5.マリー・アントワネットの日記 Rose・Bleu ・ベルサイユのゆり/・吉川トリコ

 「Rose」がオーストリア~王太子妃時代で、「Bleu」が王妃の時代。


 表紙もちゃんとそれだけにドレスの形が押しつけの王太子妃時代と、ベルダンと丁々発止の時代の王妃時代で違うわな、という。


 この話のまあ特徴は……

 あれだ。その昔、橋本治が「桃尻語訳枕草子」を出した時のようなぶっ飛び方なんですな。

 まああのネット言葉の使い方が最新かどうかは今一つ疑問ですがw ワタシ程度が使える様なネットスラングでは最新ではないなー。

 ついでに全部それに注釈を左端につけている辺りも微妙ではあるんですがww

 まあそれをよしとするかどうかは趣味の問題ですが。

 ただ、それはそれとして、内容は細かいですな。んで、ルイ16世の解釈に関しては個人的に好み。そんでその夫をちゃんと評価していたという意味でのアントワネットの性格もよし。


 いやーホント、このひとたち貴族ではなくてブルジョワジー程度に生まれて出会わされて結婚していたら平和な生活送れたのにねえ、という描き方ですな。ベルばらで「ペザント・ルック」がいきなり出てきて、訳わからなかったんだよな。

 ……この時代のドレスの着付けって滅茶苦茶面倒だからなあ。あんだけのものつけて踊れること自体が不思議だ。

 それを思うと、「農村ごっこ」の格好をオーストリアでゆったりした服を着ていた彼女が楽に思ったのも仕方ないざんすな、と。

 あと、ルイ・シャルルの性格をちゃんと判っていた、というのが興味深い。子供が皆天使な訳ないんだし。


 ……文体の好みが合えば楽しいです。はい。



 「ゆり」に出てくるのは


・ランバル公妃←幽霊になって最初と最後で2018年、あとは「もうじき死ぬ」以下の人々を訪ねるという構成

・ジャンヌ・ヴァロア(首飾り事件の女)

・デュ・バリー夫人(ルイ15世の公式愛妾)

・ポリニャック夫人(アントワネットのお気に入り)

・ローズ・ベルタン(お気に入りデザイナー)

・レオナール・オティエ(お気に入り髪結い師)

・カンバン夫人(侍女)

・ヴィジェ・ルブラン夫人(お気に入り画家)

・マリー・テレーズ王女(第一王女)


「夫人」で爵位とかは入れてないのは、途中で変わってる場合があるからなんですねー。

 ポリニャック家が公爵までなったなんて知らなかったですよ……

 どーしてもフランス革命前夜歴史に関しては、ベルばらとその前提のツヴァイクの「マリー・アントワネット」(上下巻。細かい文字スキーなら面白いぞー)しか知らないからなー。

 ま、そんなわけで(キャラクターの心情はともかく)関係性がある程度わかるのは面白いですな。


 心情からめたおはなしとして面白かったのはやっぱり娘かな。マリー・テレーズ。

 何かあれだ。

 鳥野しのさんの「麦の惑星」で主人公が女優の母親に関して思うとこと近いというか。無茶苦茶なエンジン積んだスーパーカーで日常の買い物はできない、みたいな。

 そういう感じ方をマリー・テレーズがしていて、一方でパパの愛情はうれしかったというのが興味深い。

 いや、いろーんなお話で、この夫婦様々に描かれてるでしょ。どーしても日本ではベルばらが基本になってしまうし。

 このとらえ方はいいなーと思ったざんすよ。

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