第213話 書き置き

あれは俺が、宝田に告白してフラれた日のこと。


あの時、本気で宝田に恋をしていた俺は「好きな人がいるので」と言ってフラれた後に、人気のない場所を求めて図書館にやってきていた。


ここなら誰もいない


そう思って、1番奥の席で1人泣いていた時に星宮さんは現れた。


図書委員だった彼女は、俺が泣いていたことに気づいたのだろう。

そっと何も言わずにハンカチと、置き手紙だけ置いてさっさと図書館から出ていってしまった。


一体なんだろう?と思って、手紙を確認するとそこには『はんかちつかってください!』と書かれてあったのだ。


俺は、そのハンカチを有難く使わせてもらった翌日の放課後に図書館を訪れたが……


「あの、君──」


「す、すみませんっ!」


星宮さんは、僕を避けるように図書館から出ていってしまった。


俺は、隣の書庫になっている部屋にいた先生に星宮さんについて尋ねると、先生は……


「あの子、人と喋るのがすごく苦手みたいなのよねぇ〜。一応委員会に1人喋れる子がいるみたいなんだけど他のことはサッパリで……心配よねぇ。

でも、あの子図書館の当番じゃない日にも仕事とかやってくれたりしてすっごくいい子なのよ〜」


と、優しく微笑みながら言っていた。


僕はそんな先生の話を聞いて1つ妙案が浮かび、すぐにそれを実行すべく図書館に戻って紙とペンを取り出してから、こう書き置きしたのだ。


『ハンカチありがとう。ちゃんと洗っておいたよ』

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