こんな本とかマンガを読んできたー。
江戸川ばた散歩
1.天上の虹/里中満智子
「天上の虹」。
里中御大のライフワークだった長い長いおはなし。
文庫11巻、コミクスだと23巻完結。
持統天皇物語、なんですが。
まーこの長い長いおはなし、ベースが日本書紀の上に里中流「愛!」風味が加わってるんだけど。
ともかく「大化の改新~大宝律令」あたりまでの人間関係を覚えるにはすげえいいのだ。
初期はまあ掲載誌が少女マンガというかレディースに近いというか、だったのでどうしても「愛!」が前に前に出てるんだけど、どんどん歴史な部分が前に出てきて、ワタシ的には嬉しく。
主人公持統天皇/
……そもそもこれ最初に手にしたの、高校の頃だったと思うぞ。それでごく最近完結なんだから、ホントにライフワークだよなあと。
面白いのは、ともかく多い天皇の妻達、その他皇室の皇子皇女、配偶者の関係を全部異なる形の恋愛にしていることなんだよなあ。
初期はその辺りはさほど……
讚良さまにとって、額田王が恋敵であっても「憧れの先輩」的に出張るとか、一緒に嫁いだ仲がいい姉の大田皇女のことくらいだったんだな。
なおこの二人、叔父に嫁いでいるわけですが、この時代は異母きょうだいならオッケー、ということと、皇后が天皇の地位を肩代わりすることがあるということで、皇子の正妻は皇女、という狭い範囲なんだから仕方ねえよな。あと天武帝は大田・讚良以外にも大江・新田部という兄・天智帝の娘を娶ってます。はい。
で、壬申の乱で勝利したあとは、そういう天武帝の、皇族豪族の沢山の妻とその子供達、権力争いだのや、藤原氏を台頭させる不比等とその妻となった女たちのことや、その娘とか、まあ人間関係ややこしいんですが!
ただそういうの好きで読んでしまうと、あらすてき、関係が暗記できますぜ、というわけだ。
まあ里中的性格を現した造形ってのがありまして。これが結構キャラ把握に役立つんだな。
讚良さまは典型的「主人公顔」なんだけど、この性格がぶれない上で、ちゃんと年相応の変化が姿にも言動にも現れるのは凄いわな。
髪型は二度くらい変わったけど、あとはまあ固定。髪型を途中で変えるのは長く垂らしてるキャラしかなくて、彼女の他は孫にあたる内親王二人だけで。必然性があったから変えてるけど、それ以外は全部固定!
まあ固定だから見分けがつく部分があるんだけどね。
この時期を描いた里中満智子の作品はあと二つ、この続編的時代の「長屋王残照記」。
ちなみにこの「長屋王~」は、「中心人物は主人公顔」の運命により、「天上~」の親世代と同じ顔になっているという呪いがww
と、やや時間が重複するけどその続きの時代の「女帝の手記」。
孝謙・称徳女帝のおはなし。
よく言われている「怪僧」道鏡とは純愛、という解釈。
と、同時に「皇族/藤原氏で揺れる女」「結婚を許されない娘」が、弱い父・聖武帝と強すぎる母親・光明皇后への複雑な感情とかが細かいんだよな。
……毒母はちょこちょここの方の作品にも出てくるんだけど、まあこの一連の話の中では、最高の毒母は讚良さまで、№2が光明子だなww
庄司陽子の場合はもうナッキーもだけど、多重人格の話とか、イタリアのコルティジャーナの話とか、毒母の典型のようなものをこれでもかとばかりに描くけど、まあここまでの憎憎しさは無いな。上に立つ人でありすぎて母になれなかった、という感じが強いというか。
*
ところで全23巻の中で、髪型を変えたキャラは少ない…… と上記にあったと思って、見返してみたざんす。
1巻だけちと見当たらなかったのだけど、それでも後の巻で記憶で出てくるからいいとすっか。
長髪をまっすぐ垂らしてることのある女性キャラは
・讃良さま
・越智娘(讃良さまと大田皇女の母親)
・十市皇女
・氷高皇女
の四人。
このうち越智娘は狂死、十市皇女は自害ということにおはなしの中ではなっております。
越智娘は天智帝/中大兄皇子の奥さんの一人、有力豪族の蘇我氏なんで、後に皇后になる倭姫の次くらいに格は高かったでしょうな。
だけどその蘇我石川麻呂が謀反の疑いで夫に殺されまして。
その中で強引に行為に及ばれたのち正気を失って、出産で死亡。
