第33話 運命の3回戦!(話数とサブタイに3が並ぶ!)

<これまでのあらすじ>


 みんなー、思いっきりシスコン姉の[もみじ]だよー。

 百合以外入っちゃいけない百合ノ島、に最愛の妹[もみじ]と暮らしていまーっす。


 最近百合っ気に目覚めて来たちいゆと早く一線を越えたいなー、と思ってたら「この島を支配しますわオホホ!」のクレちゃん率いる≪深紅の百合≫と勝負になっちゃったの!


 一回戦はわたしの親友[いぶき]ちゃんが乳首当て勝負で勝利! 

 二回戦も島随一のド変態百合[相楽]さんがイかせる絶頂勝負で勝利!


 五番勝負だから、三回戦を勝ったらこの島の勝利だよー!

 えっへっへー、思ったより早く決着がつきそうでわたしの出番なしかな?――ってヤバ! フラグ踏んじゃった!?




   ♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀



「アヘちゃん! あなたは≪深紅の百合≫四天王最強の存在なのよ! 何負けてらっしゃるの、もう!」


 うわっ、クレちゃんが癇癪起こしたお子様みたいに両手をジタバタさせてる! なまじスタイルいいから余計カッコわるいんですけど。

 って、アヘちゃん四天王最強だったの! それに勝っちゃうなんて相楽さんって凄いんじゃない?


 さっきまでしつこく追いかけていた相楽さんをチラ見した。

 島長である燕佐さんに何か弱みを握られてるのか、耳元で囁かれてから異様におとなしくなっている。


「これはお仕置きしかありませんわ! それもキツキツ、キッツ~イお仕置きですわ!」


 こんな公衆の面前でお仕置き! それ上司が部下にやっちゃいけない上位のやつだよー。

 ああ! ガクブルしているアヘちゃんの前にきたー!


「わたくしのこと“嫌い”と言ってごらんなさい」


 クレちゃんの謎指令に、アヘちゃんがイヤイヤと激しく首を振った。


「言いなさい、“嫌い! 大嫌い!”と」


 ああ、涙流して首を左右に振ってるよー、何これ!? って――


「き、嫌い! 大嫌い……うわぁぁ!」


 アヘちゃんが泣き崩れちゃった……。

 どう見ても言いたくないことを言った……ううん、ように見えるんですけど。

 もしかしてクレちゃんが《深紅の百合》のトップになれたのってこの能力があるから?

 それにしてもヒドイよー! あの大泣きだと、クレちゃんのこと心底大好きみたいなのに「大嫌い!」って言わせるなんて。

 きっと叩かれるより辛いよ……。


 そう思ってたら、島祭りでクレちゃんを捜してたりキスされたりしてたショートカットの眼鏡美人さんが、泣き崩れているアヘちゃんを起き上らせた。


 そして両手を組み合わせると、濃厚な百合キスッ! しっ、ししし、舌もいやらしく出し入れしてるー、すっごくエロッ!

 はっ! ちいゆにこれは刺激的すぎる! って目が合ったー!

 

「お姉ちゃ~ん」

「な、何?」

「あの人たちって~……その……何でいろんな人と……キ、キスしちゃってるの~?」

「そ、それはね、あの人たちはねー、えーっと、こう……心で愛するより、体で愛する人たちだから……」


 ああー! 焦るあまり、百合前提で話しちゃったー! 


「それおかしいよ~!」


 え?


「愛してるなら、まず心からだよ~! お姉ちゃんもそう思うでしょ~!」


 何か“ふんす~!”な鼻息でメッチャ真剣な目なんですけど、これってもしかして……。


「う、うん、そう思う。でもちいゆ、あの人たち女性同士だよ、何とも思わないの?」


 真剣な目から力が抜け、瞼をパチパチさせる。


「この島来てからそういうのばっか見てるせいかな~、な、何とも思わなくなっちゃった……」


 そう言ったちいゆが恥ずかし気にこちらから視線を外すと、左右の指をもじもじ絡ませた。


 えへ、えへへ……やっぱり百合に抵抗が無くなってたんだー! 

 こ、これはもうハードルの無くなったハードル競争、ただ疾走してちいゆに抱き着くだけなのでは!!


