今日から死霊術師
栗殻コレノ
Prologue 三度目と言われても
気が付けば、墓場に立っていた。
ただの墓ではない。上を見上げても空はなく、見渡す限りの地下空間全てが墓となっている。山と積まれた棺が幾重にも連なって山脈を成し、何を納めているのか見当もつかない巨大な棺がロウソクの明かりに照らされていた。
神殿のような、荘厳な大墳墓。空間を包む圧倒的な死の匂いと静寂には、なぜだか落ち着くものを感じる。
「おい」
「あでっ!」
ばしりと足を叩かれて、思わず声が出た。
下を見れば、少女がいた。黒いゴシック調のドレスに身を包み、先端に頭蓋骨をくくりつけた仰々しい杖を持っている。僕の足を叩いたのはこの杖らしい。
「いつまで呆けておる。さっさと行かんか」
「……」
精巧に作られた人形のように可愛らしい顔立ちの彼女だが、内から溢れ出る悪意と尊大さがその印象を邪魔していて、もったいないことこの上ない。それよりもどこかで見た気がするが、なんだか頭が痛くて思い出せない。じっと見てその既視感の正体を掴む前に、もう一度ばしりと杖で叩かれる。
「いてっ」
「さっさと行けと、そう言うておる」
「……えっと、行くってどこに……いや、そもそもここは?」
当然といえば当然の疑問に、しかし彼女はゴミでも見るような目で僕を見た。少し興奮する。すがりつくような目で見れば、面倒そうに口を開く。
「お主は死んだ。生き返りたければ信仰を集めよ」
「……」
「……なんじゃ、まだなにかあるのか?」
「……えっ?説明それだけ?」
「うるさい。わしは三度目は説明せん」
「わしって……というか三度目と言われても、まだちゃんとした説明なんて一度もされてな」
「うるさいと言っておろう」
「あ」
どん、と。押し問答の末に、彼女が杖の先端の髑髏で僕の胸を突く。どくんと脈打つような感覚、そして。
……暗転。
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