第22話 予行演習

 じゃりじゃり。


 「ここら辺でいいかな?」


 マイゼンドは、ポンと転化空間からテントを取り出し川辺に置いた。

 今日は、予行演習をする事にしたのだ。

 まずは、テントの中から調理器具を出す。そして、練習用にとって置いたボアも転化空間から出した。


 「ザラ、危ないから離れていてよ」


 大きなボアを地面に置いて、モンスター包丁でザックリと……。


 「き、切れないんですけど。うーん……」


 凄く切れが悪かった。


 「どうせ、モンスターだし」


 目についた腰に下げていた剣を手に、ボアを切り刻む。明らかに切れ味が違う。それにマイゼンドは驚いた。せっかく買ったのに、調理器具の方が切れ味が悪いからだ。


 それもそのはず、この道具は調理スキル持ちが使う前提の物。剣は、武器なのでモンスターに攻撃・・しただけなのだ。


 「切れたけど……剥ぐとは言わないかな?」


 マイゼンドでもそう思うほど、剥いだ皮にたっぷりと肉が付いていた。

 取りあえずと、ボアの皮を剣で剥いでいく。ボアは、一回りも二回りも小さくなった。そして、周りは血だらけに……。


 「す、凄い事になった……」


 マイゼンド自体もボアの血で汚れてしまったのだ。

 何とか解体していくも、フライパンに乗る大きさではない。


 「はぁ、ダメだ。やっぱり調理はスキルがないと無理なのか……あ、一角兎ならどうだろう?」


 誰もこないだろうと、テントをそのままに、一角兎を狩りに向かった。一体だけ倒して持って帰って来たマイゼンドは、まずモンスター包丁で試してみるがやはり切りづらい。

 剣で斬れば身が無い状態に……。


 「あれ? どうしてこうなった。あ、でもフライパンに乗りそう」


 さっそく焼くをチャレンジだ。貰った熱する道具に魔力MPを入れてフライパンを置いた。暖まったフライパンの上に一角兎の肉を置く。


 「臭いは、おいしそう」


 焼きあがった一角兎に、マイゼンドはかぶりついて固まった。前にシャーフに貰った肉を自分で焼いて食べた事があったが、それとはだいぶ味が違うのだ。


 「な、生臭い。まず……」


 切り刻まれたボアは、ザラのご飯になって消滅していった。そして、一角兎も。


 「ザラって凄いね。生臭くても食べられるんだから」


 変な関心をするマイゼンドは、ピンと閃いた。


 「魚を釣ろう!」


 そう思うも道具などない。そう言う事で、素手で捕まえる事にした。魚は、あっさりと捕まった。


 「そうだ。ザラも食べる?」


 ザラは、見向きもしない。


 「モンスター以外食べないのかな? では、僕一人で」


 魚を塩焼きにして食べると、美味しかった。


 「おいしい。そうだった。モンスター以外も僕は食べられるんだった」


 このごろ、一角兎とボアの肉ばかり食べていたマイゼンドだったが、別に調理はモンスター以外のに使えばいいと気がついたのだ。


 「今度は、普通の動物でも狩って焼いてみよう!」



 「今回は、何をしてそうなった? 大人しく休めと言ったのに」


 ボアを狩って持って来たマイゼンドを見たシャーフは、呆れ顔で言った。

 血で汚れた服のまま布団に入りたくなかったが、手持ちがないのでクエストは受けてないがボアを狩って来たのだ。


 「ちょっと調理実験したらこうなった」


 「……やってみたのか。まあそれが一番理解できるだろうけど」


 「なんで味にあんなに差があるの?」


 「血抜きをしないからだろう?」


 「何それ?」


 「いやいい。どうせ出来なかったんだろう? 何体持って来た?」


 「6体……」


 「ほれ、報酬。いいか、他の街では買い取りは、珍しいのしかやってないからな!」


 「はーい。ありがとう」


 マイゼンドは、服と雨の日用に外套を買った。

 また川辺に戻ってきたマイゼンドは、テントを出すとランプに明かりを灯す。辺りは薄暗くなり始めていた。

 買った地図をそのランプの元、見て確認する。


 明日、シャーフから肉を受け取ったらリトーンがいるだろうトグリップ街に向かう予定だ。

 徒歩で行くと一週間ぐらいかかると言われているが、素早さにもよるのでマイゼンドならもっと早く着くだろう。


 「思ったより遠いなぁ。あ、ここが祈りの泉か。あ、ここに祠のマークがある」


 地図を見て、冒険に夢を膨らませるマイゼンドだった。

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