 そこへはクレちゃんの一喝が響いてきた。


「ドレちゃん! お仕置きが台無しになりますわ、おやめなさい!」


 ドレちゃんと呼ばれた眼鏡のショートヘア美人さんが濃厚百合キスを止める。

 唇を放されたアヘちゃんといえば、沈痛な泣き顔が恍惚の涙顔に変わっていた。


「あー、もしもしー、ひと悶着終わったんなら三回戦の手続き入ってもいいですかー?」


 おどける司会の燕奈さんに拍手が起こった。

 

 さ、三回戦! これに勝てば百合ノ島の勝利なんだけど……。


 クレちゃんと燕佐さんがそれぞれ箱から紙を引き抜いた。


「ん、《深紅の百合》が引いたのは“ラーメン”勝負。そして百合ノ島が引いたのは“中華そば”勝負ー!」


 ひぃっ! 遂に引かれてしまったー!


「これも被ったということでよろしいでしょうか?」


 燕奈さんが巨大スクリーンに映る百合の面々に問い掛ける。


 何かガッカリしたような顔でみんな頷いてるんですけど……。

 そういえばこの百合たち“乳首当て勝負”に“イかせる絶頂勝負”とか、やたらエロい勝負方選んでたんだった。

 とはいえ遂にわたしの出番! しかも百合ノ島勝利が決まる三番目の勝負でー……ううー、緊張するー!


「お姉ちゃ~ん!」


 声を掛けてきたちいゆを見る。


「ガンバだよっ!」


 ふたつの握った拳を持ち上げ、力強い笑みでわたしを見ている。


 そうだよー! ちいゆの為にもお姉ちゃん頑張る!


「ありがと、ちいゆ。わたし達のラーメンで勝ってくるね」

「うん!」


 そう言ったちいゆに頷き、島祭りで使ったラーメン屋台へ向かう。

 対する《深紅の百合》は豪華なキッチンを大急ぎで設置していた。

 それをオドオドしながら眺めてる百合がいる。

 白いコック服を着ていることから、わたしの対戦相手と思えた。


「凄いキッチンですねー」


 声を掛けたらツイン三つ編みと一緒に体をぴょんと飛び上げた。


「お、驚いたぁ……おや、百合ノ島の方ですか?」

「そうです、驚かせてすみません」

「こっちこそ大げさに驚いてすみませんにゃ」


 にゃ? 何かニャンコちゃんみたいな百合さんだなー。

 目と口もどこかニャンコっぽいし。


「そうです、小池もみじっていいます。よろしくね」

「ウ、ウチは小泉パイっていいます。よろしくにゃ」

「わたしの名前も変わってるけど、小泉さんも変わってるね」

「よく言われるにゃ、ウチのコトはパイたん、って呼んで欲しいにゃ」

 

 ニャンコちゃんみたいな顔でにっこりするパイたん。

 何か凄く気が合いそう!


「ところで小池さん」

「わたしのことはも“もみじ”でいいよ」

「え? じゃあ、も、もみじ」

「なに、パイたん」

「やっぱりその……百合さんなのかにゃ?」


 頭の中に「?」が浮かぶ、パイたんだって《深紅の百合》にいるんだから当然百合のはずなのに。


「うん、あそこにいる妹と百合恋人になりたいんだー」

「あ、あの子ですか。確かにカワイイですにゃ……って妹!?」

「えへへー、わたし凄いシスコンなんだー」

「ゆ、百合でシスコン……ですか……まあ、それも……いいかもにゃ……」

「パイたんはどんな百合さんとつきあってるのー?」


 怯えたニャンコみたいな顔になるパイたんにますます「?」となる。


「じ、じじ、実はウチ、百合じゃないんですにゃ……」

「え?」

「クレちゃんに中華そばの腕を買われて、一週間前クリムゾン・リリィ号にお店出して貰ったんですけど……ゆ、百合しか乗ってないのに気付いたの、その時なんですにゃ……」

「ちょ、ちょっと、それおかしいんじゃないー?」

「もう後の祭りで、クレちゃんに百合を仕込まれそうになったんです。で、でも土下座でひとまず許して貰いましたにゃ」

「逃げられないの?」

「無理ですにゃ、《深紅の百合》は恐ろしい組織ですにゃ……」


 多分っていうか間違いなくこの勝負に負けたら、パイたんはクレちゃんに百合を仕込まれてしまう。

 強引に百合にさせるなんて、百合の風上にもおけないよー!

 こうなったら《深紅の百合》に勝って、パイたんを百合ノ島に逃げさせるしか。

 あー、そういえばここ百合以外住めないんだったー!

 どうしよ! どうしよ!


「はいー、準備出来ましたー! 両者こちらへ来てくださいー」


 ひぃー! 勝負始まっちゃうしー!

 困ったよー! ここは勝負に集中しながら打開策を考えなきゃー。

 そ、そういう訳で次回に続くねー!

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