135.フォックスさんにウインクを/大和真也
ということで頭から読み返してみた。
1983年の作品。コバルト文庫の第一作。
今で言うなら「異世界転移」ものなんだけど、あくまでSFですのでその「異世界」と「何で」が一応説明。
「頭から読めば」主人公水井いづみちゃんの意識の流れで進んで行く話なのでまあ判るんだけど。
ただ、今の時代だったら確実に「削れ」と言われる饒舌さではあるんだよな。
せっかく一太郎padアプリを入れたのでこれを活用。
本文2~4ページ目をまんま撮影→テキスト化→iPhoneとパソで共用しているヤフメの下書きにペースト→ちょっと修正。
ただこの「ちょっと」が本当にちょっとな辺り、今の技術ってすげえ。まじすげえ。
さて以下。一気に読むべし。
>い出しだ。
壁ぎわの椅子の上、無造作に放り上げてあるスタジアムジャンバーを取り上げると、そでを通さずに肩へひっかける。ライティングチェストの引き出しからくまのプーさんの札入れを出すと、カラージーンの右ポケットにねじ込む。蛍光灯を消そうとして思い直して止める。レターラックをひっかき回して『買い出し』という札を見つけ出すと、コルクボードから画鋲を一つ取り上げて、扉の内側、目の高さに札をとめつけた。
お気に入りのウエスタンブーツは、ヒールが七センチほどあるから今日はパス。だらしないくらいひもをゆるめてある黒のバスケットシューズを下駄箱から取り出すと、神経質なくらいにひもを締めていく。めんどいけれど、でも足首までの編み上げってあたし、やっぱりお気に入り。肩からすべり落ちてくる髪を左手で振り払うと部屋を出る。
建てつけが悪いのかな。あたしの部屋の扉って、ノブを回し切っても妙にひっかかるところがあってうまく開かない。回し切った状態のノブを右手で握りながら右足でちょいと蹴とばしてやると、ガクンという振動と共にやっと扉が開く。こんな事やってるから余計に調子が悪くなるのかもしれない、なんて頭の隅っこに浮かんだけれど、それは無視しても一度、足を使って扉を閉める。
鍵はかけない。はふ、なんて大仰なため息をついて、ちょいと頭を一振りしてみせるとそのままあたしは階段をおりた。
外に出る扉を開けると冷気がつるんと入り込んでくる。息が急に白くなる。屋根のひさしで四角くふち取られた夜空に今日は、びっくりするくらい沢山の星が光っている。
あーあ。
頭の後ろで腕を組んで思い切りのびをして、それからあたしは走り出した。先の路地を南へ入ったところに月極めの駐車場を借りていて、白色をしたあたしの愛車がちんまりと駐まっている。キイを開けて運転席にもぐり込み、ハンドルを抱える様にしても一度つぶやいてみる。
スタジアムジャンパーのポケットをさぐって、ほとんどペチャンコになったマイルドセブンを取り出す、と。との時期になるといつも、もうそろそろ禁煙しようかな、なんて考えるのだけれどれ、どうしようかな。鼻うたまじり、なんて雰囲気で火を点けて、ふらっと一息煙を吐き出すと、きて、とキイに手をかける。小気味いい音を響かせてエンジンがかかり、スモールを点けて、それからヘッドライトを灯す。ギアをローに入れて、ゆっくりハンドブレーキをおろす。左っ側、BREAKって文字が浮かぶ赤いランブが消えたのを確認して、それから、ちょっと慎重すぎるくらいクラッチをはなす。あたし、若葉だってもう取れたんだから。
大げさなくらいゆっくりハンドルを回して路地に車を出す。あんまり広くない――そうね、車一台駐まってたらすれ違って通れない程の道だけれど、割とあたしはこの道が気に入ってる。たとえば泰山木、たとえば花海棠。銀杏の木だって、もみじだって柿の木だって道の両側に並んでて、無論人の家のものだけれど、こういうのって見てるだけでうれしくなっちゃう。石神さんちの梅の木だって、もうすぐ開花する筈だしね。いつも行く食料品店は九時で閉まってしまうから。高速の下をくぐって北へ。二つめの信号を左、あとまっすぐ行くと、右手の方に二十四時間営業の店がある。割とこの店、気に入っていて、たとえば五十円ライター。もう随分と前の事だけれど、火のつくライター、特価五十円、なんて風に書いて売り出していた事があって、ま、
確かに百円ライターよりはちょっと小さめだけれど、でも、ほんとに火がついたりして、あたし、妙に嬉しくなってしまって結局、買ってしまった。ここ、それに二人分パック詰めのコーヒー売ってるしね。ちょっと迷ってから結局、道路の左端に車を駐める。駐車場ない訳じゃないけれど、でも、すぐだもん、きっといいや。ライト、スモールだけにしてそれから考え直して、非常点滅灯にかえる。ハンドブレーキひいて、ギア抜いて、エンジンを切ると、キイ右手に車を降りる。左手で助手席においておいたスタジャンをつかんで。
足元がブルッと寒い。駆けて道路を横断すると、片側だけしか開かない自動扉の前にポンと立つ。
「よお」
なんて、もう顔見知りになってしまった店長さんが声をかけてくる。
「こんばんは」
右手ちょっと上げて笑んでみせて、それからあたし、コーヒーを並べてあるコーナーに行くと首を傾げる。
モカとコロンビア、どっちにしよう、なんてね。どっちも好きなのよね――えーい、いいや、両方とも買っちまおう。二人分パック詰め五袋入りの、モカとコロンビアをかどに入れて、あと、卵
***
……で3ページぎっしり。
当時正直、こういう改行無しが多かったんだよな。
そして無論ツッコミはある。石神さんって誰だ! いやその前にお前は誰だ!
