第63話 大丈夫

「あの、葉幸くんこれどうぞ」


そう声をかけられて顔を上げると、そこには家の鍵をもった宝田がいた。


「これは……姉さんの?」


鍵を受け取りながら聞くと、宝田は心配そうにして顔色を伺いながら答えてくれた。


「はい、葉柚さんから預かってきました。

それより大丈夫ですか?かなり疲れた……というか眠そうな感じですけど」


「大丈夫だと思う」


学校での睡眠もあまりとってない上で更に放課後に町案内の付き添いまでした今の眠気は過去最高クラスで、正直姉さんに「大丈夫?」と聞かれたらすぐ寝ているレベルだ。つまり大丈夫じゃない。


でも今でさえかなり心配そうにしてくれている宝田をこれ以上心配にさせるわけにはいかない。


「1人で帰れそうですか?」


「ここから家までは30分もないくらいだし大丈夫」


まぁ姉さんと一緒の時にしか外に出ないせいで寝ちゃっても運んでもらえるから眠気に逆らったことはほとんどないんだけど、1人の時ならなんとか我慢して帰れたこともあるから大丈夫なはず!


──まぁそれって家の近くのコンビニに行った時の話なんだけどね……


「それならいいんですけど……

帰っている途中で道の真ん中なんかで寝ちゃダメですからね?」


「うん、分かってる。

じゃあ僕は一足先に帰るから、また明日ね」

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