神様だって癒しがほしい!

波流

第1話

業務の合間にちらりと覗く。

今日も推しが可愛らしく動いている。

推しは健気系正統派美少女。

性格は真面目でコツコツ努力タイプ。

思わず応援したくなる。

今日もあの子が頑張ってるからこちらも

頑張ろうと思える。

この時間があるから、どうしようもなく退屈な業務も乗りきれる。

「仕事の方は進んでいらっしゃいますか」

背後から丁寧ではあるが、威圧的に声をかけられる。

「いやぁ、滞りなく」

静かに推しを隠しながら答えるが、時すでに遅し……

「!!!あなたというひとは!!!またこんなものを見て」

忠実で優秀なる部下であるはずのその男は、今まさに、鬼や般若や怒り狂う母親のようにヒステリックに叫ぶ。

「……今、業務終わったから、ひかりちゃんタイムしてただけだもん」

口を尖らせながら、呟いてみても、背後にある怒りの炎は消えていない。

「大体あなたというひとは、ご自分の立場がお分かりになられていない!」

寧ろ炎は飛び火して、いつもの論争に着地しようとしている。

「だって、だって、ひかりちゃんタイムは私の唯一の趣味なのに」

優秀なる部下はなんとか自分でその怒りを納めようとしてくれている。しかも、彼なりの譲歩までしてくれた。

「わかりました……それでは、そのなんちゃらタイム、あと1分だけ差し上げますので、終わりましたらこちらに声をかけていただきますよう」

「えーー。。もっと時間ほし」

最後が尻窄みになったのは、優秀なる部下の目の色が明らかに変わっていたからだ。

さすがにそれ以上続ける勇気もなく推しを見るのをやめて、業務に戻る。

作業自体は単純で、いらないものを減らしたり、

削除する。

淡々と行える仕事だ。

少し前までは本当に淡々とそれを行ってきた。



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