第367話 レベル30到達

予約投稿に失敗してしまいました><

カクヨムさんのエラーっぽいです。申し訳ありません。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


 なかなか難しいもんだね、騎射ってのは。


 あれから何戦か試してみたけど、かなり苦戦している。

 何度も大ネズミのフリードリッヒ君から落ちかけて――というか実際に何度か落ちてしまった。


 いやはや、『コツは掴めたと思う』との発言は、一体なんだったのか。弓の照準すらままならず、射てたとしても、ひょろひょろとした矢にしかならない。

 ……そんな中でアーツを使おうとしたら、久しぶりにパラダイスアローが暴発したよ。


「もうちょっと段階を踏みながら練習した方がいいのかもねぇ」


「キー」


 フリードリッヒ君もそう思うらしい。

 そもそもの話、いきなりモンスター相手に実戦で試したのが間違いだったのかもしれない。


 そうだな、まずは訓練場のまとでも目掛けてやってみようか?

 今の僕にはカーブも厳しいので、フリードリッヒ君には真っ直ぐ走ってもらって、その中で的に目掛けて矢を放つ訓練を…………うん、まるっきり流鏑馬やぶさめだ。


「あるいは、もっと最初の最初、両手放しで騎乗する訓練からかなぁ。それだけでも難しく感じる段階だし……」


 改めて考えると、現状がその段階だというのに、僕はいきなりずいぶんと背伸びしたものだ。もうちょっと地道にいこうかね……。


「やっぱり足腰かなー。足腰が重要っぽいよね。太ももでしっかりくらを挟んで、体を安定させるように――」


「キー」


「ん? あ、うん。着いたね」


「キー」


 ぼんやりと今日の反省会をしながらフリードリッヒ君に運ばれていたところ、メイユ村に到着していた。

 こうして最近は、ダンジョンの行き帰りもフリードリッヒ君が送ってくれるのだ。


 ……というか、こんな感じで毎日フリードリッヒ君に運ばれることで、むしろ僕の足腰が弱っていくような気がしないでもない。

 一応は普通に乗っているだけでも足の筋肉を使っているはずだし、大丈夫だとは思うけど……。


「キー?」


「いや、なんでもないよ。今日もありがとうフリードリッヒ君」


「キー」


 ひとまず僕は鞍から降りて、フリードリッヒ君を撫でまわす。


「今日もこれから教会で鑑定するつもりだけど、フリードリッヒ君はどうする? そろそろフリードリッヒ君も鑑定してみようか?」


「キー」


「そう? そっか、じゃあ今日はここまでかな。お疲れ様フリードリッヒ君」


「キー」


「うん。また明日ね。――『送還:大ネズミ』」


「キー」


 フリードリッヒ君的に、鑑定はまだいいらしい。これから教会に行くなら送還してほしいとのことで、ひとしきり抱擁を交わしてから、呪文を唱えて送還した。


 それにしても……フリードリッヒ君もそうだけど、みんなそこまで鑑定しないよね。

 レリーナちゃんやディアナちゃんも、鑑定するのは数ヶ月に一回だって言うし、大人エルフなんて数十年単位で鑑定していない人もいるくらいだ。

 なんだかそう聞くと、隔週で必ず通っている僕が、少しおかしな人みたいになっちゃいそう。


 ……まぁレベル30直前の今は、隔週どころか毎日通っているわけで、はたから見ると、それはもう確実におかしな人なのだろうけど。



 ◇



 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:18(↑1) 性別:男

 職業:木工師

 レベル:30(↑1)


 筋力値 21(↑1)

 魔力値 17

 生命力 11(↑1)

 器用さ 39(↑1)

 素早さ 6


 スキル

 剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv1 ダンジョンLv1


 スキルアーツ

 パリイ(剣Lv1) パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)


 複合スキルアーツ

 光るパリイ(剣) 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)


 称号

 剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター エルフの至宝



「ふおぉぉぉ……」


 レベルアップ! レベル30到達!


「おめでとうございますー」


「はい。ありがとうございます!」


 というわけで、ローデットさんからの祝福に笑顔で応える僕。


 いやー、よかったよかった。天界へ転送される前に、こうしてレベルアップに気付くことができた。

 おかしな人と思われようが、毎日毎日通っていた成果が出たね。


「ついにですねぇ。ついにレベル30ですよ」


「そうですねー。正直何がそこまで『ついに』なのか、私にはいまいちわかりませんけどー」


 まぁねぇ……。ルーレットのことを知らないローデットさんからすると、レベルが5の倍数になるたびにおかしくなる僕は、やっぱりおかしな人なのだろうさ……。


「それで、えーっと……上がった能力値は『筋力値』と『生命力』と『器用さ』ですか」


 ふむ。やっぱり『素早さ』は上がらないか……。

 前回はダンジョンマラソンで『素早さ』が上がったけれど、今回はフリードリッヒ君任せのダンジョンマラソンだったからな。おそらく上がらないだろうとは思っていたけど、やはり上がらんか……。


「あれ? というか『素早さ』って、前回から上がっていない……?」


「前回?」


「あ、いえ、前回のダンジョンマラソン――レベルが25に上がった二年前から、『素早さ』が上がっていないんじゃないかって……」


 確かあのときに、『素早さ』が6になったような気がする。

 あれから二年。二年掛けてレベルは5つ上がったのに、『素早さ』の上昇はなかった……?