この方はずっと垂らし髪のままだったざんす。その髪の毛が、狂乱の様をよく表してましたわ。まあこのせいで讃良さまはずっと父親が死ぬまで憎むという構図を最初からとってたな。
もう一人悲劇のひとは十市皇女。
彼女の終盤は生き残ってしまった……感というか。
生まれがまず天武帝と額田王の間の長女。で、天智帝の息子・大友皇子の妻となったひと。
おはなしの中では天武帝と尼子娘の間に生まれた高市皇子と恋仲だったと。
まあそんなわけで壬申の乱で夫方と父方の中で引き裂かれることとなりまして。
乱の収束後は天武帝の娘ということで優遇はされたけど、スキャンダルを恐れて高市皇子と正式に結ばれることはできず。自分が居ることで皆に不幸をもたらすのではないか、とどんどん考えだす中、斎院として送られる前に息子を残して自害。
髪を靡かせて憂う場面が非常に多いです。
で、髪を靡かせて→動揺、ということで、次世代の氷高皇女。
讃良さまの息子の草壁皇太子の長女の氷高皇女。
美女! で非常に理性的で頭よくて、国のことを考えてて、弟を叱咤激励して、まあ最終的に未婚を選ぶんだけど。
二度目の縁談が来た新田部皇子/天武と藤原五百重娘の息子との恋に少しだけ浮かれたときの描写。
ただし新田部皇子は藤原氏に彼女が利用されるのを察知して、あえて別れを選ぶという。
頭のいい男女同士のお別れ。
こういう時にも髪が靡きまして。
未婚で弟のサポートに徹すると決めたときに、二度と乱れないように、と髪を上げたのでした。
……まあ、「長屋王残照記」では「できる美女」のテンプレになってますけど。これだと天上の虹における額田王と似てますなw
まあこれは里中「キャリアウーマン」のテンプレなんで仕方ないす。
天上の虹では氷高皇女は「強い姉」なんで、やや派手めの姿を小さい頃から描き続けて、最終的にこういう感じになったのではと。
で、讃良さまですが。
初期はこんな長い髪を下ろしてました。主人公テンプレです。
で、少女期~子供できてしばらく~までは前髪がおでこを隠しております。これが3巻まで。
4巻。
この巻では試行錯誤しまくるんですね。夫が自分を女としてみてくれない、と。飾りも多いです。
で、最終的に一つの形にまとまったんですが。
そんで最終23巻、本当に亡くなる寸前まで上でまとめて二段さげて後ろも長めに曲げてる感じ?
主人公の複雑スタンスをよく表した髪形だと思いまする。
ともかく「長いまま結わない」女性は、最凶の悲劇が。
もしくはわりとゆったりとした髪型の場合もそれはいえてそうで。
後半あれこれあった女性、紀皇女。
唇が当時の「いまどき」風にあえて色無しの、史実にほとんど出てこないこの皇女ですが。
自分から剣に突っ込んで行って、「忘れさせない」とばかりに。
あへて珂瑠皇太子の「年上の忘れられない妻」という役割にぶっこんで。
夢も何も無いというふわふわしたキャラだったんだけど、その前からのつきあいの弓削皇子との不倫がばれたとき、「一緒に死にたい」っていうのが強い望みになってしまってこういう悲劇に。
で、この彼女を皇太子→文武帝がいつまでもいつまでも忘れられないことから、第二の妻だった藤原宮子がまた酷いことに。
ずっと愛されたくて「必要とされる女」「いい娘」「よき妻」をやってきたけど、産んだ子供が男の子で、「紀皇女の生まれ変わりじゃない」とみなされたときの珂瑠の態度に、とうとうぶっつん。
努力してきたら叶えられるとがんばってきたけど、燃え尽きてしまったと。
で、これは史実の、息子に何十年も会わないということに。
このひとの場合は横髪ですね。あとうなじのほつれ。結っていてもこういうとこに乱れが。
一方、結構厄介な展開を見せた自己中だった高市皇子の二番目の妻・但馬皇女は最終的には自分の無為を悔いて、正妻の御名部皇女と仲良くボランティア活動にいそしむ的な。
少女感多めに長めなんだけど、髪の毛はまとまってますねwww
感情のうねりを出すのにやはり少女マンガの系譜としては髪の毛が重要ですから、ずっと長い髪垂らしっぱなしとか、ゆるい感じのひとは気をつけねばならないということでしょうか。
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