙惔ちょうたんという人が

寧蠻校尉、尋陽じんよう太守に任ぜられると、

その副官への招聘を受けた。

一度受諾したが、すぐに辞職した。




撫軍將軍劉毅鎮姑孰,版爲行參軍。毅嘗出行,而鄢陵縣史陳滿射鳥,箭誤中直帥,雖不傷人,處法棄市。承天議曰:「獄貴情斷,疑則從輕。昔驚漢文帝乘輿馬者,張釋之劾以犯蹕,罪止罰金。何者?明其無心於驚馬也。故不以乘輿之重,加以異制。今滿意在射鳥,非有心於中人。按律過誤傷人,三歳刑,況不傷乎?微罰可也。」出補宛陵令。趙惔爲寧蠻校尉、尋陽太守,請爲司馬。尋去職。


撫軍將軍の劉毅の姑孰に鎮ぜるに、版じ行參軍爲る。毅の嘗て出行せるに、鄢陵縣が史の陳滿の鳥を射てるに、箭の誤りて直帥に中らば、人を傷したらずと雖ど、法に處され棄市さる。承天は議して曰く:「獄は情を斷つを貴び、疑うに則ち從輕せしめん。昔、漢文帝の乘りたる輿の馬の驚きたるに、張釋之は犯蹕を以て劾し、罪は罰金に止む。何ぞや? 其の馬を驚かす心無きの明らかなればなり。故に乘輿の重なるを以てならず、加うるに異制を以てす。今、滿が意は鳥を射てるに在り、人に中つるに心有したる非ず。律に按ずるに過誤にて人を傷つかば三歳の刑にして、況んや傷さざりたるや? 微罰なるべきなり」と。出でて宛陵令に補さる。趙惔の寧蠻校尉、尋陽太守爲るに、請うて司馬と爲る。尋いで職を去る。


(宋書64-17_政事)




情報量が多い。


陳満。


凄いな。二文字で役満だ(そこかよ)。

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