主人公が名前を言うのはそれより数頁後、唐突な訪問者がそっくりさんと間違えたことに対する場面でやっとなんだけど。いやまあ実際名前無くてもいいのよ。彼女の視点でこの調子でひたすら淡々と進むんだから。
淡々と、というのはまあ読者視線比であって、当人は驚いているのかもしれないけど、流れがだな、
・買い出しから帰ってくると知り合い(実はそっくりさん)が声を掛けてくるが人違いされている。
・いや違う人違いだ、という間も無く既に部屋自体が転移空間に入ってるという。
・そのまま帰りの空きが出るまで行き先の惑星「ジュゼ」に行くことに。
・連絡用えぐい形態のテレポートできる蛙つり
・誰かがいるとかいないとか連絡を取るとか取らないとか現場のお姐さん(ぼく人称の一見男性)に気に入られて妹分にされるとかテレパシーの通じる手乗りペンギンで出会って気が合うとか(この辺り読んでるとだらだら行ってしまうんだが説明がもの凄くしづらい)
・そっくりさんだから超能力が出るかもとテストで砂漠をバイクでつっきることに
・走りやすい砂漠の真ん中で花畑+赤ん坊+そっくりさんと遭遇
・行き先の戦車? で姐さんのそっくりさんとかコードネーム「狐」くんと出会う
・何だか探してる人があっちに居るとかこっちに居るとかの話になって「性善説」のはずのいづみちゃんも「エルメスのビット」みたいなもので戦うことに
・ドラゴンジュニアと遭遇→またまたそっくりさんと、そのドラゴンの母親(でかい)と会う
・とか何とか言ってるうちに神事の場所で「人を魅了してエネルギーを吸い取ってしまう魔女」がいることを暴いたり
・最終的には「空きが出たから」ということでお別れ
・帰ってきたら冒頭でスキーに行っていたはずの男友達(彼氏とまでいってるのか謎)が部屋に居て、安心する
……これだけの内容を淡々とこの調子でやってると思ってくれや。
その間「少なくともこの話において」要らない名前が山ほど出てきてだな……
正直箇条書きにしてもぱっとこれがこうきて、という流れを上手く言えないというか……
あと男性キャラの区別が全然できないんですわ…… 挿絵が特徴曖昧ってこともあるだろうけど、
ちなみにこの「いづみちゃん」はミクロコスモスの住人なんだけど「実は上の地球の出身なのかもしれない」ということをほのめかされている…… んだけど、この話においてはそのことはそう提示されるだけ。
「あたし」一人称で共感されやすく~という感じで当時の指導を受けた結果、という感じが。そしたら逆に判りづらくなってしまったという感。
まあこれが三人称ハード系だったとしても、上記描写の結構ハード好きな彼女が「ぬいぐるみを寝かしつけてから」出たり、「男装の姐さん」イリヤの私室にやっぱりぬいぐるみがあったり、というのは違和感凄かったなあ。
あと絶対初見の読者に判らない愛知県地名。このシリーズ全体がまあ、森博嗣のシリーズと同じ様に現実地名が「みんな知ってるよね!」的に名古屋周辺の地名ばかりなんだけど……
で、ミクロコスモスの説明…… もっとして欲しいんですけどやっぱりこれは意識の流れ系でこのキャラ(作者の反映かどうかは謎なんだけど)がさほどに考えていないか考えようとこの時点では考えていないのか(うわあうだうだな書き方に)。
三度目の正直ですが、やっぱり筋はあっても起伏が無い+「え、このひと誰」が多い辺りが!
この時代だったから許されたんだと思うざんす。たぶん今の読者だったら引用部分で共感できないひとは放り出す。
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