117.PLUTO 全8巻/浦沢直樹

 久々に読み返しー。

 ベースがある話はやっぱりきちんとした着地点があるからいいね!

 浦沢+長崎コンビが自分で長編にすると、ともかく「長い話だけど着地点を何処にしたいのか判らない」というのが問題だと思うんだよ……

 だからこそ短編+大きな流れのキートンは成功したんだと思うし、手塚治虫の「アトム」の「地上最強のロボット」をベースにしたこれはうまくいってると思うんだよな。

 原作も一応読んだ訳よ。だけどそこではゲジヒトもえらく早く死ぬ訳だ。何というか時代も時代だし手塚キャラだから、深いものにはしていない。だからこそそこにそれぞれのキャラの物語をつけることができるんだと思うけどさ。

 だからそれぞれのキャラの物語のところで一つの物語が完結する訳でもあり、アトムとかゲジヒトという大きな流れの話もあるから、この話はうまくいったんだと思う。8巻で終わってるしね。


 個人的にはノース2号の話が好きなんだよな。

 これは流れの中では閉じた方のまとまった短編のようなもので、あえてノース2号に表情が無いとこが上手いんだよ。だからこそ夢見ている時とか、音楽家との淡々とした話しの中で悲しみがより伝わってくる。

 そんでよーやくこの二人の心が通い合ったと思った時の襲撃で、それまで長いマントで隠していた「露骨な破壊兵器」の姿が出てくる訳だよな。目が見えない音楽家はそれを見ることはないし、彼はそれを承知でマントを着ていた。自分でその姿を見たくなかったんだろうということで。

 そんで音楽家が「帰っておいでノース2号またピアノを弾こう」というのはやっぱり見えない「撃沈された」姿を仰いでいることで悲しい訳だわさ。

 だからこういう話は秀逸!


 一方でゲジヒトの話はどっちかというと混乱させられる方の浦沢節で、あっちゃこっちゃ謎がちりばめられてしまうから、本当に最後になるまで何でゲジヒトが~という部分がなかなか判らない。とはいえ、長すぎないからこの「謎」にもついていけるんだよな。

 同じことがプルートゥ/サハドに関しても言えて、彼に関してはサハドの部分と、アブラー/ゴジ博士/ボラーの話、それに中東の国のことやトラキアの大統領、テディベア、ブラウとか色々絡み合いすぎていてなー。

 アトムは何というか基本的に狂言回しなんだけど、まああとは「可愛くて優秀なこその悲劇」もはらんでいるよな……

 原作アトムはいじめられることやからかわれることもあるけど、このアトムは「普通」な外見と振る舞い、それに優秀なロボットであることを両立させてる、んだけど。


 浦沢氏はこういう自己流リメイクをもっとすると面白いと思うんだけど。

 ……まあ、ワタシよりやや上の人々特有の何とやらな思想は出てしまうんだけどさ。

 

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