「んー。それも納得な気がしますけどー」


「え、そうなんですか?」


「現在アレクさんは十八歳で『素早さ』6ですから、単純に平均すると、三年か四年でひとつ上がる計算ですよ?」


「えっと、あぁ、確かに……」


「それなら二年間『素早さ』が上がっていないのも、納得じゃないですか?」


「確かに……」


 確かにそうだ。確かに納得できる。

 それで『それじゃあ仕方ないね』と納得していいのかっていえば、それは少し疑問だけれども……。


「それよりアレクさん、レベルが上がったということは、これから通話ですか?」


「あ、そうですね。ユグドラシルさんに連絡しないと」


 僕が天界へ転送されるシーンに、何やら異常な執着を見せたユグドラシルさん。

 どうにか前回で無事に昇天シーンを披露できたわけだが、ユグドラシルさん曰く『機会があったら、また見たい』とのことだ。

 今回もその機会を用意できそうなので、それならば連絡して、しっかり伝えておこうじゃないか。


「それじゃあ通話の魔道具をお借りしてもいいですか?」


「いいですよー」


「では、お願いします」


「はい。いいですよー」


「……あ、ちょっと待ってください」


 ローデットさんから、言外の含みを感じた。言葉には出さない何かを感じた。

 というか言葉に出さないだけで、表情や態度はわりとあからさまで、金銭を要求しているのを察した。

 そんなわけで、ローデットさんに通話代を支払う。


「どうぞ、お納めください」


「ありがとうございますー。ではこちらを」


「あぁはい。ありがとうございます」


 僕が硬貨を手渡すと、ローデットさんはテーブルに放置されていた通話の魔道具を、ずずずいっと僕の方へ寄越してきた。


「ではさっそく――」


「あ、私は部屋から出ていましょうか?」


「はい? 部屋から?」


「通話の邪魔にならないですか?」


「えっと……」


 まぁ用件としては、『アレクがレベル30に到達したので、ユグドラシルさんに伝えてください』ってだけだ。

 それだけならば、通話はすぐに終わる。わざわざ部屋を出てもらう必要もない。


 ただ、もしかしたら通話が長くなる可能性も捨てきれないわけで……。

 いつもの教会本部の人が通話に出て、会話が盛り上がっちゃうこともありえるわけで……。


「やっぱり私が隣にいたら、少し話しづらいですよね?」


「いえ、そんなことは……。ですが、通話が長引くこともありえますし、それが終わるまでローデットさんを付き合わせるのも申し訳ないですね」


「私は普通に隣で寝られるので、そこは大丈夫ですけどー」


 そういえば僕が長電話していると、いつもソファーで寝ているね……。


「えぇと、とりあえず僕としては普通にいてもらっても問題ないです。それか、自室で休んでもらってもいいですし」


「そうですか? それじゃあ会話が長くなりそうでしたら、私は寝ますけど?」


「ええはい。大丈夫です」


 別に僕は大丈夫だけど……一応は教会のお客さんである僕を前にして『寝ますけど』ってのも、修道女さん的にはなかなか不思議な宣言だな……。


「ではまぁ、繋げますね?」


「どうぞー」


 というわけで魔道具の蓋を開け、しばし待つと――


『はい。森と世界樹教会本部です』


「あ、もしもし――」


『え? あ、はい。もしもしー。もしもしー』


 といった感じで始まった、僕と教会本部の人との通話。


 それから僕が、なんとなく季節の話題から入り――


「最近ダンジョンに家を建てたんですよー」

「そうなんですよ。村の近くにあるダンジョンで……。えぇえぇ、そのときは是非案内させてください」

「あ、お休みの日とか、どのくらいあるんですか?」


 ――的な会話をしていたところで、すやすやと眠りにつくローデットさんが目に入った。


 ……改めて考えると、なんだろうね、この状況は。

 教会の応接室にて、修道女さんが寝ている隣で、別の修道女さんに電話を掛けて会話を楽しんでいる状況。なんだろうこれ。





 next chapter:天界長期滞在プラン

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る