第429話 写し画の美人画

※ギルドカードの項目につきまして、「累計ギルドポイント」、「ギルドポイント」の二項目がありましたが、「ギルドポイント」のみに修正させていただきます。

※読者様の混乱を招き、ご迷惑おかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。今後はこのようなことがないよう、厳重に注意いたす所存でございます。誠に申し訳ございませんでした。

※また、このように謝罪文で文字数を稼いだことを、重ねて陳謝いたします。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


 ちょっとやってみたかったんだけどねー、『ニス塗布』でのギルドカード偽装。

 なんか格好良くない? 自分の能力を使って偽装工作とか、異能力頭脳バトルものっぽくて格好良い気がする。


 だがしかし、やっぱりどう考えても問題のある行為で、クリスティーナさんからも『それはやめとけ……』と言われてしまったため、実行に移すのはやめておいた。


 まぁ僕も本当に誰かをだましたいわけではない。当然ながら偽装ギルドカードを用いて犯罪行為に手を染めるつもりもない。ただなんとなく、格好良くて試してみたいなって思っただけだ。


「でだ、いい加減カードの説明をするぞ?」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 ではでは、僕も改めてカードの確認をしよう。

 今僕が手に持っている木のカード、その内容は――



 冒険者ランク:Fランク パーティ:――


 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:18 性別:男

 職業:木工師


 ギルドポイント:0

 更新日:0日前



 ――こんな感じだ。


 あ、それと――顔写真。

 この文面に加え、カードの左側には顔写真が付いている。カラーの綺麗な写真だ。

 ……木のカードに綺麗なカラー写真がくっついているので、微妙に違和感があったりもする。


「じゃあまずは――」


「あ、その前にいいですか? ちょっと聞きたいことがあるのですが」


「またかよ……。なんだ? どうした?」


 ふむ。先程もカードが木製であることが気になって、話の腰を折ってしまった。これで二連続だ。二連続で腰を折ってしまった。申し訳ない。

 でも、やっぱりどうしても気になってしまい……。


「僕の顔写真なんですが……」


「顔写真ってなんだ?」


「おっと」


 そういえば名称が違うんだっけか。

 えぇと、確か……写し画? 写し画だったかな?


「写し画、カードに載っている写し画のことです」


「ああ、それがどうかしたか?」


「この写し画……仮面付けてないんですけど」


 顔写真の僕は、仮面を付けていなかった。素顔の僕だった。


 これはなんだろう。どういうことなんだろう。

 仮面状態でカードを作成したのだから、カードの写真も仮面状態になるのだと思いこんでいた。

 だが実際に写っていたのは、素顔の僕。予想外の写真で驚いてしまった。


 あまりにも予想外で、写真の自分を自分だと認識するまで時間がかかった。

 カードを見て、ついつい『おぉう? ずいぶんと美人な人が写真に?』なんてことを思ってしまったほどだ……。


 なんか前にもあったなこれ……。確かダンジョンメニューのライブ機能で自分を見たとき、『天使がいる』とか思っちゃったんだっけか。

 自分で自分のことを『天使』だの『美人』だの、だいぶ痛い人である……。


「それで、何故なのでしょう? 何故仮面を付けていたのに、素顔の僕が?」


「そういうもんなんだよ。みんなそうなる。例えば頭部をすっぽり覆うヘルムをかぶっていたとしても、ギルドカードには素顔が出てくる」


「なんと……」


 そんな謎技術が……。妙なところで妙なオーバーテクノロジー……。


 ……いやしかし、そこまで驚くことでもなかったりするか?

 普段の鑑定だって、触れて魔力を流すだけで、対象の名前やら年齢やらステータスやらの情報を抜き出せる。カードをダス魔道具が対象の顔情報を収集し、カードに印刷できたとしても、別におかしくはない……のかな?


「それにしても、そういうことだったのですね。だからギルドの受付員さんも、仮面を付けたままでいいと言ってくれたわけですか」


「そういうことだな」


「ふーむ、なるほど」


 まぁ仮面やヘルムを自動的に消して撮影できるのならば――


「――ハッ!」


「あん?」


 ……なんてことだ。大変なことに気付いてしまった。

 もしも――もしもカツラを付けた人がカードを作ったら、いったいどうなってしまうのか……!


 まずいですよこれは……。

 カードをダス魔道具が、カツラのことを顔を隠す異物だと判断した場合、カードにはカツラが除去された顔写真が載ってしまうわけだ……。


 なんて恐ろしい……。というか、切ない。なんだか想像しただけで切なくなる。

 そんな悲しい真実を無理矢理に暴き、あまつさえ写真になんかしないでほしい。そう強く願う……。


「どうかしたか? なんか変な写し画だったりしたのか?」


「あ、いえ、僕の写し画は、まぁ普通に……」


 僕はカツラでもないし、そもそもエルフはハゲない説があるくらいだし、だからまぁ、僕は別に……。


「普通に格好良い写し画だったってか?」


「え? あー、えぇと、それは……」


「安心しろよ。もう見ようとはしねぇから」


「…………」


 ぬぅ……。顔を見られることを僕が本気で嫌がっているのだと、クリスティーナさんは勘違いしているようだ。


 それ自体は特にどうというわけでもないのだけど……でも、それでクリスティーナさんから変に気を遣われるのも、ちょっと微妙だな。

 もうクリスティーナさんに、うりうりともてあそばれることがないのだとしたら、それはとてもとても残念な事態である……。





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